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松任谷由実をたどる小旅行(鉄道編)

前回の荒井由実時代につづいて今回は
松任谷由実となってから、電車や鉄道を感じる曲をピックアップしてみる
時代は80年代まで。
・かんらん車(流線型80)1978年
・コンパートメント(時のないホテル)1980年
・シンデレラエクスプレス( DA DI DA ) 1985年
・白い服、白い靴 ( ALARM a la mode ) 1986年

ここに取り上げた曲を追っていくと時代と共に彼女の列車、鉄道に対する変化が見て取れるようで面白い。

まず一曲目のかんらん車
「すいた電車が住宅街抜けて 〜 そして川べりの遊園地をたどる」 とある
彼女の通っていた多摩美術大学のある近くにかつてあった遊園地、二子玉川園のことではないかと推察するのが自然だろう。すいた電車は大井町線で、川べりの川は多摩川だとすると見事に合致する。遊園地のもつ陽気なイメージとは対極にある静かな良い曲だ。

次の曲コンパートメントに移ろう
この歌詞にあるのは「闇をすべる汽車」、「忘却列車のデッキ」、「輝く真鍮の鍵を線路に投げましょう」
荒井由実の時代から一曲目に書いたかんらん車の歌詞に登場する鉄道というのは自分の生活範囲にあった、自分の目線で捉えた情景描写の鉄道であったのに対し、この曲に登場する鉄道は心情描写としての比喩的な使われ方である。
歌詞の最後のあたりにテムズとか荒野などが出てくるが、この歌詞からどこの路線を走る列車だなんて事を推測するのは野暮だし、意味のないことだ。

そして次のシンデレラエクスプレス
時代はどんどんクロスメディア化してタイアップ曲としてこの曲もテレビCMと共に広く聴かれることになる。
シンデレラが乗る特急列車ってことになるのだけど、それをシンデレラエクスプレスとするあたりが彼女のセンス。時代の華やかさと共に特急列車の如く走っていた彼女の為せる技なのだろう。CMのイメージも手伝ってシンデレラエクスプレス=新幹線なのだろう。

続いて白い服、白い靴
前作のキラキラして華やいだイメジから一変、「地下鉄で肩を叩かれた」というこぢんまりとして静かな立ち上がりだ。大宇宙へ飛び出しそうだったシンデレラエクスプレスに比べて、地下鉄での一場面を描写しているこちらは決して特急列車にはなれない。
前作の浮揚感を落ち着け、も一度地に足をつけた感じがあって良い。

荒井由実時代は身近な範囲の描写としての鉄道も、時代と共に彼女自身が全国区となり、相模線云々などとは歌いづらくなってきたのも確かだろう。それでも鉄道の描写というのは無くなったわけではなく、別次元へ昇華して登場させるあたりが偉大である。そしてきっと鉄道オタクの片鱗があるのだと思う。

旅のしおりを作るなら
出発は二子玉川駅。まずはかつて二子玉川園のあったあたり、今は楽天の本社や二子玉川ライズのタワーマンション群横目にを散策しつつ多摩美術大学を目指して上野毛駅まで歩いてみる。
上野毛から大井町線で自由が丘へ、東横線に乗り換えて多摩川駅までいき降車して多摩川沿いを下流へ向かいしばらく歩いてもいいし、多摩川線に乗り換えて沼部駅まで行って多摩川へと出てもいい。
土手に出ると多摩川を渡る新幹線が目に入るはずだ。新幹線はいつしかシンデレラエクスプレスへとなって映るだろう。
ひとしきり往時にタイムスリップしたら、次に目指すは地下鉄だ。東横線に乗って都心へと向かおう。目黒線でもいいけど、直通する南北線は比較的新しい路線なので、雰囲気が80年代にタイムスリップしづらい。できれば銀座線か丸の内線のような古い路線がいい。二人で行動するなら知らんフリして肩を叩き合おう。

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