【短編小説】きききの吊り橋
ねえ、そのタイムトンネルを通り抜ければ、あの日に戻れるのかな。
汽笛に僕は意外なくらい驚き、電車はトンネルに入った。その驚きを静める間も無く明るさは戻った。トンネルは三つあって、どれも5秒位の短いトンネルだった。驚いたのは僕が少し緊張してたからだろう。車窓からの風景は、東西の低い山並みに挟まれた狭い町っていう感じ。小さな川が線路と並行して流れてる。手が届きそうなほど近付いた山々には5月初旬の新緑の中、川岸の所々に濃いピンクの桜が見える。東京はもう初夏だけど、ここにはまだ