見出し画像

過ごした時間と心の距離にきっと公式はないから

小包が届いた。
差出人には学生時代の友人の名前。
なんだろう。

彼女とは数ヶ月前、まだ自由に友人と会えた頃、それこそ10年ぶりくらいに開催されたクラス会で顔を合わせていた。昔話に花が咲き、終始笑いっぱなしだったあの夜。現役デザイナーで忙しい彼女と次に会えるのはいつだろう、そんなことを思いながら新橋駅まで終電ダッシュしたことを思い出す。そういえばあの日、遅刻した私を店の前で待っていてくれたんだっけ。あとはそう、暗い階段の先にあったお店のトイレ、怖がっていたらついてきてくれたんだ。二次会で、お酒はもういいからと900円もするパフェを一緒に頼んだ時は、プチトマトで飾られたアイスに2人で目をまんまるにしたよね。

数秒の間にいくつかのシーンは思い出せたけれど、結局、荷物が届く理由はまったく思いつかなかった。

中身の推理をあきらめて包みを開けるとオフホワイトのハンドタオルが出てきた。一緒に入っていたのは見るからに美味しそうなチョコレート。飾り気のないカードには、見覚えのある丸っこい文字が並んでいた。

「タオルにチクチクしてみました。チョコは友達にもらったらすっごく美味しかったから取り寄せてみたの。おすそわけ。食べてね〜♪」

タオルにチクチク?
ふわふわの無地タオルをよく見ると、フチの部分にスマイルマークが刺繍してある。でもなんで? カラフルなパッケージからチョコを出し、口に入れてみたら確かにすっごく美味しかった。


すぐにLINEを開いて、やっぱり閉じた。今日は電話にしよう。夜まで待って通話ボタンを押す。ありがとう、嬉しかったよ!わざわざ刺繍なんて時間かかったよね。

そんなことないよ、と笑う彼女に思いきって聞いてみた。なんで急に?贈り物なんて。スマホ越しに聞こえてきた答えは私の思いもよらないものだった。

「suzucoさ、クラス会の時ハンドタオル落としたでしょ、で2軒目行く前にコンビニで新しいの買ってたよね。ああ、まだハンドタオル持ち歩いてるんだ、全然変わってないなーって思ったらなんか嬉しくなっちゃって。だからそのお礼!」

確かに私は、昔からハンカチではなくハンドタオルを使っていた。特にこだわりがあったわけではない。なんとなくタオル生地の方が安心感があって好きだっただけ。2人の中で忘れられないエピソードがあったわけでもないのに、どうして彼女が覚えていてくれたのかはわからなかったけれど、でもじんわりと心があたたまっていくのだけはしっかりと感じられた。

やっぱり昔からの友達はいいな。電話を切ったあとそう思った。


ーーー 


先日、くくるさんの個人企画に参加させてもらった。
そして昨日、感想noteを読ませていただいた。



なんと書いたらいいのだろう。残念ながら、この気持ちを正確に言い表す言葉を私は見つけられそうにない。嬉しかったでも感激したでも全然足りないのだ。かと言って飛び上がるほど嬉しかったとか、震えるほど感激したとかそういう言葉も使いたくない。私が感じたのはもっと静かで深い喜びだったから。

数日前、過去の記事にスキをいただいた。いくつかずつ続けて読んでくれていることがわかった時はあまりの恥ずかしさにどうしようかと思った。でも同時に、感想を書くために私を知ろうとしてくれているのだと気づいて、なんと光栄なことだろうと思った。私のアイコンは雑貨の写真だ。登録した時は自分の姿を使っていたけれど、迷惑をかける人が出てしまったらと不安になって変えてしまった。だからなんとなく得体の知れない人という印象になっている。

それでもくくるさんは私の文章から体温を感じ取ってくれた。もしもお会いすることがあったなら、初めて見る私の姿を違和感なく受け入れてくれるのではないか、そう思うのは慢心だろうか。

言葉で繋がれるご縁っていいな。企画に参加してみた今、私はそう思っている。


ーーー


ゆっくりと時間を積み重ねて自然に心を通わせた友人がいる。
知りたいと願う気持ちの強さで心を通わせていく関係もある。

心の距離は過ごした時間ではきっと決まらない。
だから、どちらも素敵で大切なんだ。



これからも少しずつ、心の温度が同じ人と繋がっていけたらいいな。

noteを始めて半年、改めてそういう気持ちにさせていただいたことに心から感謝したい。



***


くくるさん、過去のnoteまでさかのぼって読んでいただき本当にありがとうございました。大切な思い出を、あたたかなコメントで飾ってもらえてとても嬉しかったです。参加者、一人一人に丁寧に向き合う姿がとても素敵だと思いました。

機会がありましたら、また参加させてください。






届けていただく声に支えられ、書き続けています。 スキを、サポートを、本当にありがとうございます。