【ひと夏の人間離れ】野分様の帰省 #毎週ショートショートnote
野分様が帰省すると言うのでお供した。
夏休み最後の一週間である。
盆も過ぎた頃にはご学友にぐちぐちとせっつかれていたので、宿題とやらは出来上がっているらしい。要は暇を持て余していたのだろう。
キャリーケースにありったけの土産を詰め込み、ご機嫌で飛んで帰った。
「甘夏や三毛姐さんは息災だろうか。ヤタは夏バテなどしてなければ良いけど」
ご実家で預かっているお嬢さんや、親しい使用人達。
野分様にとってはきょうだいのような間柄だ。ご自分で望まれた学遊の為とはいえ、寝食を分かつ事すら初めての体験であった。多少羽目を外すのも致し方ない。
「ただいまー!」
「野分様ァァァアア!?」
番頭が鬼の形相で出迎えてくれた。正しくは牛鬼の形相だが。
「甘夏が驚くだろう。人型厳守はどうした」
「だったら貴方も自力飛行はお止め下さい!!」
文字通り飛んで帰った野分様、御名を一目連。天目一箇神や天津麻羅とも呼ばれた旧き神は、やんちゃな男子高校生の顔で笑っていた。
こちら参加させて頂きました。(本文410字)
設定だけ考えて放置してる、妖怪ファンタジーのオリキャラです。ひと夏の原点(原形)回帰。
以下はちょっとした解説。ネットで調べたほんのさわりなので、興味を持たれた方はレッツラご学遊〜。
一目連は稲妻や暴風雨をもたらす台風の神様。または妖怪。バックベアードじゃねぇよ(鬼太郎版参照)
同一視されている天目一箇神(あめのまひとつのかみ)は天照大御神の孫神で、太陽神にして風神。天津麻羅(あまつまら)という名で古事記にも登場します。
鍛冶の神様でもあり、一つ目の龍神説や巨木に住まう天狗説も。
旧い神様は習合されたり、あれこれ混ざり合っていて分からない事も多いです。つまり可能性の塊。物書き的にはロマンですね。
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