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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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2021年5月の記事一覧

危機の中のインフラ

羽藤 英二 論説委員 東京大学 教授 32歳で博士号を修得したアンゲラ・メルケル独首相は、COVID-19が深刻化する今年3月になって全く新たなインフラ整備コンセプトを発表している。自動走行の普及に向けた10億ユーロ規模の「自動車産業未来ファンド」創設と、フランスと連携したDXに向けたクラウドデータインフラ「ガイアX」の整備である。EV化の波に対して、カーボンニュートラル社会に向けた方針は、他国に先駆けて導入してきた車両位置情報の計測制度を「次のインフラ」の根幹として示した

先人に学ぶ~大阪港150年史から~

徳平 隆之 論説委員 阪神国際港湾株式会社 明治元年(1868)に開港した大阪港は、平成29年(2017)に開港150年を迎えました。明治維新後の日本における一大土木事業であった大阪築港事業は、オランダ人技師のデ・レーケ、内務省土木局長や大阪府知事を歴任した初代大阪築港事務所長の西村捨三、さらには日本の治水港湾工事の始祖と言われる内務省技師の沖野忠雄など内外の英知を集めて計画・施工されました。明治30年(1897)に起工し、資金難や技術面など幾多の困難を克服し、30有余年を