自分が創り出した壁で相手が見えなくなる
介護士として日々の仕事に追われていると、ふとした瞬間に「なぜ、こんなに心の距離を感じるのだろう?」と感じることがあるかもしれません。
それは、入居者様との関係に限らず、同僚や上司、さらには自分自身との関わりにも当てはまることです。
人は無意識のうちに、自分の心の中に壁を作り、その壁が原因で本来の相手の姿や気持ちが見えなくなってしまうことがあります。
今回は、その「自分が創り出した壁」について考え、それをどう乗り越えて相手と本当に繋がることができるのか、深掘りしていきたいと思います。
自分が創り出す「心の壁」とは?
人間関係において、特に介護の現場では、相手とのコミュニケーションがスムーズでなければ、仕事に大きな影響を及ぼします。
私たちが心の中に「壁」を作ってしまう原因は、多岐にわたります。
例えば、仕事の忙しさから余裕がなくなり、相手のことをじっくり見ることができなくなることが一つの要因です。
あるいは、過去の経験や固定観念が、私たちの見方を制限し、相手をその枠に押し込めてしまうこともあります。
例えば、ある入居者様がいつも怒っているように見えるとします。その怒りを表面的に捉え、「この人はいつも怒っているから近づきたくない」と思ってしまうことはありませんか?
そうすると、その人に対して自分の心の中に「壁」ができ、相手の本当の気持ちや背景が見えなくなってしまいます。
しかし、その怒りの背後には、孤独感や不安が潜んでいるかもしれません。
もし私たちがその「壁」を自分で作り上げてしまっていることに気づかなければ、相手の真の姿に目を向けることができず、結果として関係はより表面的なものになってしまいます。
壁が生まれる瞬間
自分が壁を作ってしまう瞬間は、意外にも日常の中で何度も訪れます。
たとえば、相手に対して「この人はこういう人だ」というレッテルを貼ってしまうと、その瞬間から私たちは自分の中に壁を作り始めます。
それは、相手を一面的にしか見なくなるということです。怒りっぽい人、無口な人、話好きな人など、私たちは無意識に相手に対してラベルを貼り、そのラベルを基に相手を判断してしまいます。
このような固定観念は、相手の本当の姿を見えなくするだけでなく、私たち自身が相手に対して持つ期待や希望にも影響を与えます。
例えば、「この人はいつもこうだから、話しても無駄だ」と思ってしまうと、それ以上の深い関わりを持つことを避けてしまうでしょう。
その結果、相手も心を開かなくなり、お互いの関係がますます壁に囲まれてしまいます。
また、私たちは自己防衛のために壁を作ることもあります。
例えば、過去に傷ついた経験がある場合、その経験から相手との距離を保ち、再び傷つかないようにするために心の壁を作ることがあります。
このように、壁は私たちを守るためのものでもありますが、その一方で、相手との本当の関係を妨げる障害にもなり得ます。
壁を壊すためにできること
では、どうすれば私たちは自分が創り出した壁を壊し、相手の真の姿を見ることができるのでしょうか?
まずは、自分が壁を作ってしまっていることに気づくことが大切です。
日々の中で、相手に対してどのようなラベルを貼っているのか、どのような固定観念にとらわれているのかを振り返ってみることが第一歩です。
次に、相手に対して「知りたい」という気持ちを持つことが重要です。
例えば、先ほどの例で言えば、怒りっぽい入居者様に対して、「なぜこの方はいつも怒っているのだろう?」と疑問を持ち、その背景を知ろうとする姿勢が壁を壊すきっかけになります。
相手の行動の背後には必ず理由があります。その理由を知ることで、私たちは相手の本当の気持ちや状況に寄り添うことができるのです。
もう一つ大切なのは、「相手の立場に立つ」ことです。自分の視点からだけでなく、相手がどのように世界を見ているのか、どのような気持ちで日々を過ごしているのかを想像してみることです。
特に介護の現場では、入居者様がどのような心境でいるのかを理解することが、より良いケアに繋がります。
相手の立場に立つことで、私たちは自分が作り出した壁を少しずつ壊し、相手との距離を縮めることができるのです。
自分との壁も取り払う
興味深いことに、他者との間に壁を作る時、その壁は往々にして自分自身との間にも存在しています。
自分に対しても厳しい期待や制限を設け、それによって自分の本当の気持ちや欲望を見えなくしていることがあります。
例えば、仕事において「失敗してはいけない」「完璧でなければならない」といったプレッシャーを自分に課してしまうと、次第に自分自身の声を聞き取れなくなり、ストレスが溜まる一方です。
私たちが他者に対して壁を作る時、それはしばしば自分自身に対しても同様の態度を取っていることの反映です。
自分を知り、自分の感情やニーズに向き合うことで、他者との壁も自然と薄れていきます。介護の仕事はとても感情的に要求の高い仕事です。
だからこそ、まずは自分自身に優しく接し、自分の感情を受け入れることが重要です。それができると、他者に対してもより柔軟で、寛大な心で接することができるようになります。
壁がなくなると見えてくるもの
壁を取り払うと、私たちの前には新しい景色が広がります。
例えば、いつも怒っていた入居者様が、実は深い孤独感に苛まれていたことに気づいた瞬間、その人との関係性が一変します。
こちらが心を開けば、相手も心を開きます。介護の現場において、これほど感動的な瞬間はありません。
また、壁がなくなることで、私たちは相手に対してより共感的に、そして真摯に向き合うことができるようになります。
表面的なコミュニケーションではなく、深いレベルでの信頼関係が築かれ、仕事のやりがいも増します。それは、私たちが提供するケアの質だけでなく、私たち自身の充実感にも直結します。
さらに、壁がなくなると、私たちは自分自身にも優しくなり、よりバランスの取れた働き方ができるようになります。
自分に対しても他者に対しても壁を作らないことで、感情的な負担が軽減され、仕事をより楽に、そして心地よく感じることができるでしょう。
まとめ
「自分が創り出した壁で相手が見えなくなる」というのは、誰しもが経験することかもしれません。
しかし、その壁に気づき、それを壊す努力をすることで、私たちは相手との関係をより深く、豊かなものに変えることができます。
介護の現場では、特にこの「壁を壊す」ことが大切です。
なぜなら、入居者様一人一人が異なる背景や感情を抱えており、彼らとの深い信頼関係が築かれることで、介護の質も飛躍的に向上するからです。
また、介護職は対人関係が中心にある職業であるため、その壁がどれだけの影響を及ぼすか、日々の業務において身にしみて感じることがあるでしょう。
壁を越えて見える新たな可能性
壁を壊すという行動は、相手に対してオープンな姿勢で接することを意味します。
それは、恐れや不安を手放し、相手の話を受け入れる準備ができているというサインです。相手もその変化を敏感に感じ取り、心を開いてくれることが多いです。
特に介護の現場では、私たちが思う以上に入居者様が私たちの態度や感情に敏感です。
もし壁が存在するままでは、その壁が相手に「この人は私を理解しようとしていない」「自分は無視されている」と感じさせることになります。
しかし、壁を取り払い、相手の話を真摯に聞くことで、彼らも自分の思いをより率直に伝えてくれるようになります。
例えば、ある日突然、ずっと無口だった入居者様が、長年感じていた不安や悲しみを話し始めたらどうでしょうか。
その瞬間、壁がなくなり、相手の真の気持ちや思いが共有されることになります。
このような瞬間は、私たち介護職にとって大きな喜びであり、やりがいの一つです。自分の関わりが相手に安心感や信頼を与え、孤独や不安を少しでも和らげることができたと実感する瞬間だからです。
介護職としての成長
壁を作らず、相手に対して常にオープンな姿勢でいることは、簡単なことではありません。
日々のストレスや感情的な負担、さらには個々の入居者様のニーズに応えながら自分の感情をコントロールするのは大変です。
しかし、その過程を通じて私たち自身も成長していきます。
壁を壊すことは、私たち自身の成長に繋がります。それは、入居者様だけでなく、同僚や家族、友人との関係にも応用できるスキルです。
日常生活においても、私たちは無意識に壁を作り、相手との関係を制限してしまうことがあります。
その壁を一度壊すと、人間関係が驚くほどスムーズになり、お互いに理解し合えるようになります。
介護の現場では特に、入居者様やそのご家族との信頼関係が重要です。
この信頼関係を築くためには、壁を作らず、相手の気持ちに寄り添い、真摯に向き合う姿勢が不可欠です。
これができるようになると、私たちの仕事に対する満足感や充実感も大きく変わってくるでしょう。
壁を壊すための心構え
具体的に、どのような心構えが必要かについて考えてみましょう。
まず、常に「自分の見方がすべてではない」という謙虚な姿勢を持つことが重要です。
自分の感情や過去の経験が相手に対して偏見を生んでいないか、冷静に振り返ることが大切です。相手の立場や背景を考慮し、真の姿を見ようとする努力が必要です。
また、「相手に興味を持つ」ということも重要です。人間関係は、表面的なやり取りだけでなく、深い部分でのつながりが求められます。
入居者様が何を感じ、何を思っているのか、どうしてそのような行動をとるのかを知ろうとする姿勢が、壁を壊すきっかけとなります。
相手に対して興味を持ち、理解しようとすることが、相手の本当の姿を見せてくれる大きなステップになります。
最後に、他者との壁を壊すためには、自分自身の心の状態を整えることも忘れてはいけません。介護職は感情的なエネルギーを多く使う仕事です。
日々のストレスや疲労がたまると、つい相手に対して閉鎖的になりがちです。自分自身のメンタルケアやリフレッシュを怠らないことで、相手とのコミュニケーションがよりスムーズになります。
さいごに
「自分が創り出した壁で相手が見えなくなる」ということは、誰にでも起こりうることです。
しかし、その壁に気づき、意識的に壊していくことで、私たちはより深い人間関係を築くことができ、仕事にも、そして人生にも新たな視点が生まれます。
介護の現場では特に、入居者様との信頼関係が私たちの仕事に大きな影響を与えます。だからこそ、自分の中にある壁を壊し、相手の本当の姿に目を向け、真摯に向き合うことが大切です。
壁を壊した先には、今まで見えなかった新しい景色が広がっています。
相手がどんな思いを抱えているのか、どんな人生を歩んできたのか、その奥深くまで理解しようとすることで、介護の仕事はますます豊かで、意味のあるものになるでしょう。
自分自身との壁を取り払い、他者との壁を乗り越えることで、私たちの心はより自由になり、相手との関わりも深まります。
日々の仕事の中で壁を感じた時こそ、それを壊すチャンスです。
お互いに心を開き、真の信頼関係を築いていくことで、介護の現場はさらに温かく、支え合いの場へと変わっていくでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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