真のオールスパイス
なるほど。
その3つ以外のスパイスの香りはしないってことか。
そんな体たらくでオールスパイスと名乗るだなんて、おこがましいな。
作るしかないか。
真のオールスパイス。
さあ、ここまでいろいろ入れてきたが、ついに完成するぞ。
最後の仕上げがこいつだ!
バニラエッセンス、好きなんです。
スパイスからバニラの香りしたら、めちゃくちゃ素敵だと思うし。
これまで粉状のものを選んで入れてきたけど、特例措置。
香りづけだからセーフだよね。
こいつを5~10滴くらいふりかけて・・・。
完成したものがこちら。
なんか結構おしゃれな感じになった。
インテリアとして置けそう。友達に自慢しようかな。
もちろんこのままだと味が偏ってしまうので、思いっきりシェイクする。
行くぜ!!!
オラア!とばかりに振ってみること10秒ちょい
砂漠化した・・・。
あんなに色鮮やかだったスパイスが、死の大地と化してしまった・・・。
子どもに見せたら水とスコップを持ってきて砂遊びし始めるかもしれない。
しかしこれは砂ではなく、紛う事なき真のオールスパイス。
作ったからにはどんな味わいなのか確かめてみたい・・・そんな親心がうずうずしている。
研究結果を試したくて仕方ない博士キャラに共感しつつ、いそいそと
ごはんを用意する。
トップバッターはからあげ。
調べてみると、どうやらオールスパイスはからあげにもよく合うらしい。
それではこいつに、
なんか本当に、地面に落としたからあげのような見た目になったな・・・。
まあいいや、たぶん美味しいだろと思って噛り付く。
んー。
しょっぱい。
あとちょっと辛い。
いやでも、これはこれで結構アリだな。
そんな感じで食い終わり。
ごちそうさまの写真撮ろうかなとか思ったけど、皿がきったなくなったので自主規制。
お次はアメリカンドッグ。
もうこのまま食べたいくらい美味しそう。
なんか見た目があんまり期待できそうにないけど・・・。
いや、料理は見た目じゃなくて味だからな。それでは実食。
しょっっっっっぱ!!!!!!!!!!!!!!
なんだこれ、舌どころか唇までヒリヒリするんだけど!!!!
すごいな、山椒とか花椒の香りがめちゃくちゃ強い。さっきのからあげでは全く感じなかったのに、アメリカンドッグにかけた途端すごく感じるようになった。
想像以上の威力に若干ダウン。
からあげで「これ結構いいもん作ったんじゃね?」とか思ってた矢先にこれだからギャップにやられてしまった。
なんか、ちょっとイキって七味ぶっかけまくった時と同じくらい口が痛い。
あとすっげえニンニク臭い。絶対ガーリックソルトだろこれ。
小休憩を挟んで、お次はどん兵衛。七味が合うならこれにも合うでしょ、七味入ってるんだし
さっきのダメージの影響か、粉末スープを入れ忘れたせいで若干スープが薄いけど、気にしない気にしない。
うわ・・・。全く彩りになってねえ・・・。
いけるのかな、これ。不安だけど、いただきます。
・・・?
あれ、なんかこれ食ってる時の記憶がないな・・・?
これ、記事に書く用の食レポ的なメモも取りながら食べてたのだけど、
これだけしか書いてなくてウケた。諦めるなよ、思い出せって。
強いて言えば、麺そのものにはそこまで味が無かったような気がする。
スープ飲んでる時は・・・。ダメだ、思い出せない。まるで記憶に靄がかかったようだ。
確実に言えることと言えば。素直に付属の七味唐辛子を入れた方がいいということだけだ。
白ごはんにもかけてみる。
白米は何にでも合うし、ふりかけも入ってるし、きっと美味しくいただけるはず。
すっっごいふりかけみたいだよコレ!!
なんかもう、そういうことなのかもしれないな。結局最後は白米に行き着くのが正解なんだろうな、きっと、そう。
それでは、いただきま~す。
食べた瞬間は、ふりかけだな、と思った。
しかし、箸を進めていくうちに、その牙を剥いてきやがった。
花椒、わさび、あと謎の虚無味・・・。
そうだ、そういえば昔”砂糖おにぎり”を食べたことがあったけど、ごはんと砂糖って混ぜると味が無くなる辛ッ
いやダメだ砂糖の味とか感じてる場合じゃないわ熱いって舌が加減しろバカ
最悪だこれは、自分はなんてものを生み出してしまったのか。
ふりかけなんてとんでもねえ、こんなふりかけがこの世にあってたまるか。
「白ごはんで受け止められないなら、何したってダメなんじゃね・・・?」と半泣きで思いながら、なんとか完食。
あー、キッツ・・・。
からあげ、アメリカンドッグ、どん兵衛と、三連戦でそれなりにお腹が重たくなってたこともあって、めちゃくちゃダメージがデカい。
いやもう、ヤバすぎるぞこいつ。しばらく浜辺に打ち上げられた魚みたいに喘いだもん。
舌も唇も喉の入り口もぜーんぶ炎症起こした感じ。あと心臓もビートが速くなったし。
もう既にかなり戦意喪失してるんだけど・・・。これちゃんと使いきれるのかな。
そんな感じで30分くらい犬のように舌を出しながら呼吸してたら、まあまあ回復してきた。
最後の戦いに挑む。
いっぱい食べてお腹いっぱいだし、最後にデザート食べて笑顔になろう。
上白糖とかグラニュー糖とかいろいろ入ってるし、きっと合うはず。
この時、「ケーキにスパイスをかけたいと思う瞬間って訪れなくない?」と思いました。
しかし時すでに遅し。もうこのケーキは砂粒によって侵されてしまった。
自分でやったことは自分で責任を取る。いただきます。
まずい。
しょっぱさを感じたすぐ後に甘さが飛んでくる・・・。
率直に言って気持ち悪い。たぶんアスカも乾いた目でそう言ってくる。
まあでも、ラストにはふさわしいものかもしれない。食べながら、「ああ、まずいなあ・・・」ってしみじみと感じ入っちゃうまずさだったし。
というわけで、真のオールスパイスを作ったわけだけど。
まだアホほどある・・・。
え、あんな地獄を見たのに、1ミリも減ってなくない?
これを残りの人生全てを賭けて空っぽにしろと?
現時点でもうかなり死にかけ、喉の奥からスパイスの刺激臭がダダ洩れなのに?
そっかあ・・・。
だが自分に悔いはない。これは誰に強制されたわけもでない。自分の意志で選んだ道だ。
今回のことを知れば、きっと人は自分をあざ笑うのだろう。「何を馬鹿なことを」「なぜやる前に想像できなかった?」「金もったいなっ」などと。
それでも世界は、こんな馬鹿野郎を受け入れてくれる。
自分の決断に責任を背負い、日々戦い続ける者。世界はいつだって、そんな人々を、称賛せず、罵倒もせず、ただ静かに受け入れてくれる。
ああ、世界はいつだって、ぼくらの味方だったんだ・・・。
死の大地を作り上げた自分ですら、母なる大地は包み込んでくれる・・・。
真のオールスパイスをつくることによって、ようやく大切なことに気づけた気がする。
自分が生きるこの世界に感謝を捧ぐ。