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交通フィンテックという新境地

鉄道銀行という地殻変動

京王電鉄の銀行


京王電鉄グループ
が国内の鉄道会社として初めて銀行サービスを始めました。

「京王NEOBANK」という金融サービスで、スマホアプリで預金や決済などを提供し、その利用で京王ポイントがたまるというものです。

https://www.keio-passport.co.jp/neobank/index.html


さらに住宅ローンは最大12万ポイントたまり、グループ会社の京王不動産などを通じて買うとさらに1万ポイント付与するというサービス内容になっています。

「鉄道銀行」の誕生で金融業界に地殻変動が起きていますが、なぜ鉄道会社が金融サービスを始めたのでしょうか。

その理由は新型コロナウイルスです。

日本では外出制限やテレワークの普及など生活スタイルが大きく変化したことはご存知だと思います。

そしてこの生活スタイルの変化は行動制限解除後も残り、京王電鉄の23年4~9月の輸送人員は19年同期を16%下回っています。

そのため鉄道会社にとっては、新たに長期的な顧客との接点を持つ必要が生まれ、金融サービスへと進出したのです。

預金や決済は日常的に顧客との接点を持てるため、人流が減った穴を埋められる可能性があります。
そこで京王電鉄はネット銀行大手の住信SBIネット銀行と手を組み金融サービスに着手しました。

住信SBIネット銀行の強みは銀行機能を外部に提供するバンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)というものです。

これにより1から金融サービスを構築する必要がなくなり、京王電鉄と住信SBIネット銀行が接触してからわずか1年半でサービスを発表したのです。

また、金融サービスを始めたのは京王電鉄だけではありません。

JR東日本の銀行


JR東日本も2024年に預金や住宅ローンを提供する「JRE BANK」を始める予定です。

https://www.jreast.co.jp/card/news/pdf/20221213.pdf


定期券や「JREポイント」と銀行口座を組み合わせることで、JR東日本の商業施設などの利用頻度を高める狙いがあります。

子会社のビューカードと楽天銀行が組み、楽天銀行がBaaSで銀行機能を提供します。
最大の特徴はビューカードが駅構内に展開するATMで引き出し手数料が無制限無料となる点で、鉄道利用者を金融サービスに送客して差別化する狙いです。

銀行にとってのメリット


住信SBIネット銀行は日本航空にも銀行機能を提供
するなど交通事業者の顧客基盤を取り込んでいますし、三井住友フィナンシャルグループの三井住友カードは、ANAホールディングスに決済基盤を提供しており、決済基盤の提供が過熱しています。

では住信SBIネット銀行をはじめとする銀行がBaaSで交通会社に銀行機能を提供していますが、銀行にとってのメリットは何なのでしょうか。

それは、若年層の顧客基盤が獲得できる可能性があるということです。

国内市場は人口減少で、交通事業者も銀行も若年層を中心とする顧客獲得が課題となっています。

収益を多角化したい交通事業者と顧客基盤を得たい銀行の利害が一致したため、銀行にとってもメリットがあります。

ただ、住宅ローンを中心に個人向け金融は競合が増えることになるので、サービスが乱立する可能性はあります。

しかし、デメリットはあるものの鉄道事業者の強い顧客基盤を通じて預金や融資を獲得できるというメリットの方が大きいのです。

個別の銀行のファンはなかなかいないと思いますが、鉄道のファンは非常に多いです。
また、鉄道会社は地元密着のため、粘着率が高いことが見込めることもメリットと考えられています。

つまり「経済圏」を確立できる可能性があるということでしょう。

経済圏確立のメリット


京王電鉄グループは鉄道だけでなく、不動産業や小売業も行っています。

金融サービスも行うことで住宅ローンと不動産業は相乗効果が見込めますし、預金や決済データから小売業へそのデータを活かすことも可能です。

鉄道は生活に密着しているため、顧客が生活圏内でどのようなお金の利用をしたかということがわかることは新たなサービス創出にもつながります。

このような京王電鉄経済圏を作り上げることで顧客の囲い込みができれば顧客と密接な関係が築けますし、安定的な収益を見込むことができます。

この経済圏は現在通信企業が確立しているといえます。

有名なのは「楽天経済圏」でしょう。

https://moneyterakoya.com/fp-tool/rakuten-0-1/


楽天市場で商品を楽天カードを使用して購入すると楽天ポイントがたまりますし、そのポイントは楽天トラベルなどに使用できます。
また、楽天トラベルでもポイントがたまり、楽天証券や楽天銀行もあります。

このように顧客の生活のいたるところで楽天グループを活用してもらえるように経済圏を確立しています。

また、NTTやKDDIも経済圏を確立しています。

NTT HPより


NTTにおいてもスマホを中心に金融サービスや電気などといったサービスを提供しており、dポイントを活用してもらおうとしています。

このような経済圏を確立することはストックビジネスを確立することになります。
一度経済圏に入ってしまうとなかなか他の経済圏に移ることはないので安定的な利益を見込むことができるのです。

鉄道会社においても今回の銀行を提供することで経済圏を確立できる可能性があります。

鉄道だけでなく、ショッピングセンターなどの不動産、小売業も行っており、顧客と生の接点を持てるという強みがあります。

通信企業はネット通販が主ですから、リアルな買い物の点では鉄道会社が経済圏を敷ける可能性があるのではないでしょうか。

最寄り駅で買い物をすることは多いと思いますので、ここに経済圏を敷くことができれば鉄道会社が新たなストックビジネスを確立し、成長する可能性があると考えています。

他にも企業研究を書いていますので読んでいただけると幸いです。


NTTについてはこちらの記事で書いていますので読んでいただけると嬉しいです。



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