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NHKの「100分de名著」のテキストを読む読書会(1)ルソー『エミール』(西研著)

 人類の歴史には、1冊の本が革命を起こしたことが何度かあります。
 ルソーの「エミール」は、フランス革命を起こした思想として知られています。

 フランス革命前まで、ヨーロッパの国々は絶対王政でした。封建的な身分制度もありました。

 今回のテキストから引用します。

<『社会契約論』でルソーは、「一般意思」(皆が欲すること)という概念を提示しました。<社会(国家)とは、構成員すべてが対等かつ平和に共存するために創られたものだ。だから、そこでの法律は、どんな人にとっても利益となること、つまり、皆が欲すること(一般意思)でなくてはならない>

<しかし、疑問もわいてきました。「人はまずは自分の利益を考えるもの。みんなの利益を考えるようになれるのかな」>

<ですから、教育論である『エミール』の目的の一つは、「みんなのため」を考えられる人間をどうやって育てるか、ということになります>

<ルソーが『エミール』で課題としたのは、「自分のため」と「みんなのため」という、折り合いにくい二つを両立させた真に自由な人間をどうやって育てるか、ということでした>

<わたしたちは、いわば、二回この世に生まれる。一回目は存在するために、二回目は生きるために。はじめは人間に生まれ、つぎには男性か女性に生まれる>

<いわゆる思春期になると、官能の情念、つまり性の欲求が目覚めてきます。そうすると、異性に気に入られたいという思いが出てきて、競争心が不可避になるとルソーはいいます。ここまでは自分の欲望や必要に従って生きるという方針でやってきましたが、今後はどうしても他人を意識せざるを得なくなります。 他人に勝ちたい、目立ちたい、というような情念も目覚めてきます。ですからこの時点で、ルソーは、人間の情念の本性について考察しようとするのです>

<ところで「情念」というと、日本語ではおどろおどろしい響きがありますが、フランス語では passion ですから、広くさまざまな「感情」を指す言葉ととらえてよいでしょう。同じ語源をもつ passif という言葉は「受動的な」という意味ですから、ここでいう情念には、自分の意志から生まれるものではなく自分にやってきてしまうものという語感が伴っています>

<さて、ルソーはまず、すべての情念の源でありその根本となるものは、自分に対する愛、すなわち「自己愛 (amour de soi =アムール・ド・ソワ)」なのだといいます。人はみな自己を保存しなければならないのだから、そのために自分を配慮し自分を愛さなければならない。その意味で、自己愛とは常によいものであるとルソーはとらえます。ところが、この自己愛という根本的な情念が悪い方向に変形していくと、「自尊心(amour propre=アムール・プロプル)」になります>

<「自分にたいする愛[自己愛]は、自分のことだけを問題にするから、自分のほんとうの必要がみたされれば満足する。けれども自尊心は、自分をほかのものにくらべてみるから、満足することはけっしてないし、満足するはずもない」ーー自尊心は、自己愛と違って、自分が他者と比べてより優れた存在でありたいという欲望のことです。そこには競争心が含まれますが、競争心には際限がありません。一度他人よりも自分のほうが優れていると思えたとしても、より優れた人が出てくれば、さらにその人に打ち勝ちたいという気持ちが生じます。また自尊心は、他者に対して「自分をほかのだれよりも愛すること」を、さらに他者自身よりも自分のほうを愛してくれることを要求しますが、これは不可能なことですから、いつまでたっても満足することはできません。 ですから、「なごやかな、愛情にみちた情念は自分にたいする愛 [自己愛]から生まれ、憎しみにみちた、いらだちやすい情念は自尊心から生まれる」とルソーは述べます>

<このように自己愛と自尊心をはっきり区別しているところが、ルソーの大きな特徴です。そして、自尊心というものはどうしても生じてきてしまうものではあるが、できるだけそちらに軸足を置かない人間にエミールを育てたいというのが、基本的な教育方針です>

<「人間を本質的に善良にするのは、多くの欲望をもたないこと、そして自分をあまり他人にくらべてみないことだ」ーーこの言葉には同意できる人も多いのではないでしょうか。>
 
<さらに興味深いのは、この自己愛こそが、他者への愛につながっていくと述べている点です>

<人間は、赤ん坊のときから、快を求めて不快を避けようとします。心地よくなることを求めているわけですから、これは原初的な自己愛だと言えるでしょう。すると、自分に快を与えてくれる人、自分に優しくしてくれる人に愛着をもつようになるのは、当然のなりゆきです。だから親や、ルソーの時代なら乳母など、自分を世話してくれる人のことを好きになります。そして、成長するにしたがって、そうやって世話をしてくれる人がどのような意図をもっているのかを理解するようになります。「わたしたちに害をくわえたり、わたしたちの役にたったりしようとする明らかな意図」を知るようになると、素朴な好悪から大人のもつ愛憎へと近づき始めます。快を求めて不快を避けるという人間の根本にある自己愛から他人への愛が広がっていくというのは、ルソー独特の、そして正しい考え方だと思います>

 この文章を読んで、どう感じましたか。
 私は、自分は、自尊心が強いと自覚しました。
 また、多くの欲望をもっていると自覚しました。
 さらに、他人と比較していると自覚しました。

 ただ、母親が、幼少時から溺愛してくれたおかげで、自己愛と他者への愛はあると自覚しました。

 私は、原書も読みました。
 原書は、難解ですが、NHKの解説書はわかりやすいです。

 また、「note」には、NHKの「100分de名著」でルソーの「社会契約論」を解説した、熊本大学准教授の苫野一徳氏が、「ルソー『エミール』解説」を書いています。こちらもわかりやすいです。


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