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鮮度

 一年に一度の人間ドック。
事前に問診票や、検査容器が送られてくる。
検査精度を高くするためか、以前よりかなり細かくなっている。
問診票は四枚、誓約書もある。
検便は二回も、日を改めて取らないといけない。
更に今年は、尿検査の入れ物まで同封されている。
 直径一センチ、長さ五センチの試験管状のプラスティック容器に、検査当日の朝一番に出た尿を入れ、持参しろと説明書に書いてある。
 この中にどうやって入れるのか一瞬迷ったが、折り畳み用の採取コップまでが付いていたので納得する。
 尿くらい今まで通り、健診する場所で採取すればいいのに、と思いつつ説明書を読んでいくと、その理由について書いてあった。
 『尿の検査で最も適したモノは、朝起きて直ぐに出た尿が一番鮮度がいい』
とある。
 『はあ?鮮度?刺身や野菜と同じように、尿にも鮮度の良し悪しがあるとは!』?
 長生きするもんだ。
 
 以前、便秘がちな友人が、検査用の検便を用意するのに苦労していた。
本来、検便を提出する当日か前日に採取するのだが、なかなかうまいこといかないので、いつも四、五日前からチャンスを伺っていたらしい。
 が、さすがに五日間も放置するわけにはいかず、冷凍庫に保存しておくことを思いついた。凍らせば臭いもないし、当日朝に、レンジで解凍すればいいと考えた。
 勿論、ビニール袋に何重にも入れ密封したものだ。
我々凡人には考えつかないことを、本当によく考えつくものだと関心した。
確かに、これで鮮度も保たれるはずだ。
 
後日談。
 件の友人の話を詳しく聞くと、冷凍時は冷凍庫に入れるだけで、問題はなかったらしい。
 が、解凍する時は、さすがに解凍時間など取説に書いてあるものもなく、自分なりに試行錯誤したらしい。
で、
「一番最初の時は、解凍時間が長すぎたせいか、ビニール袋が破裂したこともあった」
 と、平然と喋る。
 
 コイツ、絶対大物になるわ!

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