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“プライマリ・ケア2022秋号”使える論文My Top5

日本プライマリ・ケア連合学会の実践誌、”プライマリ・ケア”の『使える論文My Top5』は若手医師部門 病院総合医チームが紹介しているリレー連載です。

2022年秋号は、片山が担当しました。
『病棟にある物品やよく見かける場面』を掘り下げて、以下の5つの最新論文を紹介しています。

1.中心静脈カテーテル
2.尿道カテーテル
3.消毒薬(クロルヘキシジン、またはポピドンヨード)
4.胃瘻や経鼻胃管
5.手指衛生

1.中心静脈カテーテル

Pronovost P, Needham D, Berenholtz S, et al. An intervention to decrease catheter-related bloodstream infections in the ICU. (N Engl J Med. 2006; 355(26): 2725-2732. PMID: 17192537)

 ショック状態の急性期で中心静脈カテーテルをよく用いますが、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)が起こることもしばしば・・・。
 今回は米国でCRBSI予防に取り組んだ研究を取り上げています。チェックリストを用いたバンドルアプローチ:①医師への感染予防実施策の教育、②中心静脈カテーテル挿入用カートの作成、③日々の回診時にカテーテル抜去を検討、④挿入時のバンドルを看護師がチェックリストを用いて記入、⑤チェックリストに従わない場合に看護師主導で挿入中断の5つが行われ、CRBSIの発生を予防できました。

2.尿道カテーテル

Saint S, Greene MT, Krein SL, et al. A program to prevent catheter-associated urinary tract infection in acute care. (N Engl J Med. 2016; 374(22): 2111-2119. PMID: 27248619)

 尿道カテーテルは最もよく使用するデバイスのひとつですが、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)のリスクです。取り上げた研究は、尿道カテーテルの必要性を毎日検討、不適切な尿道カテーテルは抜去、無菌操作で挿入・管理をすることをバンドル化し、一般病棟でCAUTIを減らしました。

3.消毒はクロルヘキシジン、それともポピドンヨード?

Darouche RO, Wall MJ Jr, Itani KM, et al. Chlorhexidine-alcohol versus povidone-iodine for surgical-site antisepsis. (N Engl J Med. 2010; 362(1): 18-26. PMID: 20054046)

 みなさんが清潔操作のときに使うのはクロルヘキシジンですか、それともポピドンヨードですか?この2つの消毒薬を比較した研究では、手術部位感染について、クロルヘキシジンに軍配が上がっています。

4.胃瘻や経鼻胃管の長期予後

Tsugihashi Y, Akahane M, Nakanishi Y, et al. Long-term prognosis of enteral feeding and parenteral nutrition in a population aged 75 years and older: a population-based cohort study. (BMC Geriatr. 2021; 21(1): 80. PMID: 33509118)

 プライマリ・ケア領域では、高齢で経口摂取が困難な患者さんも多いです。なかには胃瘻や経鼻胃管、中心静脈栄養などの人工栄養を開始する場面もあると思います。長期的な経過について日本からコホート研究が出ています。胃瘻と経鼻胃管は中心静脈栄養よりも2年死亡率は低かったものの、2年死亡率は50-70%でした。

5.あなたは、手指衛生を続けられますか?

Sakihama T, Kayauchi N, Kamiya T, et al. Assessing sustainability of hand hygine adherence 5 years after a contest-based intervention in 3 Japanese hospitals. (Am J Infect Control. 2020; 48(1): 77-81. PMID: 31345615)

 昨今の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、手洗いとアルコール消毒をする機会が増えました。しかし、5年後も今と同じくらい手洗いとアルコール消毒をできているでしょうか?この問いに日本からの多施設共同研究が答えてくれます。この研究では、手指衛生の5つのタイミング(①患者に触れる前、②清潔/無菌操作の前、③体液に暴露された可能性のある場合、④患者に触れた後、⑤患者周辺の環境や物品に触れた後)を強調し、アルコール消毒薬を院内に配布しました。介入前に20%を切っていた手指衛生の遵守率は、介入から5年後も30%台を維持しました。

以上5論文を取り上げて紹介しました。
自分の診療や病状説明を振り替えるきっかけになればと思いますので、ぜひご一読ください。会員の方はお手元の雑誌をご覧ください。今後もリレー形式で続いていきますのでお楽しみに!

文責:片山 皓太(聖マリアンナ医科大学 内科学 総合診療内科)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人手の意見です、投稿者と出版社あるいは著者との間に利益相反はありません。
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