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<立春>たちかへる 神代の春や しるからし たかまが原に 霞みたなびく

たちかへる 神代の春や しるからし たかまが原に 霞みたなびく

たちかへる=立ち歸る  しるからし=甚だはつきりしてゐる  たかまが原=高天原

 後小松天皇の御製の中でも暗い影の少ない大御歌ではないでせうか。憂ひの深い御製が多い中で、この御製には何となくではありますが、明るさを感ずる事ができるのです。
「たちかへる神代」は、神々の世界ですが、それは萬物一切が調和の世界に在つて、幸福の滿ち溢れた世界のことであらうと思ふのです。「春やしるからし」とは、冬の嚴しい環境を乗り越えた歡びの春の前徴のやうであると詠つてをられるのではないでせうか。
 下句で「霞の棚引いてゐる美しい風景は」と解せるのではないかと思ひます。その「たかまが原」は、「高天原」で神々の世界になるのですが、ここでは二つの取り方ができます。
 一つは想像の世界での高天原。もう一つは、現實に後小松天皇が御覧になられた美しい風景。私は後者である現實の美しい風景を詠はれたのではないかと思ひます。

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