ドラマ「何かおかしい2」第12話(最終回)「お化け屋敷」について考察・感想

とうとう最終回を迎えてしまいました。今回もオビナマとともに母体のサイバーネットジャパンも終了するのかと思いきや、まさかのオビナマ再復活とは……。怒涛の伏線回収に向けて加速していく展開と、撒き散らされる悪意から目が離せませんでした! 前シリーズに引き続き、音楽がいい仕事してる。

さて、それでは今回の件が誰の手でどのように仕組まれていたのか検証していきます。

出来事をひとつひとつ追っていきます。


①現在の高橋さんの生活

登場時のテロップでは「お化け屋敷 館長」となっています。具体的には、何をいつからやっているのでしょうか。そもそもあのお化け屋敷は何?

「館長」というくらいですから、あのお化け屋敷を買うか借りるかして長く管理しているのでしょう。空き家だったにしては、随分手入れが行き届いています。

お化け屋敷の位置付けは、アトラクション施設ではなく資料館的ポジションだったのではないでしょうか。事前のネット検索で引っ掛からず、噂も全然ないようなので、オープンな場所ではない様子。姥柱の風習がずっとあった集落なら、生贄の埋まる家は他にもあるはず。あの家だけが特別なのは、メディアの愚行を伝える謂わば負の遺産だから。

高橋さんがメディア側の人間だったにも関わらずお化け屋敷館長として集落に受け入れられたのは、彼女もまたメディアの被害者だからだと推察されます。


②上村さんと高橋さんが手を組む

どちらが先に接触を試みたのかは不明です。問題のヤラセ番組「スピリチュアルな時間ですよ」関係者の行方を調べていた上村さんが高橋さんを見つけた可能性。高橋さんがオビナマを聴いていて、関係者が不幸になっていくのに気づいてコンタクトを取った可能性。両方あり得ます。

もともと上村さんは高橋さんの事務所のマネージャー。高橋さんが干されるところを目の当たりにし、自身も事務所が潰れる憂き目に遭いました。彼女への思い入れはさぞ深かったことでしょう。


③小野寺さんが上村さん達の仲間に加わる

小野寺さんは「スピリチュアルな時間ですよ」とは無関係です。ですが上村さんたちのターゲットの一部である花岡さんと畑野さんには恨みがあります。

ところで、小野寺さんはどうやって生還したのでしょうか。個人的な意見としては、もともと生贄になどなっていなかったのではと思います。

太古から生贄を捧げる儀式は数多くありますが、埴輪しかり饅頭しかり兵馬俑しかり、大体が代替物を使うように変化しています。

婚鎮祭ももともとは生贄を出していたとしても、令和の時代ですからマイルドになっていてもおかしくはない。小野寺さんも正装で神輿に乗せられ水辺へ連れて行かれただけで、沈められることなく解放されたのではないでしょうか。

タロキチさんが生贄云々と騒いでいたのは、内容変更が集落の外に出ていたタロキチんの元まで伝わっていなかったから、とすると筋は通ります。

経緯はどうあれ生還した小野寺さんは、オビナマで自分がどういう扱いを受けたか耳にします。当然ショックを受けたはず。また、生贄になったと放送されて元の居場所にも戻りにくくなったことでしょう。

当時のオビナマ関係者に恨みを抱くようになる。特に隅の婆様の後もしぶとく業界で生き残る花岡さんと畑野さんに対して。最初に生贄に肯定的な発言をした上、暴露ネタでノリに乗っている花岡さんへの憎しみはひとしおだったでしょう。

上村さんとはどこで知り合ったのでしょう。小野寺さんの場合は、上村さん側から声をかけたものと推測されます。

小野寺さんがリポーターとして復帰したのは花岡さんが番組に本格参加した回からですし、技術スタッフが誰かなんてリスナーにはわかりません。オビナマワイドneoに旧オビナマ組がいると気づいて接触したとは考えにくいです。

上村さんは「スピリチュアルな時間ですよ」と似た空気を感じたか、花岡さんや畑野さんが関わっていたためシーズン1時代のオビナマを聴いていたのでは。そして小野寺さんを探し出したのではないでしょうか。

失踪騒ぎになっている間に小野寺さんが身を隠す場所を提供していたのは、上村さんかもしれません。その隠れ家があのお化け屋敷、なんて想像ついでに。

過程はどうあれ、上村さんは花岡さんと畑野さんへの復讐の協力者として小野寺さんを引き入れました。


④お化け屋敷の中継企画を小野寺さんが持ち込む

番組前の打ち合わせより、お化け屋敷の中継は小野寺さんの持ち込み企画だそうです。

匿名のお便りを使わずわざわざ小野寺さんが持ち込んだのは、花岡さんと畑野さんの反応を見るため。

あのお化け屋敷の情報は全く表に出ていません。奇しくもシーズン1の第5話「儀式」の状況が再現されるわけです。あの時もお便りの主と自称教授のリスナーの話を信じて、ネット情報も裏付けもないまま中継を決めました。

今回も違和感が無視され、過去と同じ選択が繰り返されました。花岡さんも畑野さんも反省していない、というか忘れているらしい。これが小野寺さんを復讐に至らしめた最後の一歩だったのではないでしょうか。


⑤お化け屋敷での過去映像公開

お化け屋敷で「スピリチュアルな時間ですよ」のお蔵入り映像が流れ、あの場所で何があったか明かされます。ここから「スピリチュアルな時間ですよ」とその顛末に話が繋がります。

新聞が全く黄ばんでいないこと、DVDがすぐに再生できて映像も鮮明だったことから、このための入念な準備が伺えます。新聞はアーカイブを印刷し直したものでしょう。

お蔵入り映像の公開の目的は2つ。「スピリチュアルな時間ですよ」に話を繋いでネタばらしの前振りにすることと、当時の視聴者のSNS投稿を誘うこと。

ところで、誓約書の字に個性が出ていて興味深いですね。花岡さん、意外と繊細で綺麗な字です。あと「7代祟られる」って現代だとあんまり怖くないかも。子孫をつくる予定がなくて呪いを信じない人に対しては抑止力になりません。花岡さんはまさにそれ。


⑥千里眼ヒーラー麻里子登場@中継&SNS

お化け屋敷館長として高橋さん(a.k.a千里眼ヒーラー麻里子)が登場。ヤラセの責任を擦り付けられ、女優の夢を絶たれたと語ります。

同時にSNS上で「スピリチュアルな時間ですよ」について書き込んだ人に対して、千里眼ヒーラー麻里子の名前で住所を特定するリプライが相次ぎます。

ここでの高橋さんの役割は、SNSの「千里眼ヒーラー麻里子」のインパクトを強めること。リスナーにはヤラセを焚き付けたりバッシングをしたりと、恨まれる心当たりがあります。住所特定のトリックも一般の人には知りようがないので、超能力が俄に信憑性を持ちます。リスナーの恐怖は倍増。

住所特定リプは上村さんの仕業でしょう。家の場所を当てられているのはサイバーネットジャパンの会員だけのようですし、この時上村さんはずっとパソコンで何かを打ち込んでいます。一人でやっているにしてはリプライの量が多いので、外部に協力者がいるか、何らかのプログラムを並行して稼働させている可能性もあります。


⑦上村さんによるネタばらし

高橋さんからの呼び掛けで、上村さんがこれまでの暗躍と動機を告白します。

内容をざっくり書くと
・上村は偽名で本名は石田光。石井日明の兄で高橋さんの元マネージャー。
・ヤラセ騒動で事務所倒産。再就職先はサイバーネットジャパンに買収された。
・ヤラセ番組関係者への復讐のためにオビナマを始めた。
・ヤラセ番組に関して、一番悪くて一番責任を被っていないのは視聴者。だから今回は視聴者に恐怖を味わわせようとした。

住所当ては視聴者を脅かすのにとても効果的な方法です。田島さんの言う通り、家を知られるのはとても怖い。加えてヤラセ騒動で見知らぬ人たちから攻撃された高橋さんの恐怖と苦痛を疑似体験させることができます。住所特定のカラクリがわからない不気味さも不安に拍車をかけます。


⑧ナーハー砲のヤラセ暴露

上村さんは花岡さんに、サイバーネットジャパンの暴露をこのタイミングでするよう促します。番組前の打ち合わせで花岡さんが「デカいのを打つ」と言っていたネタでしょう。

花岡さんはタダでは言わないと拒否。すると上村さんはボイスレコーダーを出し、花岡さんと京極マリアさんの打ち合わせ音声を公開。花岡さんが暴露に際して事務所に確認をとり、許される範囲で配信していたと明らかに。

この隠し撮りは謙信君の仕業だと考えます。上村さんの頼みでマリアさんのスマホに録音アプリでも仕込んだのでは(第10話の考察後編を参照)。

ナーハー砲のヤラセが露見し、SNSは大荒れ。さっきのタイミングで花岡さんがサイバーネットジャパンのネタを暴露していたとしても、上村さんはこの音声を公開したでしょう。最初から計画のうちだったはずです。


⑨サイバーネットジャパンの闇を暴露

続けて上村さんは、花岡さんの用意していたネタが中途半端であると指摘。ちょうどその時、ニュース速報が入ります。

サイバーネットジャパンが顧客情報流出で謝罪会見を開いていました。しかし内山さんは会見のタイミングに不審を持ち、情報漏洩の他にセレブのデータを利用した強請りや癒着が起きているのではと推理します。

花岡さんが掴んでいたのは情報流出までで、強請りには気づいていなかったのでしょう。⑧で情報流出を暴露していても、ネタが不十分として恥をかかされていたはず。どちらを選んでも花岡さんが二重に辱められる未来は変わらない……。

花岡さんからサイバーネットジャパンの闇を知っていたのに暴露しなかった理由を問われた上村さんははぐらかしていますが、本当はしたくても出来なかったのではないでしょうか。内山さんの推理部分については証拠が示されていません。

証拠もなく大きな疑惑を突いたら、自分の身が危ない。だから2つの策を講じた。1つ目は情報流出の会見にかぶせた暴露。会見の印象と合わせて「やってそうだな」とリスナーに思わせられればしめたもの。

2つ目は、情報流出被害の拡大。情報流出で迷惑メールやセールス電話が来るのはよくある話でみんな慣れっこ。だからもっと大胆に顧客データを悪用してやることにした。

番地までは書かれていないようですが、住所特定による精神被害は相当なもの。大物への強請りネタが不発に終わっても、この一件だけてサイバーネットジャパンには充分な打撃(ほぼ致命傷)を与えられます。


⑩呪いの岩の中継

小野寺さんと高橋さんがお化け屋敷敷地内の「呪いの岩」にオビナマ関係者やサイバーネットジャパン社屋の写真を貼り付けてフィニッシュ。

ここまで来て何故わざわざ呪いの儀式などするのでしょう。高橋さんは千里眼ではないし、集落は既に廃村です。

今度はシーズン1の最終回を思い出します。あの時も「隅の婆様」という呪いの儀式が行われました。そして呪いにかこつけた人間の悪意が旧オビナマ関係者に降りかかりました。

呪いの岩の中継は、悪意の呼び水として行われたのではないでしょうか。高橋さんや上村さんにできることは限られています。だから不特定多数のリスナーの力を借りることにした。

誰かのことを好き勝手に言い立てるのは面白いけれども後ろめたくもある。だから失態を犯した人や不道徳を働いた人が標的になりやすい。その方が罪悪感を覚えずに済むから。

誰でもいいから叩きたいネット民は、呪われた人たちについてこう思うでしょう。呪われるほどの悪人なんだ、だから中傷されるのも仕方ない、罰が下っただけ、こんな奴らをもう業界で生かしてはおけない。

「スピリチュアルな時間ですよ」関係者はこの後、ヤラセ発覚後の高橋さん以上のバッシングに遭い、仕事も立場も失うことと予想されます。全部放送されており、いろんな場所で取り上げられるでしょうから、一生の十字架になるのでは。

シン・オビナマワイドスーパーのスタジオにオビナマneo 組の姿がなかったので、多分干されたのでしょう。


*上村さんたちの本当のターゲットは?

ほぼ全体攻撃状態でしたが、力の入れ方に偏りがあったように感じます。また、花岡さんに「スピリチュアルな時間ですよ」のトラブルの仕返しかと訊かれた高橋さんは「んな訳ねぇだろ」と答えています。じゃあ誰がメインだったのでしょう?

上村さんはサイバーネットジャパンの悪事が明るみに出る日が近いと悟り、会社が潰れてオビナマが終わる前に復讐を完遂させようとしました。

そうなると対象の取捨選択と優先順位が重要になります。

「スピリチュアルな時間ですよ」関係者のことはもちろん恨んでいるけれど、似たようなことをしている人は大勢いる。個人攻撃を続けても根本的には解決しません。

だから諸悪の根源を狙うことにした。上村さんが言うところの、一番悪くて一番責任を負わない視聴者です。

そして視聴者の要望を受けて番組の方向性を決めるのは放送局です。企画考案はディレクターや作家などが行ったとしても、最終的にゴーサインを出して番組を作らせるのは力も金もある会社側。

だから標的の第一は視聴者、第二はサイバーネットジャパンだったと考えられます。

「スピリチュアルな時間ですよ」関係者の生き残り(土屋さん、花岡さん、畑野さん)はもはやおまけだったのではないでしょうか。この中ではっきりと制裁を受けているのは花岡さん一人です。

3人の中で花岡さんが狙われたのは、過去の因縁からではなく現在の暴露活動によるものと推察されます。ヤラセ番組の件なら主導したディレクターの土屋さんに真っ先に手を下すはず。

花岡さんはシーズン1の最終回で個人情報を晒されても懲りずに、暴露ネタで配信者として波にも調子にも乗っている。10話「マッチング」や11話「人探し」で痛い目を見たはずですが、堪える様子がない。高橋さんたちはヤラセ発覚で苦しい思いをしました。だから暴露に勤しむ花岡さんはどうしても許せなかったのでは。


これで全12話完走です。最初から最後まで面白かった!

ラスト、まさかまたオビナマが復活するとは。しかも前番組の構成作家が表に出る流れまで踏襲。

内山さんは花岡さんの二の舞にはならない気がします。花岡さんの失脚を間近で目撃していますし、隣には相棒の田島さんもいますから。


お付き合いいただきありがとうございました。
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