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【てるてる坊主の゙ラブレター】人生最後のラブレター #毎週ショートショートnote

祖父が亡くなり帰省した。

「お帰りタケル」
「ただいまバァちゃん。なんか縮んだな」
「アンタ私を幾つだと思ってるンだい。もうひ孫も小学生なんだよ」
「姉ちゃんとこのカノちゃんか」
「ジイさんもひ孫のランドセル姿まで見れたンだ、満足そうな顔しとるから見てあげな」

そう言われて仏間に通された。
祖父は昔気質の典型的な昭和の男で、気難しい表情を浮かべている事が多かった。眉間のシワがないだけでも生前よりずっと心穏やかそうに見えて、少し笑ってしまった。
そして祖父の胸元に、いくつか封筒が置かれている事に気がついた。

「あ、タケちゃんも来れたンだ」

喪服姿の姉が、噂の姪っ子を背中にひっつけたまま現れた。
姉は淡い水色の封筒を握っていた。

「ああこれ? ジィちゃんへのラブレター」

笑いながら教えてくれた姉いわく、棺桶には可燃物しか入れられないと聞いた祖母が始めた事らしい。

「意外とバァちゃんも結構な恋女房だもんなァ」
「若い頃はこっそり文通してたらしいよォ」

故人の悪口は言うなと聞くが、これ位は許して欲しい。アンタは隠してたンだろうが、アンタがバァさんに最期まで惚れ込んでたのは皆知ってるからなジィさん。

「あれ? カノちゃんはお手紙じゃないの?」
「うん、おバァが言ってた。残された人が泣きすぎると涙の雨で三途の川が荒れちゃって、死んだ人があの世に行けないって」

だからカノはこれ。
ーーそう言って差し出されたてるてる坊主に、俺たち姉弟の涙腺は決壊したのだが、いっそ鉄砲水にでも流されて帰って来ればいいのに。


こちら参加させていただきました。今回だいぶ文字数オーバーしてしまいました……(635文字)


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