たった一匹の子猫がすべてを変えた 動物の本棚(3)『ナラの世界へ 子猫と二人旅 自転車で世界一周』ディーン・ニコルソン著 山名弓子訳 K&Bパブリッシャーズ 

この本は2021年に出版されました。

自転車で世界一周の旅を続けるスコットランド人の著者ディーンは、ボスニア・ヘルツェゴビナの山中で、ちっちゃな猫が鳴きながら必死に彼の自転車を追いかけて来ることに気づきます。それは手のひらにおさまるほど小さな灰色が買った白い子猫でした。

かれは子猫に食べ物を分けてやってから、自転車を押して旅をつづけますが、子猫はいつまでもその後をついてきます。たぶん生まれてまもなくここに捨てられたその子猫は、もうすぐ雪が降りそうな天候の中では生き延びられそうにありませんでした。

やがてディーンは心を決めて子猫を抱き上げ、自転車のフロントバッグに子猫を入れてやります。
自転車を漕ぎだしてしばらくすると、猫はバッグから這い出して彼の腕をよじ登り、彼の首に鼻をつけるようにしがみついてそこにおさりました。
こうして、やがてナラ(「ライオン・キング」のシンバの奥さんの名)と名づけられた子猫とディーンの二人旅が始まったのでした。

ディーンはナラと旅する動画をインスタグラムにアップしていましたが、大男でひげ面の彼と愛らしいナラのコンビの映像は瞬く間に評判になり、インスタグラムのフォロー数は50万を超えるまでになりました。

ディーンとナラのコンビは風土も文化も違うさまざまな国を旅し、ナラが体調を崩せばディーンは動物病院を探して駆け込み、ディーンが体調を崩した時はナラが心配そうに彼に寄り添いました。
時には彼のインスタグラムをフォローする人が、彼らが家の近くにいるのを知って「うちに泊りに来れば」と声をかけてくれたり、彼とナラのために何かサポートしたいという人も増えてきました。

また彼らはさまざまな国で動物を愛する獣医さんや動物保護活動をする人たちとも知り合います。
その中の一人、トルコで動物保護センターを立ち上げた女性がディーンに語ります。
「たった一匹の動物が、すべてを変えることだってできるのよ
そしてナラの背中をやさしくなでて謂いました。
「だから、あなたはこんな宝物と一緒にいるんでしょう?」

やがてディーンはインスタグラムをフォローするさまざまな国の沢山の人たちに募金などに協力してもらえれば、集まったお金を彼が知り合った人たちをはじめとするさまざまな国の動物保護団体に寄付できることを思いつき、それを実行していきます。

こうしてちっちゃな捨て猫だったナラとディーンの出会いは、さまざまな国で彼らの旅を見守る数十万の人々の心を和ませ、おそらく1000頭以上の動物たちを助けることにつながったのでした。

YOU-TUBEで、 「NARAS WORLD DEAN
NICOLSON」「1BIKE 1WORLD」などで検索するとナラとディーンの動画を見ることができます。


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