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0196.島村楽器、襲撃

島村楽器イオンモール船橋店に、デジタルピアノの実機を触れて弾いてみるつもりで行った。すると、鍵数が少ないミニキーボード以外、レギュラーサイズの 61鍵、76鍵、88鍵は、すべて白鍵の幅が 20ミリ以上だった。これは嬉しいことだった。見に来て良かったなと思った。本体は、CASIO の 61鍵キーボードが 92センチ、YAMAHA の 76鍵キーボードは 125センチ。メジャーを持っていったので、計って LINE の Keepメモに記録した。今日は見るだけで買うつもりはなかった。

92センチ の 61鍵は 1メートル 角のテーブルに乗せて弾くことができるが、「YELL」を弾こうとすると音が足りない。76鍵だと「YELL」を弾くことはできるが、125センチ あるのでテーブルからはみ出てしまう。どっちを選ぶかだ。

1メートル を超えるモノを常時置いておく場所はない。普段は立てかけておけばいいが、弾くときに本機の “脚” がテーブルの天板に乗らず、クリアランス無しで本機の裏が直でテーブルに接することになってしまう。

一方、「YELL」で足らない音があることに関しては、その音がメロディパートではなく、なんというかわからないが、伴奏パートあるいはベースパートの音であり、ネット記事には “弾かなくてもいい” あるいは “代替方法がある” というアドバイスもあった。となると、その代替方法を考えるのもピアノ演奏の “テクニック” と言えるのではないだろうか。

どっちを選ぶか判断に迷うので、意見を聴こうと、店員さんを呼んだ。といっても、今日買うつもりは全くなかった。ただ、“弾かなくてもいい” あるいは “代替方法がある” という、それはどういうことなのかを訊きたかった。

来てくれた女性のIさんは、後で知るのだが店長さんだった。俺はIさんに、ピアノは全くの初心者であること、NHKBS「街角ピアノ」が好きでごく最近ピアノが弾きたくなったこと、いつかは駅ピアノを弾きたいと思っていること、イトーヨーカドーにあるヤマハ音楽教室に2回通った挙句退会したこと、いまはその教室のピアノレンタルでいきものがかりの「YELL」を練習していること、左に片麻痺があること、難聴のせいで “聴こえ” がわるいこと、そんなことまで話してから、“弾かなくてもいい” あるいは “代替方法がある” というそのことを尋ねた。

音のある方に 1オクターヴずらして同じ音を出して演奏することができますという。その 1オクターヴずらす、そのことはほかの例でもうなずけた。「YELL」をピアノ演奏する動画で、譜面と違う音を押さえているということがあったので不思議に思っていた。そう、あれは 1オクターヴずらしていたのだ。そうかそうか、そういうことをやっても良いんだ。

そのことは、乾いた地面に水が染みこむように、俺のなかにすっと入った。Iさんには、うちもピアノ教室やっていますし、受講生は無料でアコースティックピアノが弾けますよと誘っていただいた。受講生でなくなっても1時間 660円で弾けますとのこと。

ピアノ教室がマンツーマンだというので、俺の心が揺れた。ピアノ教室に通うのが先かキーボードを買うのが先かみたいな選択になった。ピアノ教室は講師のスケジュールもあり、いつにするかということも考えないといけない。一方、キーボードを買うことについては、俺は買わないつもりで来たけれど、買ってしまえばすぐ弾くことができる。弾いたうえで、できないところわからないところがわかったら、ピアノ教室に入会して講師に教えを乞うことができる。

先に買うほうが自然のような気がした。買わないつもりで来たけれど、買った。61鍵の「CASIO CT-S300 DIGITAL KEYBOARD Casiotone」を、買った。

Iさんと話をしたおかげで、動くことができたような気がする。
「今日は譜面持ってきていないんですか?」
「持ってきていないです」
「こんど、譜面持ってきて弾いてみて下さい」
「そうします、で、少しでも弾けるようになったら自慢しに来ますね」
「あ、是非、そうしてください」

俺は、人と応対するのは得意なほうではない。でも、今日はIさんのおかげで望むほうに動けた。ありがとうございます。

島村楽器を出たあと、同じイオンモールにある KALASH(カラス)というインド料理レストランに入った。ほうれん草のカレーが美味かった。ナンとアイスチャイも美味かった。帰るとき、いままで音を立ててナンを延していたシェフが、間が空いたらしくちょうど俺の方を見ていたので、俺は手を挙げて挨拶した。シェフも笑って挨拶してくれた。

え、キーボード?

いや、まだ開封さえもしていないのである。

柳 秀三

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