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安寧の時

父親の運転するワゴン車の後部座席に揺られ
目に映る夕日に「ああ、こうやって世界は終わるんだ」と幼ながらに思った。

文化祭の準備の帰りに、山の上のお寺の屋根が黄金に煌めいて、「ああ、時が止まるってこういうことなんだ」と納得した。

安寧の昼下がり。
誰もいない。
僕は強烈な安堵の中で焦る。
誰か、誰かいませんかっ?!
四角い窓枠に切り取られた
安納芋のような景色。
微かに吹く風に
銀杏と紅葉の葉が揺れる。
声は反響して
私以外の誰にも届かない。

この11月が、たまらなく好きだ。

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