納得できない結末その2
久しぶりに、宮部みゆきさんの作品を読み返している。彼女の作品はとても読みやすくて、ほぼ読破している。中でも時代小説が好きで、そのチャーミングな登場人物たちに魅了されてやまない。ぼんくらな同心、井筒平四郎が活躍するシリーズも大変楽しく、手放しでお勧めしたいところなのだが。残念ながら、前回読んだときは気にならなかったのか、或いはただ単に忘れていたのか知らないが、プロットに大変無理があることに気づいてしまった。
それは、シリーズ第二弾、「日暮らし」の落ちである。ネタバレが困るお方は、この先はご遠慮いただきたい。
行きますよ、もうネタバレが嫌な方はいませんね?
それは、平四郎の賢い甥っ子・弓之助が、いよいよ葵が殺された犯人を特定して、なぞ解きにかかるところである。犯人は、寺子屋の先生・晴香であり、彼女は一度は始末し損ねた、犯行現場逃避の目撃者である寺子屋の生徒・おはつを、今度こそ殺害するために、葵の屋敷に連れ込み、たてこもっているという。何故、そんな事ができたのか?
だって、葵を殺した晴香先生が、お屋敷から出てくる所或いはその近くにいた事を目撃したおはつは、晴香先生に首を絞められて脅されていたのですから。その事件の後、おはつは酷く怯えて家から出たがらなくなり、寺子屋にも行かなくなっているって、中巻の終わりにも、下巻の12章にも書いてあったではありませんか。それが、下巻の17章になって、いきなりおはつは寺子屋にはずっと通っていて、その帰りに晴香先生に拉致されたことに!
ちょっとちょっと、宮部さん。そうは問屋が卸しませんぜ。そういう流れにならないとお屋敷での謎解きはできないっていうのは重々承知ですが!先生に首を絞められ脅された子供が、護衛がついているからといって、その先生の寺子屋でのほほんと手習いを続けるなんて、あり得ませんて!
この作品のレビューをいくつか読んだが、ミステリー作品としての批判で葵殺しの犯人の分かりやすさと動機のこじつけ感については書かれていたけど、驚いたことに、この大事な矛盾が気になった人はいないようだった。まあそれは、一度読んだぐらいでは矛盾にも気付かせない程、宮部さんの語り手としての腕前が素晴らしいということなのでしょうけど。
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