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徒手空拳で飛び込んで―BioHackathon2020―

土肥栄祐
当時:新潟大学脳研究所
現在:国立精神神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第三部

 コロナが世間を跋扈する2020年4月、私は臨床医から一念発起し4年半の研究留学を過ごしたアメリカから、縁もゆかりも無い新潟大学へ基礎研究者として帰国することを決めたところでした。同時に、今後は様々なデータがオープンになるだろうと感じていたので、バイオインフォマティクスを学んで自分の研究に活かせる様になろう!と決めていました。そうはいうものの、周りに詳しい人もおらず、自分で調べる他無かったのですが、コツコツ調べる性分が幸いしてか、偶然BH20.9のTogoWikiのホームページに辿り着きました(どうやって辿り着いたか全く覚えていません(笑)。経験も知識もない状況でしたが、内田樹先生の著書「先生はえらい」中にあった、『シラバスの目次を読んで内容が想像できる授業はとる価値がない。よくわからない・未知のものとの遭遇にこそ学びの価値がある』という信条に共感するところがある、そんな私でしたので、“よく分からない、だからこそ”、と、参加を申し込みました。

 実家が広島なので、帰省も含めての参加になりましたが、その実、知り合いゼロ、何をするかもよく分からないまま参加でした。そうしましたら、高月さんを始め、皆さん非常に暖かく迎えて下さり、最初のプロジェクト提案では『先生の思いをぶつけたらイイんです!』との、妙に響く励ましにも背中を押して頂き、以前から興味があった、①生物種間での遺伝子の獲得・消失と、生理的な機能の獲得・消失を、進化の流れを通した形で“見える化”出来るものを作りたい!②患者―医療者間が、同じ3D人体モデルというプラットフォームに、患者側からは自分の症状、医療者側からは病状説明、を書き込みコミュニケーションをとることで、情報収集から病状説明までをシームレスに行えるツール、この二つを勢いだけで提案させて頂きました。

 さて実際何が起こったのかと申しますと...片山さん、川島さん、内藤さん、小野さん、岡別府さん、千葉さん、内藤さん...と、ホントに皆さんから、非常に基本的なことから、提案に近い既報や有用な研究・ツールなど、非常に暖かく教えて頂きました...のですがっ、「RDFって何ですか?」というくらいの知識・経験がゼロ状態でしたので、今考えましても『猫に小判』状態でした。

このBioHackathonがどういうものか、筆者が理解した範囲で述べますと...

  1. 元々継続中のプロジェクトなども普段はリモート環境で開発しているものを、直接膝を付き合わせてディスカッション→役割分担の上開発→ディスカッション→開発、という形で、効率的な開発を期待するもの

  2. 若い先生がベテランの先生から学ぶ良い機会

  3. 新しい提案の受け皿

  4. 普段会えない人との良質なコミュニケーションの場

といった側面をもち機能するイベントでした。そのため皆さんのプロジェクトのお力になれず、唯一役に立てたかもしれないのは、PubCaseFinderという稀少・遺伝性疾患を対象とした症候からの検索データベースを開発されている、藤原さん、張さんとのミーティングで、臨床医としてのユーザー目線からのフィードバックをさせて頂き、また私の知己である臨床の先生方を後日ご紹介させて頂いたことなどでしょうか。私にとっては、どの様なプロジェクトが動いているのか?データベース構築の現状や苦労話、専門の方々がどの様にお仕事をされているのか?また、提案した内容における技術的な問題点や、活用できそうなリソースを知る事が出来た点などなど、エキスパートの先生方に直接お会いしなければ聞く事が出来ないお話ばかりで、これ以上ない貴重な学びの機会となりました。

 今回の参加で得られたものは...

  1. 参加されている先生方が、シェアの精神で尽力されていることに感激しました!

  2. 参加中は、(実家の掃除を除いて)楽しい記憶しか御座いません。皆さんが暖かく迎えて下さったことに大感謝です!(ミーハーですが、坊農先生のサインを貰えたことや、TogoTVや研究で使うツールを作ってらっしゃる方々に会えたのは「あの人が!」と言った感じで1人でテンション上げてました!)

  3. 臨床医としては、データベース活用法や、ユーザー目線でのフィードバックは、意義がありそうですので、多様な臨床医の先生からのニーズを拾い上げてゆきたい!

  4. 研究者としても、データベースやリソースを知らない人が(私も含めて)沢山いるので、積極的に、知って貰う、活用法を考えるなどの活動をしたい!

  5. ゆっくりでもコツコツ勉強して、役立つツールなどを自分でも作ってみたい!
    といった、パッションに溢れた素晴らしい先生方との出会い、学び、モチベーション、そして、次につながる自分への課題を頂きました。

 徒手空拳で参加させて頂きましたが、様々な生物・医療のデータをデータベース構築から使いやすい形まで継続的に工夫され、医療や研究に役立てて欲しいと尽力されている先生方と接する機会を得ることが出来て、参加して心から良かったと思っております。超ビギナーながら、この会で頂いたモチベーションのお陰でコツコツと勉強を継続出来ております。最後になりますが、この場を借りまして、体験記を書く機会を頂けました事、またBH20.9で暖かくお迎え頂いた先生方に厚く御礼申し上げます。本当に有り難うございました。まだ参加された事が無い方は、ちょっとでもバイオインフォマティクスやデータベースに興味がある様でしたら、DBCLSの提供されているサービス一覧や、TogoTVを見て頂き、一度参加されてみる事をお勧め致します。

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本記事は日本バイオインフォマティクス学会ニュースレター第39号(2021年3月発行)に掲載されたものです。
以下のURLにて、全ての記事を無料でお読みいただけます。https://www.jsbi.org/publication/newsletter/

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