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Beyondコロナの日本創生と土木のビッグピクチャー

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土木学会(会長:谷口 博昭)は、6月6日(月)に、2021年度会長特別委員会 コロナ後の“土木”のビッグピクチャー特別委員会による提言書『Beyondコロナの日本創生と土木のビッ…
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2022年2月の記事一覧

社会と土木の100年ビジョン-第6章 土木学会の役割

大学等教育機関で土木工学を学び、土木に関係する産、官、学における各主体の中で土木工学の知識、技術を活用して従業している技術者が集い、交流する場が土木学会という学術団体であり、また技術者協会である。このような性格を持つ土木学会は、社会と土木の関係、土木界の構成、土木技術者の就業状況などに鑑み、社会と土木技術者の利益のため次に示すような役割を担うべきと考えられる。 この役割を記述するには、土木学会の定款に規定されている目的や事業、また土木学会が2011年4 月に公益社団法人化され

社会と土木の100年ビジョン-第5章 次の100年に向けた土木技術者の役割

5.1 100 年後も変わらない土木技術者の役割100 年後も境界条件は種々変化したとしても、「人々の暮らしの安全を守り豊かにする」という土木技術者の役割は変わらない。ただし、土木技術者は、工学の分野を取りまとめ、広く工学以外の分野との連携を図りながら、全体を俯瞰して社会を良くするためのリーダーとなっている。そのために、従来の土木から拡大して広い分野の知識を学習しているに違いない。 100 年に向けた世界と日本を考えた場合、世界の人口は爆発し、日本は高齢化し、エネルギーは枯渇

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.14 総括

4.14 総括4.14.1 本章の構成の再確認 以上に記した4.1 から4.13 の13 分野において、「目標とする社会像の実現化方策」の各事項が明らかにされたが、それらのうち、「4.1 社会安全」と「4.2 環境」を除く11 分野については、3.3に示した「持続可能な社会の実現に向けて土木が取り組む方向性」としての、「安全」、「環境」、「活力(経済)」、「生活(社会)」の4 つの大きな方向性のそれぞれと、何らかの関連を有することが明らかである。 たとえば、「4.3 交通」

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.13 制度

4.13 制度4.13.1 目標 (1) 制度に関わる目標 土木工学の各分野各々に制度があり、いつの時代も必要に応じて見直されてきたが、土木学会が百年を迎え構想する将来社会の実現のため、その必要条件として早急に整えるべき基盤的な制度があると考えられる。その制度が目標とするのは、「我が国の地域に暮らす人々が、土木技術者とともに、防災、環境、経済、社会等様々な面から、地域の将来に継続的に関心を持てる法の枠組みを制度として確立し、我が国が長期にわたり公共性を大切にし、国民が公共心

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.12 技術者教育

4.12 技術者教育4.12.1 目標 政治的社会的変化を受け、近年では工事・業務の進め方が多様化し、これまでの機能化社会の中で分業化されていた各業態・分野間の垣根は低くなる一方である。また、公共事業におけるPPP や市民参加まで含めると様々な関係者によってプロジェクトが進められる傾向が増進している。こうした多様な組織が連携する枠組みの中では、土木技術者の他に各種の利害関係者が主体として参入し、求められる技術の種類・質も多様化している。さらに、地球環境変化にともなう風水害の

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.11 国際

4.11 国際4.11.1 目標 人類の歴史、特に技術の進歩による人類活動の歴史を考慮すると、100 年後には人類の活動自体が全世界的な規模で行われるのが普通となっていると考えられる。それは人間自身の物理的な移動を伴うだけでなく、情報技術の高度な発達によるところがより大きいであろう。また、人口の増加は約100 年後に110 億人余りでピークに到達することが予想されている1)。現時点での2 倍近い人口である。この規模の人口では、地球環境のサステナビリティの観点から、世界規模で

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.10 まちづくり

4.10 まちづくり4.10.1 目標 (1) 高齢化社会においても活力を保ち、持続可能な都市の実現をめざす これまでのまちづくりは、拡大する経済への対応、すなわち、開発、立地のコントロールと、不足する都市基盤の緊急整備に追われてきた。この間、拡大と集積を続けてきた都市は、都市を維持するコスト、交通や都市サービスなど高齢者や来街者の生活、安全や地球環境などの面で、国際競争力を維持できるとともに、高齢化時代にも対応できる都市構造に必ずしもなっていない。目前に迫る本格的な人口減

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.8 食糧

4.8 食糧4.8.1 目標 (1) 食糧自給率の向上 環境変化、地球規模の人口増加とその複合作用によって食料不足となることが懸念されている。グローバリゼーションと新自由主義経済による国際分業や相互依存が強くなる中で、食料資源の確保、資源の分配の均衡が保たれること、再生可能な資源化することが重要であり、持続可能な社会形成のために食糧自給率の向上のための行動プランが整理されなければならない。 そこで、国の支えとなる土木と農林漁業が協同し相互補完することが必要となる。また、郊外

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.9 国土利用・保全

4.9 国土利用・保全4.9.1 目標 (1) 目標を定める際の視点 国土利用・保全の目標を定める際に重要な点は以下のとおりである。 ① 安全・安心な国民生活の維持 ② 国土及び社会基盤の維持 ③ 国土の地理的特徴の反映 ④ 経済の発展 (2) 人口減少下での持続的発展を可能にする国土利用 人口減少は基本的には、経済発展にはマイナス要因である。経済発展は、人やモノが動き、それによって生じる個人消費の総和の拡大という見方もできる。人口と人やモノの動きの総量は正の相関になるこ

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.6 景観

4.6 景観4.6.1 目標 土木の景観分野が目指すべき目標は、美しい国土の実現である。しかし「美しい国土」を目指す、というとき、それは必ずしも、一幅の絵のような風景をつくることを意味しない。自然の特性、地域・都市の歴史や伝統文化、共同体としての民俗風習、現代の生活様式と経済的社会的諸活動、これらの相互作用によりつくりだされる多様な環境の姿が景観にほかならない。我々が目標とすべき美しい国土とは、上記の意味での景観が、地域や都市ごとに個別の特徴や魅力を放ち、それがその土地に生

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.4 エネルギー

4.4 エネルギー4.4.1 目標 (1) 目指すべき目標 有史以来、特に産業革命をきっかけとして人類が消費するエネルギー量は著しい増加の一途をたどり、現在の主要なエネルギー源である化石エネルギーの枯渇が懸念されるとともに、化石エネルギーの大量消費が地球温暖化を引き起こすことが強く懸念されている。今後、その実現までにいかに長期の時間を要しようとも持続可能なエネルギー利用を実現することは、人類と地球にとって必須の課題であり、これをエネルギー分野における最優先かつ究極の目標とす

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.7 情報

4.7 情報4.7.1 目標(結論) (1) 情報の将来ビジョンの対象 「情報」の持つ意味は多様であるため、はじめに、将来ビジョンで描こうとする「情報」の範囲を整理しておきたい。ここでは、インフラ 注20) の計画・整備・管理に関係する様々なデータを用いて適切に業務を遂行するために必要となる、1) 地理情報システム(GIS)、情報通信ネットワーク、データベース等の「情報基盤」と、2) CALS/EC・CIM、ITS (Intelligent Transport System

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.3 交通

4.3 交通4.3.1 目標 注7) 安全・安心な国土・地域・都市、QOL (Quality of Life) が高い快適な暮らし、持続可能な社会を創造する上で、交通の果たす役割は大きく、交通に関わる社会基盤整備や制度設計等といった今後の方策の良し悪しが、これらの実現を左右するといっても過言ではない。100 年先の目指すべき社会像を見据えた50 年先の目標、25 年先の具体的な目標を達成するためには、国土計画、地域計画、まちづくり、環境問題対応等と密に連携し、適切な方策を行

社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.2 環境

4.2 環境4.2.1 目標 環境的に持続可能な社会を目標とする。具体的には次のとおり。 (1) 低炭素化、地球温暖化 地球温暖化の問題は世界全体が抱える環境問題であり、その影響は広範囲にわたると予測される。また、単にわが国だけの取り組みだけで解決できる問題ではなく、地球規模での世界が連携した取り組みが必要であり、百年あるいはそれ以上の長期的視点で取り組まなければならない課題である。地球温暖化の問題への対応は、低炭素化の社会を目指す取り組みである緩和策と、地球温暖化によっ