エッセイ:わたしが文学青年だった頃~90年代0年代回想録~
私が入れ込んでいる哲学者、スピノザ。このスピノザの日本でのブームという奇妙な現象は、ここ最近の出来事である。少なくとも90年代においては、スピノザ研究者やコアな哲学好きなどを除いては、あくまで柄谷行人を介してのスピノザ、あるいはドゥルーズを介してのスピノザ、アルチュセールを介してのスピノザに触れるという体験ではなかっただろうか。私が通っていた学部では幅広く哲学や倫理学、政治思想史などを学ぶことができたが、バルーフ・デ・スピノザ、その名が大学教授の口から出ることは皆無といって