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こだわるアリカツ(蟻の飼育活動+α)    ④クロオオアリを砂で飼う

 「アリの巣」というと、日本では一般的に地面の下です。筆者が飼育しているクロオオアリも自然界では、日の当たる乾いた地面に、巣穴を掘って暮らしています。今までこちらでご紹介した飼い方は全て、プラスチックなどの飼育ケースを利用したものでしたが、やはり気持ちとして、蟻を飼育する以上は、より一層自然に近い蟻の姿を見てみたいものだと思います。そういった方のために、国内の業者さんから、砂を使った蟻の飼育キットが販売されています。もちろんご自身で砂や土を集めて水槽などに入れて飼育することは可能なのですが、見やすさや衛生管理を考えると、そうしたキットを利用する価値は十分あります。

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 こちらは国内の業者さんから市販されているキットです。右側の塔は餌を入れるための専用スペースで、衛生上砂と餌が混じらないようになっています。砂を入れる部分は厚さ1センチほどの薄い水槽のようなケースで、コロニーとして1〜2年目のクロオオアリを飼育するのに適しています。薄くないと、蟻はなるべく光が入らないように穴を掘ってしまい、外から観察しにくくなります。このケースの場合、底の方の巣穴は反対側からの光も入り、アリが子育てをする姿が観察できます。

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クロオオアリの巣穴は大抵すぐに底に達してしまい、底の部分に比較的広い穴を掘り、多くのアリが1箇所に密集していることが多いです。小部屋と小部屋が通路でつながったような、絵に描いたようなアリの巣の形にはなりにくいようです。決まった形はなく、アリが自由に掘った穴を眺めるのが、砂での飼育の醍醐味だと思います。

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 筆者はクロオオアリを砂で飼う時、ケースに宝石やパワーストーンのクズ石を入れます。アリが掘った巣穴からたまに石が露出し綺麗なのと、また巣穴の方向を多少誘導することができます。この箱はネットで購入した、魚の大きさを測るための小さめの水槽です。厚さが4センチほどありますので、3から4年目のコロニーを飼育することができます。

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 砂を入れたら規定量の水を入れ、全体に水分が行き渡ったら、アリを入れます。専門業者さんの砂は、白くてアリが見やすく、水分によって固まりやすくなっています。また、カビも生えにくいように思えます。なお、この砂はバケツなどで米を研ぐように洗ってゴミを取り除いて乾燥させれば、何度となくアリ飼育に再利用できます。

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砂の巣に入れられたアリたちは、最初は物陰に隠れますが、そのうちに働きアリが巣に適した場所を探して掘り始めます。

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ある程度巣が掘り進められると、女王アリが入ります。巣穴は、女王アリが通れる規格で掘り進められているように見えます。

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砂は、入れ物の高さの半分程度にしておきます。と、いうのもクロオオアリが巣穴を掘り進めると、大量の残土が上の部分に排出され、地面が上昇するのです。上に並べた宝石も、すぐに埋没してしまいます。この残土に、アリの食べ残しや排泄物などが排出されて埋められるので、見つけ次第撤去します。アリのゴミをなるべく減らす方法として、餌を液体や昆虫ゼリーのみにするという方法があります。

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アリが巣穴を掘る様子は、壁越しに観察できます。通路は一定ではなく、掘ったり埋め戻されたり、さまざまな謎の行動が見受けられます。巣穴を掘る際には掘る担当と残土を排出する担当に分かれた作業まで行われています。

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厚さが4センチの水槽だと、底の部分の見え方はこんな感じでした。薄いケースと比較すると、全貌は見にくくなってしまいました。

 砂のアリの巣は、保湿とゴミの撤去に注意して運営すると、筆者の場合は4〜11月まで、約半年維持することができました。でも、後半になると次第に砂が汚れてきて、カブトムシの飼育ケースのような臭いもするようになりました。そのため、冬ごもり前に別のケースに引っ越しをさせるようにしています。何回か引っ越しをさせていますが、最終的には砂を掘ってアリを全て強制的に引越させるしか、方法はないように思えます。
 クロオオアリは意外と適応力があり、例え砂の巣からプラスチックのみのケースに突然引っ越しさせても、数日中にはコロニーとしての活動を再開します。

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