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婚約指輪を買いに行った話

婚約指輪を買いに行った。
恐らく、というか絶対に最初で最後の経験だろう。

デキる男性なら彼女の好みや好きなブランドをリサーチして、サプライズでプレンゼントするのだろうけど、残念ながら私にはそんなことはできなかった。
彼女が気になっているというブランドをいくつかピックアップしてもらい、一緒に選びに行った。サプライズ感は全くないが、これがベストのだろう。安い買物ではない、失敗はどうしても避けたい。彼女としても、一生に一度の婚約指輪なのだから、自分で気にいったものが良いに決まっている。

彼女がピックアップしたブランドを予約して何軒か指輪を見に行くことにした。
指輪のブランドなんてどれも初めて聞いたし、初めて入った。なんとなく、全身UNIQLOでない方がいいだろうと、UNIQLOダウンはやめておいた。
予約なしでも入れるのだろうけど、予約して行ったおかげで半個室のようなスペースに通してもらった。周りは同じように婚約指輪を選びに来ている同年代、そしてふらっと来たであろうインバウンドの方々。
席に案内されると、ウェルカムシャンパンまで出してもらった。結婚式見学でもウェルカムシャンパンを出してくれるところもあったが、結婚業界はシャンパンでもてなす文化なのだろうか。

シャンパンを飲みながら指輪を選ぶ。ついに自分もここまで来たか。そんなふうに思った。
ショーウィンドウの中にはきらびやかに指輪が並んでいる。しかし、ショーウィンドウを見ながら選ぶ、ということはなかった。気になる指輪のデザインをカタログから選ぶと、それを席までわざわざ運んで来てくれるのである。

色々な指輪を見てどれがいいのか決めて行くのだが、まず指輪のデザイン、そしてどんなダイヤモンドにするかを決めていく。
指輪のデザインで迷うのはよく分かる。ブランドごとにデザインは当に千差万別である。一方でダイヤモンドはせいぜい大きさ(カラット数)くらいかと思っていたが実はそうではない。ダイヤモンドにも悩みどころはたくさんある。

ダイヤモンドを選ぶポイントは大きく3つある。
①重さ(カラット数)
②カラー
③クラリティ
である。
カラット数は分かる。テレビや雑誌でよく何カラットのダイヤモンドです!!というのを見てきた。
次にカラー。ダイヤモンドはより透明なほど価値としては高い。イエローなどの色がついたものは若干価格が落ちるのである。
最後にクラリティ。これはダイヤの中に、どれくらい不純物を含んでいるか、の指標である。当然不純物がない方が価値は高い。
この3つのポイントから、ダイヤモンドを選んでいく。
婚約指輪の値段は多少指輪のデザインによっても変わるが、ほぼダイヤモンドの値段に依存すると言っても過言ではない。

それぞれのポイントで選んで行くわけだが、カラット数は見て分かりやすい。0.1カラット違えば見た目が全然違う。当然大きければ、それだけ金額は高くなるが、彼女の希望を聞いてすんなりと決まった。カラーもそこまで迷わなかった。やはりランクを落とすと多少黄色がかったような色になる。なので、かなりいいランクのものを選んだ。

問題はクラリティである。ランクが違うダイヤモンドを見比べても全く違いが分からない。そもそも肉眼で確認できるレベルの不純物ではないそうだ。加えて、行った店自体がダイヤモンドの質を売りにしている。出してくるダイヤモンドはそもそもかなり品質的には良いものなのである。
見た目には分からない差であるが、値段はランク1つ下げるとかなり変わってくる。正直、カラット数とカラーに拘ったのでクラリティは下げたい。迷った挙げ句、「皆さん、クラリティは何を基準に選んでいるんですか?正直見ても違いがわからなくて」と正直に聞いてみた。
そしたら一言「最終的にはお気持ちです。」と。

その瞬間、クラリティは下げようか、と思っていた数秒前の自分が恥ずかしくなった。そうだよ、たしかに見た目では全くわからないかも知れないが、一生に一度の婚約指輪でケチるのは違うだろう!

そう心に思ってその日は店を後にして、後日再び店に来た。今度は1人である。自分のお気持ちを決めに来たのだ。
いつものようにウェルカムシャンパンを飲みながら、前回選んだ指輪のデザインとダイヤモンドのカラット数、カラー、クラリティを伝えた。後悔は全くない。相手には分からないクラリティにまで拘る、それが男だろう。結局クラリティもかなり高いものにした。もちろん、どのランクのクラリティにしたか彼女に伝えはしない。

注文して数週間、ついに婚約指輪が完成した。婚約指輪と一緒に渡されたのは大層な冊子。開いてみるとダイヤモンドの証明書である。そこには自分の心に閉まっておくはずだった彼女への気持ちことクラリティがデカデカと載っていた。



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