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2023年12月の記事一覧

人間の隷従、あるいはお金の力について『黄色い家(川上未映子著)』感想

川上未映子さんの話題の小説、『黄色い家』読了。圧倒された。かつてここまで「お金」を主題にした小説はあっただろうか。いや、厳密には「人間の隷従あるいはお金の力について」を主題にした小説であり、なおかつ人はその中で、自分の人生が自由であったと肯定できるのか、ということが問われるのである。 『黄色い家』は、表向きの設定にみられるような、たんなるノワール小説ではない。この小説が描いているのは「お金」と「家」という幻想であり、しかし、それらを単なる幻想としては片付けることができない、