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萌芽の瞬間はふいに
「ママはボクと友達を引き離したいの?」
そんなことを言わせてしまった不甲斐なさが胸の奥で焦げついている。近頃は頑固な焦げもツルンと落とす洗剤があるようだけど。
無理だろうな。
息子は運動より勉強の方が得意。リフティングより算数テストの方が出来がいい。図形問題も夢中で解くし英語にも興味津々。漢字は嫌い。年表が苦手。
それでも勉強が好きみたい。
そう思っていた。
仕事を盾に、いつも自分を最優先していた私が息子に出会えたのは奇跡みたいなこと。こんな幸せを手にしたくせに、うんと年下のママが作るお弁当に、張りのある肌に時々胸がキュッとしてしまう。
だから中学受験をするというママ友に「東京の学校受けてみたら?近いんだし」と言われて20%だけ本気になってしまった。
友達と引き離すなんて考えたこともなかったよ、ごめん。
母を責めないように、でもきっぱりと友との絆を告げる姿に小さな芽吹きを見たようで、握った手を少しゆるめた。
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