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【雨を聴く】ベランダの話 #シロクマ文芸部【エッセイ】

雨を聴くと夜のベランダを思い出す。
実家で暮らしていた頃、私の部屋は二階にあり布団を干す為のベランダが付いていた。
何せ田舎の閑散な住宅地である。見えるのは空と電線位だったけど、逆に言えば人の目も気にしなくて良い場所だった。近くのローカル線を走る電車の音が心地よく、寝苦しい夏の夜などはビニールシートを敷いて涼むのが好きだった。

ところで私の部屋には一つ欠点があった。ベランダに面した窓のカーテンレールが壊れていて、カーテンが閉められないのだ。
これはやんちゃ盛りな頃の飼い猫(オスの雉猫。名はしらたま)に破壊されたせい。
前述の通り、外から覗かれる可能性がほぼ皆無だった為、大雑把な私はこれを放置していた。

結果。朝日と共に目覚め日だまりの中で二度寝し、星空と共に眠る生活を送る事になった。二度寝していなければ、ジブリヒロインになれたかもしれない。
またこの生活は、雨の日も格別だった。“安眠BGM”などのワードで検索してみれば分かるが、雨や滝、水の音は人の心にしみるのだ。

梅雨時のようなしとしと続く長雨も良いし、雷を伴う悪天候も良い。楽しい。こればかりは安眠には程遠かったが。

布団から見上げる窓越しの曇天。徐々に閉じていく瞼もお構いなしに続く雨音。あれを超える幸福な眠りを私は知らない。


こちら初めて参加させていただきました!


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