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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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2021年4月の記事一覧

都市沿岸域の恵みと持続性を高めよう

佐々木 淳 論説委員 東京大学 教授 東京湾では1960年頃には19万トンの漁獲量がありましたが、昨今は1万トン程度に激減しました。19万トンは単純計算で420万人分の魚介類の供給に相当し、豊かな恵みをもたらしていたことが想像できます。身近な環境に人手を入れ、人と自然の共生を目指す里山はよく知られていますが、瀬戸内海で生まれた里海(人手が加わることによって生物多様性と生産性が高くなった沿岸域)も、人手を加えるべきではないとの意識が強かった欧米にSATOUMIとして受け入れら

近未来の建設現場の実現に向けて

坂田 昇 論説委員 鹿島建設株式会社 執行役員土木管理本部土木技術部長 我々の建設業の生産性は、ここ30年間で他産業が大幅に増大しているにもかかわらず、横ばいであるのが実状である。また、建設従事者の死亡率も高止まりしている。国が掲げるi-construction(アイ-コンストラクション)のもと、機械化、自動化が進みつつあるが、いまだに人力に頼って施工しているのが実態である。その理由として、工場で生産される製品と比べた場合、特に土木構造物は、非常に大きく単品生産であること、