【メメモリss】ソル「お姉ちゃんと動物園に来ました!」前編
登場人物
領主:ブルク公国のとある町でパン屋を経営。
ソルティーナ(主人公):ルナリンドの妹。姉と共に領主のパン屋を手伝っている。
ルナリンド:ソルティーナの姉。妹と共に領主の家で暮らす。
ソル「お姉ちゃん、はやくはやく!」
ルナリンド「ソル…待って…遠くに行かないで…。」
ソル「お姉ちゃんが遅いんだよぅ〜(^^)」
ソル「わぁ〜すごいお姉ちゃん、見て見て!
キリンだ!パンダもいるよ!」
ルナリンド「はぁはぁ…。(やっと追いついたわ…。)」
「ポコアポコ」
どこからともなく聞こえる謎の鳴き声。
姉妹達が声の方を振り向くと、オレンジ色の毛並みをした生き物が、2人をじっと見ていた。
ソル「ポコアポコだって!すごく珍しい鳴き声だねお姉ちゃん!」
「あたいは動物じゃないポコよ。」
ソル「わぁ!この子、人間の言葉が話せるんだね!」
ガルム「あたいの名はガルム。「幻影動物園」のえんちょーなのだ!動物じゃないポコ!」
獣耳と尻尾を生やした、年端も行かない少女の様な風貌に、呆然とする姉妹達。
ガルム「強いて言うなら人間とオオカミのハーフだ!まぁそんな事はいいさ!君たちを歓迎するポコ!」
ガルム「領主からあんた達の事は聞いてるさ!あたいと一緒に園内をまわらないかい?」
ソル「いくいく〜!」
ルナリンド「案内お願いしてもいいかしら…。」
ガルム「おっけー、あたいについてきな!」
ソル「楽しみだねお姉ちゃん!o(^-^)o」
ルナリンド「うふふ、そうね…。」
ルナリンド「…………。」
ルナリンド(ポコアポコってなにかしら…。)
ガルムに案内され、一行は最初の目的地へと赴いた。
ガルム「まずはこの部屋ポコ!」
ガルム「おーい、連れてきたポコよ〜。」
???「…………。」
???「合言葉は。」
ガルム「弱肉強食。」
???「よし、入れ。」
ソル「どんな動物と会えるか楽しみだなぁ。」
ルナリンド「弱肉…強食……。」
オートロック式の部屋に入った3人を、黒づくめの服をした、1人の女性が出迎える。
アーム「来たか。貴様ら、死ぬ覚悟は出来ているのか?」
思いもよらぬ強い口調にたじろぐ姉妹達。
アーム「早速だが、こいつらに餌やりをしてもらう。」
ソル「こ、こ、これって…、ライオン!?」
ライオン「グルルルル…………。」
ソル「可愛いけど近くで見ると怖い…(><)」
アーム「園長、こいつらが例の死にたがりか?」
ガルム「そうさ!この子達に餌やり体験させて欲しいんだ。」
アーム「自己紹介がまだだったな。アームストロングだ。覚えなくてもいい。ここの飼育担当だ。」
アーム「先に言っておくが、餌やりはハンパな気持ちで臨むと命がいくつあっても足りないからな。」
アーム「こいつらは腹を空かせている。間違えて人を食う事もあるから気を付けろ。」
ソル「ひぃ〜(><)」
ルナリンド(ライオンも怖いけど、この人も怖いわ…。)
ガルム「って事で、あたいは事務所に戻るからさ、何かあったら連絡してくれ!」
ソル「え、園長!?置いてかないでよー!」
ガルム「では、健闘を祈るポコ。」
何事も無かったかのように去っていく園長。
獣臭が漂う部屋には、飼育員のアームストロングと、姉妹達だけが残された。
ルナリンド(領主様…まさか、私達をはめたのかしら…。)
ソル「お姉ちゃん、怖いよ(><)」
ルナリンド「大丈夫よソル…いざとなったらお姉ちゃんが魔法で…。」
アーム「言っておくが、園内では魔法の使用は禁止されている…。もし変な真似でもしたら命はないと思え。」
ルナリンド「は、はい…。」
アーム「では早速、行動(餌やり)にうつれ!」
ソル「あの…アームさん、餌はどこに?」
アーム「餌は檻の中だ。あのボタンが見えるか?」
ソル「あの、茂みの奥にある丸くて赤いボタンですか?」
アーム「そうだ。あのボタンを押すと生肉(ライオン用の餌)が出てくる。」
ソル「まさか…、檻の中に入らないといけないんじゃ?」
アーム「そうだ。オスとメス1匹ずつしかいないから、平気だろう?まあ、今こいつらは発情期でな。人を襲う事もしばしばだ。」
飼育員の脅し文句の様な語り口に身を震わせる姉妹達。
ソル「うわぁ、ライオンがこっちを見てる…いやだよぉ…(><)」
ライオン「グルルルルル…。」
ルナリンド「私、トイレに行ってもいいかしら…。」
ライオン「グルル…ガァアアオオオ!!」
ルナリンド&ソル「きゃあああああ!!」
突然おたけびをあげる雄のライオンに、
思わず絶叫する姉妹達。
ソル「うぇぇん(><)」
アーム「何をグズグズしている、早く入れ!ライオンを刺激しないように1人ずつ入れ。
1人1頭がノルマだ。わかったか!」
ソル「お、お姉ちゃん、逃げよう…。」コソッ
ルナリンド「ソル…分かってるわ。タイミングを見計らって…逃げましょう。」
アーム「分かっていると思うが、逃げようとしても無駄だ。ここは内側から施錠されている。ライオンが脱走しない為にな。」
ルナリンド「………。」
ソル「そんなぁ〜(><)」
アーム「敵前逃亡は万死に値する。下手なことは考えずに餌やりに取りかかれ!」
飼育員のアームストロングは、半泣きで身悶えしている少女を一瞥した。
アーム「そこの紫色の髪!」
ソル「わ、私!?」
アーム「お前から行け。」
ソル(逃げたら殺されるし逃げなくてもライオンに食べられる…。)
ソル「やるしか…ない…!怖いけど…。」
アーム「鍵はこれだ。途中で引き返しても開けれないからな。覚悟しておけ。」
ソル(領主さんが動物園のチケットをタダでくれるなんておかしいと思ったよ…。)
ソル「わかりました…。」
ソル「お姉ちゃん、行ってくるね。」
ルナリンド「ソル……!」
覚悟を決めたソルティーナの前には、
2匹のライオンが立ちはだかる。
ライオン「グルルルル…。」
アーム「よし、では檻の鍵を閉める!健闘を祈るぞ!」
ソル「怖いよう(><)」
勇気を振り絞り、少しずつ歩を進めるソルティーナ。視線の先には、こちらを見つめる雄のライオンが鎮座している。
ソル「ライオンを驚かせないように、そーっと行こう…。」
ソル「ごめんなさいライオンさん、目の前通るね…!」
ルナリンド「ソル....気をつけて…神様、どうかあの子を守ってください…。」
妹の無事を願い、懸命に祈りを捧げる。
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