収集物整理
学生のころ、収集物整理のアルバイトをやっていたことがあります。
仕事内容は、収集家の方の集めたものの整理をお手伝いしに行くというものです。
収集家の方には、いろんな方がおられまして、ねこのものを集めている方や、鋏を集めている方、星を集めている方、ビニール傘を集めているという方もありました。
収集物整理の手伝いと言っても仕事内容は様々で、収集物にラベルを貼ったり、お手入れをしたり、収集物の部屋の模様替えの助手などがありました。
派遣先のひとつに、鳥のものの収集家だった方のおうちがありました。
わたしの学校からさほど離れていないそのおうちは、深緑色の屋根に白い壁のちいさなおうちで、お仕事を依頼してこられたのは、年輩の男性でした。
鳥のものの収集家だった妻が亡くなったので、収集物の整理を手伝ってほしいとのことでした。
収集物部屋は、4畳ほど。
たくさんの鳥のものでいっぱいでした。
鳥の絵、写真、人形
つばめの柄の帯、小鳥の髪留め、鳩の形の器
鳥の図鑑、鷲のモチーフのネックレス
ところ狭しと並べられた鳥のものたちのほとんどは、夫人の友人や、夫人が小学校の先生だったころの教え子たちにゆずるということでした。
形見として手元に残したい物をよけた後、さっそくわたしたちは、鳥のものたちをわけていきました。
この写真集はあのひと、この油絵はあの生徒さん、この鳩時計はお義姉さん…
ひとつずつわけていき、次に、わけた鳥たちを丁寧に梱包していきます。
取りに来れる方もいれば、遠くにいて来れない方もいるので、梱包したもののいくつかは、遠い遠い住所を書いて、小包としておくります。
たくさんの鳥たちをすっかり整理しおわると、4畳の部屋だけがそこにありました。
よくはたらいてくれたお礼にと、ご主人は、わたしにも鳥のものをくれました。
そんな大事なものを、とわたしは思わず後ずさりしたのを覚えています。
妻も喜ぶと思う。
そう言って、ご主人は小箱を差し出しました。
あの時もらった鳥のブローチと、フラミンゴのハンカチは、今も、わたしの箪笥のいちばんいいところにしまってあります。
余談ですが、旦那さんはレースの収集家です。
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