POTA Rover Lionチャレンジ総括
24/09/15(日)・16(祝)に実行したPOTA Rover Lionチャレンジを総括します。計画と実際の運用の様子については別記事を参照して下さい。
スケジュールと実績
Excelで作成していたスケジュールの管理表を引用します。26箇所目の運用開始時点で、予定から01:45の前倒しでした。途中で20-30分ほど豪雨で足止め (雨宿り) を喰らいましたが、12時間以上の運用実績に対して概ね予定通りの進行だったのではないかと思います。
上記スケジュール内において、実際に運用した (電波を出した) 時間は10〜11分でした。いずれの公園においても電波を出した後はトラブルなくアクティベートさせています。
(予定外の運用を行ったJP-1398 手取公園ではコンディションの悪化でアクティベートに30分掛かり、2日目のJP-1401 いしかわ四高記念公園では機材トラブルで冒頭が断続的な運用になりました。)
獲得したアワード
今回の運用では5つのアワードを獲得することができました。
Rover Lion
今回の目標であったRover Lionアワードを無事に獲得することができました。地方のHF帯でこのアワードを獲得できることを証明できたのはよかったと思っています (後述)。
Late Shift Activator (100)
18:00 JST~翌02:00 JSTの8時間の遅番 (late shift) 時間帯に運用すると獲得できるようです。今回は金沢初日の9箇所での90QSOが該当していたようで、バッジは 100 となっています。
ちなみに早番 (early shift) は02:00 JST~08:00 JSTが該当し、今回は金沢2日目の2箇所の60QSOが該当したようです。
Gold/Platinum/Diamond Activator
今回の運用で31箇所の公園をアクティベートできました。結果、一度にGoldからDiamondまでの三つのActivatorアワードを獲得することができました。
全体的な総括
評価
無事にRover Lionアワードを獲得できてよかったです。だけではあまり意味がないので、もう少し。今回のRover LionチャレンジをPOTAあるいはアマチュア無線の観点から評価すると、以下の二点がポイントになるかと思います。
POTA対象の公園が多数ある東京ではなく、地方都市で達成した
安定した通信を見込めるV/UHFではなく、コンディションに左右されうる7MHz帯のみで達成した
これまでに複数の先人がRover Lionアワード獲得を達成しています。お一方が、2年も前に多摩・武蔵野エリアでV/UHFのモビール運用で達成されたJJ1RUI局です。
もう一方が、半年前に東京湾岸で430MHzハンディ機で達成されたJJ1HHJ局です。
今回のチャレンジに、これらの偉業の背景にある「公園の多い東京で、人が多くて安定したV/UHFで」に対するアンチテーゼ「東京でなくても、V/UHFでなくても」としての側面があったことは否定しません。しかし今の私が持つスキルや機材、居住地の都合でRover Lionを達成できる可能性が高かったのが「北陸で40m FT8」だったというのもまた事実であります。
何にせよ、「東京でなくても、V/UHFでなくても」Rover Lionを獲得できることを証明できたのは、地方在住のPOTAアクティベータにとって一つの大きな成果なのではないかと考えています。
SNSの活用
今回、事前にTwitter (X)でRover Lionチャレンジを実行することを宣言し、実行中はpota.appだけでなくTwitterでもセルフスポッティングを行ないました。これらをご覧になった多数のハンター各局が、当日はリアルタイムに追い掛けて下さっていたようです。本当に感謝しかありません。重ねてお礼申し上げます。
一方、HAMtteではアナウンス (交信相手募集の投稿) にいいねが1件付いただけでした。利用者の層が違うのかも知れませんね。
ご安全に
当初の計画時から次第に天気予報の雲行きが怪しくなり、結局、当日は雨、しかもゲリラ豪雨が直撃しました。今回はアワード獲得を最優先したため雨天決行、雷の鳴る豪雨でも強行しましたが、安全面から見た場合はどうでしょう。
豪雨の中、車を走らせる場面がありましたが、例えば新湊大橋を渡っているときは視界が真っ白になるレベルの豪雨でした。自身が徐行していても、後続車や対向車の事故に巻き込まれていた可能性もゼロではありません。
また、ただっ広い駐車場の真ん中で、車高も加えれば地上高4m近い細くて尖った金属の棒が天に向かって伸びている状況は、落雷のリスクも高めていたのではないでしょうか。
自己責任と言えばそれまでなのですが、無事に帰宅してログをアップロードするまでがPOTAアクティベーションです。これらのリスクを負ってまで取り組むことだったのかという点は、常に内省しなければならないかも知れません。
準備
ローカル局からの情報
9エリアのJA9OJM局からTwitterで、公園・駐車場の情報を提供して頂きました。特に駐車場にアクセスできない公園の情報は、運用する公園を選択する上で貴重な情報となりました。ローカル局からの生きた情報提供は大変助かりますので、SNS等を活用することは必須と言えます。
ルート選択
事前にGoogleマップ等を使って公園間の走行ルートを検討しましたが、当日の交通状況やナビの気分で、計画したルートをナビが選択しないことがありました。事前に詳細な走行ルートを検討する必要性はさほど高くなかったかも知れません。
現地イベント
JP-1375 富山県総合運動公園では当日の午後から大型のイベントが開催されるとのことで、入場が規制されていました。しかしこのことは事前に把握できていませんでした。警備員と話して入場・運用することはできましたが、もし入場NGであれば完全に時間のロスとなるところでした。
通常の開園時間、駐車場の有無だけなく、このようなイベント開催の有無もウェブサイトなどで事前に確認しておく必要があったのは反省ポイントの一つです。
なお、今回はありませんでしたが、走行ルート上でイベントが開催されていて渋滞に巻き込まれる可能性もあります。当日のナビに任せてもよいとは思いますが、ルート上にある自治体のイベント情報についても事前にチェックしておいてもよかったかと思います。
ナビの事前確認
今回、ナビがルートや目的地を誤って設定することがありました。ここまですると偏執的かも知れませんが、事前にナビで30箇所の公園について目的地検索を行い、正しい目的地が設定されるか確認しておいてもよかったかとも思います。
ただでさえ慣れない町を運転している上に、疲労が溜まっている状況です。想定外の事象に遭遇した時の焦りは、事故に繋がるリスクを高めます。私もそうなのですが、テンパりやすい気質の方には特におすすめしたいと思います。
オペレーション
10QSOでQRTすることのストレス
今回のRover Lionチャレンジは幸いにも多くのハンター局に応答して頂き、ほぼすべての公園において10分で10QSOが完了しました。しかし、1日目はすべての公園で10QSOでQRTしたため、呼んでくれているすべてのハンター局に応答することができませんでした。これが結構なストレスになりました。
こちらからCQ POTAコールで呼び出しておいて、いざ10QSO達成したら切り捨てている訳です。世間一般のマナーから見てもどうかと思います。その一方で、ある意味ではハンターもアクティベータもお互い様なので、なるべく気にしないよう自分で自分を説得しましたが、そう簡単に割り切れるものでもありません。
せめてもの償いとして、2日目は時間と体調の許す限りQSOしましたが、果たして……
省エネ運用
WSJT-Xで自動シーケンスを有効にして「CQ: First」を選択し、交信する局をピックアップするのはWSJT-Xに任せて、オペレータの労働を極力減らしました。「送信許可」をクリックするだけの簡単なお仕事です。そう、FT8ならね。
正直なところを申し上げると、運用中、確実性の高そうな信号の強い局を優先したり、Park-to-Parkを狙ったりすることは不可能ではありませんでした。しかし、長丁場になるこることは明白だったため、可能な限り疲労が溜るようなオペレーションは避けました。
ログ重複チェック
WSJT-XとRUMlogNGを連携させているため、QSOが成立すると自動的にロギングされます。ソートをタイムスタンプ順にしておき、最新10件が溜まったタイミングで機械的にQRTしました。
結果的に問題なかったのですが、同じ公園内でQSOが重複した場合のチェックは目視に頼りました。これは改善の余地が大いにあります。事実、2日目の最後のJP-1401 いしかわ四高記念公園では重複QSOがあり、アクティベートには影響しなかったものの気付いた時には正直ゾッとしました。
並列処理で時短
公園に到着後、FT8で交信する裏で次の運用地へのルートをナビで検索していました。アクティベートには最短でも10分掛かるので、その間ずっとWSJT-Xを眺めて過ごすだけでは時間の無駄です。運用中に並列に進められる作業は可能な限り並列に進めることで、運用時間を短縮できました。
その他
コンディションは天任せ
日中は比較的安定して国内QSOできる7MHzですが、深夜帯は別です。今回も23:00を過ぎたJP-1398 手取公園で急激にコンディションが悪化しました。最終的には30分掛けてアクティベーションできましたが、10QSOのうち国内局は3QSOのみでした。
運用記事の方でも書いた通り、えいやっと7.041MHzから7.074MHzにQSYできたのはちょっとした英断だったと思います。結果的には上記に加え、アメリカ局と4QSO, 中国局・韓国局と3QSO成立させ、この公園をアクティベートすることができました。
この時点で、この日に予定していた公園での運用を既に終えており、「逆に考えるんだ『アクティベートできなくてもいいさ』と考えるんだ」という状況であったのが幸いしました。ここから更に運用しなければならない状況だったら、心が折れていた可能性もありました。
MSHVによるQSOの効率化
WSJT-Xの代わりにMSHVを導入することで、RR73/73の送信と同時に次の局へ応答することができ、QSOを効率化/高速化することが期待できます。
しかし、MSHVは使ったことがないこと、RUMlogNGと連携できるか不明だったこと、そもそもMac版のバイナリがないことから、今回の運用では利用しませんでした。
※10W出力のモービル運用でマルチストリームは無謀なので、ここでは触れません。
FT4で高速化
FT8は15秒毎に送受信が切り変わりますが、FT4ならその半分の7.5秒毎になります。すべてのQSOが一発で成功すれば、マルチストリームなしでもQSO時間が半分になります。
実際のところ、一発で応答が得られなかったりすると思いますので、そう話は単純ではないと思います。また、FT8に比べFT4は利用者がまだまだ少ないのがネックでしょうか。
消費電力
運用終了時のJackery 1000 Plusの残容量は92%でした。容量が1264Whなので100Whを消費したことになります。これならJackery 240 Newでも充分でしたね。
今回はKX3を10Wで各公園で12分運用、それが26公園分ですので、計算上は52Wh。KX3の出力効率は50%ということになりますでしょうか。
予備の機材
幸運なことに、予備として用意していたKX2, RHM8Bの出番はありませんでした。
影のMVP
今回の影のMVPは、モンベルのトレッキングパンツです。元々、POTA運用のために購入したものですが、薄手の化繊で速乾性があります。雨の下、アンテナの設営や撤収で濡れても、しばらくすればある程度乾き、伸縮性のお蔭もあり快適そのものでした。
普段から履いているジーンズだったら、いつまでも乾かずじっとりぐしょぐしょ、肌に張り付いてもう最悪、テンションだだ下がりだったことでしょう。
燃費
今回の運用での移動距離はちょうど1,000kmほどでした。これに対して、アプリによると14日のガソリン消費量が17.3L、15日が13.2L、16日が16.8Lとなり、今回の運用全体としての燃費は21km/Lとなりました。
15日の運用だけに注目すると、移動が250km弱ですので19km/Lとなります。28箇所の公園を巡ってストップ&ゴーを繰り返しましたが、まずまずの燃費ではないでしょうか。
Googleマップの修正
JP-2079 東公園のピンを追加
JP-2082 近岡緑地公園の名称を修正
承認欲求モンスター
アクティベータ運用すると、ハンター局から大量の応答を得られます。WSJT-Xの右側の一覧が真っ赤に染まり、その状態が持続します。普段のCQを出しても応答してもらえない日々と比較して、まあ正直快感な訳です。皆が私の一挙手一投足に注目し、私のCQ POTAコールを期待して待ってくれている訳ですから。
こうなると何か勘違いしてしまいそうになってしまいますが、アクティベータとハンターは持ちつ持たれつ、互いに感謝の心を忘れず、謙虚にPOTA運用に取り組みたいものです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?