アビスパ福岡戦 (Away)

 ジャーメインが度肝を抜く身体能力を見せつけた1点目(どうでもいいが、ジャメって「人間鯉のぼり」とかできそうだな…。あらためて、ものすごい体幹の強さと身体能力の持ち主なんだろう)と、新潟戦から続く、あれよあれよというどさくさ紛れっぽい展開からの2点目。出来すぎ感が強かったが、そこからプラマイゼロと言わんばかりの2失点。とても振り幅の大きな一戦であった。
 対するアビスパはJ1に戻って4シーズン目。思えば、監督交代とヤットさん獲得を機に、何とかJ2の沼から抜け出そうとまさにもがいていた我がジュビロを尻目に2020年シーズンに二位となり、そこから丸3年。3シーズン連続でJ1に残留することになるとは、中立のサッカーファンはほとんど誰も予想していなかったであろう。クラブ史上の最盛期を迎えていると言っていい。長谷部監督の手腕だろうが、とにかく堅くて、負けにくいチームだ。戦術的な熟成はもちろん、メンタル的に、戦う集団として仕上がっている。格上に対しても変にチャレンジャーぶらないプロ意識が浸透しているように感じる。おれたち、どこが相手でも普通に戦いますよ、的な。そんな「格上」のアビスパアウェー戦でドローという結果は、現状エレベータークラブからの脱却を目指すジュビロからして見れば、上等な勝点1と捉えていいはず、である。

 ただそれでも、一人のジュビサポとして、気になる点(≒やや不満な点)を2つほど。
1)ザヘディにビビりすぎ
 すごい選手なのは間違いないのだろうが、ちょっとビビりすぎではないだろうか。特に後半、スペースを与えすぎてしまっているように見えた。タイプとしては、馬力を活かしてマークをかいくぐり(走るスピードはそれほどでもないように見えた)、キャノン砲を備えた左足を振り切る、単騎型に思えた。だいぶ前の話で恐縮だが、晩年柏レイソルにやってきた時のストイチコフにかぶる印象である。こういうタイプは振って振って振りまくって己の闘争心を掻き立てる傾向があるので、いかにそうさせない、つまりは前を向かせない守備を徹底するかが肝だと思うが、ちょっと前を向かせすぎと感じた。
 例えば、まさに致命傷となったレオ・ゴメスのパスミスから2点目を献上したシーン、あそこはグラッサがいわゆるプロフェッショナルファウルを敢行してでも止めるべきではなかったか。その迫力を持ってしてジュビロのDF陣に触れるのも厭に思わせたのなら本当に大したものだが、反面、我がチームに情けなさも感じずにはいられない。大迫や鈴木優磨にも立ち向かったんだから、もう少し抵抗してほしいところであった。
2)攻め手の少なさ
 これはすでに何度も指摘しているポイント。ジャメの凄み、ペイショットの高さ以外にワクワク感がない。 本節でも怒涛の2ゴールでジャメの進化だけが促進されてしまった感があり、はっきり言うと、その他選手の小粒感が否めない。野球に例えると、4番だけが際立っていて、他は皆打率二割五分程度、とにかく4番に繋ぐのが至上命題でコツコツやりますよ、というような。いや、二割五分でもいいのだが、塁に出たらとにかく盗塁するとか、出塁率が悪くても一発ホームランを狙うとか、個々の特長はあっていいはず。途中出場の古川も持ち味を発揮できなかったし、平川も攻守によく頑張っていたが、パスセンスは相変わらず発揮できず。この試合、特に攻撃面だけに限れば、サッカー記事によくある「寸評」をすると、ジャメ以外可もなく不可もなく、で統一されてしまうのではないだろうか。
 先発の布陣での一番の変更点は、ペイショット→藤川で、ツートップの機動力は増したが、打開力も増したかと言うと、疑問符が付く。残念だが藤川も、ゴール前で前を向いた時に、本当に相手DF陣に怖さを感じさせるには、-ジャメやザヘディのように-もう一皮も二皮も剥ける必要があるだろう。
 もっとも、横内監督自身がもっと攻め手を増やしたいと切望しているのは間違いないはずで、当事者としてできる範囲で試行錯誤しているのだろう。当座の勝点確保とのバランスを見ながら。だが、持ってる手札はそれなりに切り尽くした感もある。残りは、思いつく限りだが、平川のトップ下配置、古川のドリブルをより活かすためのスリートップ採用、まだ見るウェヴェルトンの抜擢、(すでに試したが、別の形での)山田・平川の併存策くらいか。

 収穫としては、藤原、森岡といった若手が主力に遜色なく存在感を発揮していること。やはり、若手は真剣勝負の場に出るだけで実力が開花されていく伸び代を持っている、ということだろう。ビジネススキルを養うには座学ばかりをやっていてばかりではダメで、ビジネスの現場に立つことが一番なのと同じように。彼らの奮闘ぶりは、名波時代に上原が出始めた頃を彷彿とさせるものがある。まだ心許なさを感じさせつつも、ユースからの生え抜きとして若くから使命感を持って(自分には確かにそう見えた)プレーしていた。ちょっとメンタリティーや人間的な性格は違うようだが、藤原・森岡はの"遠慮してなさ"は上原以上なのが頼もしい。それこそ、彼らの層が今の主力の座を奪うくらいの時に、ジュビロも完全に生まれ変わっているのだろう。実際、既に名声を得たベテラン勢が若手以上に依然ギラギラしているヴィッセルを除けば、どのチームも緩やかに新陳代謝が行われている。

 次は、いろんな意味で負けられない、ホームの町田ゼルビア戦。今のチーム状態から予想すれば、苦戦は必至。手堅く、すなわち既定路線で挑むことになるだろう。できれば、まだリーグ戦未出場の金子投入が見たい。町田の肉弾戦に対抗を強いられるのは必然ながら、その中で彼の俊敏性とスペースを突く動きは有効だと思う。昨シーズンのホーム戦でも得点を決めただけでなく、その縦横無尽なランニングが相手守備陣を翻弄していた。金子を筆頭に、新星の台頭を期待したい。


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