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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重… もっと読む
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2021年3月の記事一覧

橋梁の設計について

椛木 洋子 論説委員 株式会社エイト日本技術開発 土木は、人々を様々な災害から守り、豊かで快適な暮らしを提供する基盤を整備する。究極の目的は人々の幸せである。筆者の専門は橋梁の設計であるが、いつのころからか、それが信念になり、自分が設計する橋梁は、可能な限りその目的に適うものをと考え続けてきた。その橋の設計について、日ごろ考えていることを書いてみる。 いうまでもなく、土木構造物である橋は、ひとつひとつが注文生産である。様々な環境において計画される橋は、それを架ける目的はも

塩素消毒百年と二人の医師のこと

浅見 真理 論説委員 国立保健医療科学院 2021年は日本で水道の消毒に塩素が導入され百年目にあたる。新型コロナウイルスによる社会的影響は計り知れないが、水中で塩素が効くため、今回のコロナ禍でも、塩素消毒が義務づけられている水道による手洗いでの感染予防が、まだしも奏功していると思う。この水道の塩素処理は、都市計画の父、後藤新平氏が導入したと言われる。本稿では衛生の役割と他分野との連携の必要性を、アフガニスタンの用水路を作った中村哲氏への追悼と共に紹介したい。 江戸時代の日