過食

 自宅に引きこもり、お気に入りのゲーム実況を見ながら、過食することが私の最高のひと時です。

 最近、一日一食に慣れてしまったので、一度に大量の食べ物を胃の中に詰むことが習慣となりました。もう、腹八分目では満足出来なくなりました。

 そこまでいくと、当然ですが、吐き気に襲われて、実況の声が胃に響くので、一度パソコンの電源を落として、楽な体勢を取り、
「もう、こんなことはしません。ごめんなさい。」
と心の中で誤ります。

 そして、吐き気が治まると、また余った分を食べようとします。
 ですが、食べると太るので、一度口に含んで、咀嚼した後、飲み込まずに、ゴミ袋へ吐き出します。また、余った分を食べずにゴミ袋に捨てて、二度と掘り返さないように、ゴミ捨て場までもっていきます。

 もう、食べ物を粗末にすることに対して、罪悪感を抱くことの方が、私には許されないことだと思い、罪悪感を抱くことを申し訳なく思うようになりました。

 これまで超えてはいけなかった体重が、次第に目標体重となり、それが繰り返されて、ブクブクと肥えていき、取り返しのつかないところまで来てしまいました。

 もちろん、自炊は一切しなくなりました。

 毎日、スーパーやコンビニに通って、目をぎらつかせながら商品を吟味して購入する。帰宅すると、早速パソコンを起動して、定位置に座り、商品を開けて、食い尽くします。
 支払いは、親の仕送りで。

 こんなのほんの一部に過ぎません。
 私は誰よりもクズである、ような気がします。
 いつもどこかで、後ろめたい気持ちがあります。

 度々、私のことを面白いと言ってくれて、話しかけてくれる人がいますが、私は誰よりも面白くない、と思います。
 面白くないというよりも、人間としての厚み、中身が無いような気がします。

 多分、人間として面白くないと思います。
 周囲は、何かに熱中できることがあるのに、私はそれが出来なくて、何らかのコミュニティに属しても、皆と同じ体温で楽しめないので、楽しい振りや、熱中する振りをするのに疲れてしまって、
「飽きたからやめたわ。」
と、笑いのネタとして話し出す。

 気が付けば、私の周囲にあるものすべてが、単発となりました。
 
 先月の話になりますが、成人式に参加しました。
 そこで、懐かしい人たちに話しかけられ、”ギョ”っとしました。

 卒業と同時に一度死んで、存在しないものとなった当時の私を再び蘇させられたような感覚です。自分が殺したはずの人間が生きていて、そのことを他人に伝えれたような感覚です。

 だって、話しかけてくれた人は、きっと当時の私に話しかけてきたのですから。

 私は、節目ごとに人間関係をリセットする癖があるのですが、どうやら人間関係をリセットするのと同時に、当時の自分のこともリセットして、無いものにしていたようです。

 だから、話しかけられたときは、この子はもう存在しないはずの当時の私を知っているんだ、と慄きました。そして、私は当時確実に生きていたのだ、という当たり前のことを実感させられました。

 多分、大学を卒業すれば、同じように連絡先を非表示にして、スマホが変変われば、その時には、私の連絡先リストに当時の人の連絡先は無いでしょう。
 バイトも長続きせず、主に単発で生きているので、仕事も転々とすることになる気がします。

 今後、どうしていくかとか、自分がやりたいこととか分からずに二十歳になってしまい、そもそも自分にはそのような意志が無いようにすら思えます。
 
 何かに熱中できるくらい、何かを信じることが出来ず、何かに幻想を抱いても
「こんなものか。」
で終わってしまうことが多く、体は肥えていくのに、中身は空っぽなまんまです。

 
 
 
 
 
 
 
 



 

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