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評価と給与を分ける。新しい人事制度にチャレンジ

ジョイゾーでは、今期より新しい人事制度を採用しました。従来の評価に対して給与額が決まるのではなく、評価と給与を連動させない制度です。

評価によって給与が決まる従来のシステムを変えることで、メンバーの自律と成長をサポートし、各自のモチベーションやスキルアップへと繋がる。それが結果的に会社としてもメリットがあると考えています。

今回は、その考え方やねらい、具体的な内容などを紹介します。

人事と給与の制度を変更するきっかけ

新しい人事制度を導入しようとしたきっかけは、新年度の人事評価について経営会議で話していた際、社外取締役の深井さんから木村石鹸さんの評価制度を教えてもらったことでした。

木村石鹸さんの制度は、生きがいラボ株式会社の福留幸輔さんが書かれた『人事制度の未来~「給与」と「評価」を分離せよ!』を参考にされたそうです。私はその書籍を読み、まさにジョイゾーが目指したい評価、給与の考え方だと腑に落ちました。

そのため、これから話す人事制度については、この本を参考に真似た部分が多くありますのでご容赦ください(笑)。

もともと私は、給与を会社側が一方的に決める制度に違和感を持っていました。プロ野球の年俸交渉のように成果と将来への期待などについて話し合い、双方の合意をえて給与額がきまるといったプロセスを経たいと思いながらも、制度に落とす具体的施策が見えておらず、実施には至っていませんでした。

人事制度は基本的には、従業員に「安心」や「安定」を保証することを主な目的として作られています。いわゆるブラック企業を規制する意味で、残業時間の上限を厳格にしたり、有給休暇の取得に必ず取得しなければ行けない日数を決めるなどが一例可と思います。もちろん、従業員にとって適切な労働環境を保証という意味では必要な方針です。

ただ、安心や安定ばかり重視した人事制度だと、そこに依存が生まれ、会社に対する帰属意識が強くなりすぎて、「現状維持」なマインドになりかねません。特に進歩の早いIT業界において、「現状維持」は後退でしかありません。

そこで、必要な「安心」「安全」「安定」を保証するのは基本とした上で、「自律と成長の機会を重要視する」人事制度が重要となります。

ビジョンを共有できていなければ、この制度は成り立たない

『人事制度の未来~「給与」と「評価」を分離せよ!』を参考にして取り組んでいる新しい人事・評価制度は、これまでの常識を覆すとてもチャレンジングなものです。本にもある通り、この制度を成功させるためには会社と従業員の間には、共創関係であることが必須となります。

共創関係を作るためには、会社のビジョンを理解して共感しているのが大前提です。ビジョンを大事にしているジョイゾーにとって、この考え方はとても納得のいくものでした。

さらに大事なことは、ビジョンの共感は強制するものではありません。会社のビジョンに共感できない場合は、残念ながらお互いに離れることになると思いますし、離れたほうが良いでしょう。

共感できないのはどちらかが悪いことではなく、ただ価値観の違いがあるというだけ。それぞれの価値観を大事にしていけばいいと思います。

「ジョイゾーのため」ではなく、自分の自律と成長のため。自律していくことで、ジョイゾー以外でも活躍できる人材になってほしいと考えています。

従業員からの自己申告で、未来志向で給与を決める

「給与を会社側が一方的に決める制度に違和感を持っていた」と先に書きましたが、これは私が以前、所属していた会社で管理職だったときに強く感じたものでした。

その会社では、期初に目標管理シートで自分の目標を決めて、期末になるとABCで自己評価をして、そこに上司の評価が加わります。そして、そのシートを基に、部や課の全体のバランスを見て、給与を決めていました。

「Aさんは頑張っているけど、Bさんと比較したら1万円アップくらいかな。」「Cさんは全体的にA評価だけど、部全体でA評価が多いのでA-評価で5000円アップですね」みたいな感じです。

給与額を決める根拠がまったく理論的ではありませんでした。

というかそもそも給与を決めるのに理論的に説明できるのは難しいんじゃないかとも思っています。
そういった違和感を持っていたので、ジョイゾーでは以下のような形で給与を決めるようにしました。

・従業員からの自己申告
・経営者・マネージャーによる給与額決定会議にて提示額検討
・従業員へ給与額を提示し、根拠についてはお互い納得がいくまで話し合う
・最終給与額を決定

従業員に提示する給与額を決める際に大事にする考えは、「自己申告からみる実績と将来への期待を考えて提示額を決める」ことです。

また、自己申告をするといっても何かしらベースとなる指標があったほうが良いので、「マネージャー」「リーダー」「プレイヤー」と、各レンジごとに持つべきスキルやアビリティを定義し、参考給与の範囲を決めました。

従業員にはそのシートを参考に、自分がもらうべきだと考える給与を申告してもらいます。そのシートに書いている給与レンジを越えた申告をしても構いません。シートはあくまでも参考レベルです。

自己申告を受けて、話し合って評価を決めるため、マネージャー側の責任は重大です。従業員の提示額に対して、上がることもあれば下がることもあります。それに対してマネージャーは、従業員が納得する根拠を示す必要があるのです。今まで以上に、一人ひとりが真剣に考え、議論していかなければいけません。

まずは半年間を試用期間として、半期が終わったタイミングでお互いにシミュレーションをし、残りの半年で本運用をしていきたいと考えています。

ちなみに、社会人歴3年目までの従業員は経験が浅く、自分で給与を提示するための十分な経験・実績を持っていないため、自己申告制はとらず、一定の給与アップを約束して、3年間の間に自己申告できるまでの経験を積んでもらいます。

ただ、3年以内に自己申告するだけの経験・実績を持ち、自律できているのであれば自己申告制をとっても良いと思っています。

新しい人事・評価制度によるねらい

制度を変える成果は、「やってみないとわからない」が正直なところです。ただ、この制度を導入すると決めたからには、期待やねらいがあります。

私の期待は、会社のメンバーが自律していくことです。

一人ひとりが自律して成長できれば、個人のパフォーマンスはあがり、それが結果的に会社の売上アップに繋がります。

そしてにアップした売上を原資に、従業員への投資やみんなが楽しく働ける会社への投資へと繋がります。こうした好循環が生まれていくと期待しています。

この制度が本当に根付くまで、2〜3年はかかるかもしれません。ただこの制度を続けていくことで、メンバーの意識が劇的には変わらなくても、徐々に変化していくと思っています。

新しい人事制度について説明をした際、従業員から「最初は驚いた」という声はありました。

ただ、本当の狙いについて丁寧に説明をしていったところ「自分で自律して決めていく実感が出てきた」と言ってくれたメンバーもいました。

自己申告という形で自分自身をプレゼンする機会は、通常なかなかありません。それを「大変だろう」と想像しながらも、「怖さ半分、ワクワク半分」と前向きに捉えてくれていると嬉しいです。

ジョイゾーが目指すところはひとつのチームとして、それぞれの役割を担い、パフォーマンスを上げていく。そのための「手段としての制度」であり、制度そのものは目的ではありません。

ですから、「手段としての制度」を、これからも引き続き考えていきます。

四宮靖隆(しのみや・やすたか)
(株)ジョイゾー代表取締役社長。サイボウズのkintoneビジネスにコミットし、Mr.kintoneとの呼び名も。SIを再定義し、仕事も人生も「楽しい」世界を実践中。

(▼)kintone導入検討中の方へ「結局何ができるの?」

ジョイゾーは、エンジニアリングで新しい波を広げます


ジョイゾーは、サイボウズ社の「kintone」(キントーン)を専門にコンサルティングやシステム開発を行うSIerです。すべての人生を楽しくするために、SIerとしてエンジニアリングの可能性を追求しています。


編集協力/コルクラボギルド(取材構成・栃尾江美、編集・頼母木俊輔)


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