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一旦Stray Kidsにハマった話させてもらっていい?
雨がざんばら降る六月。
ほぼ仮死状態で塾から帰宅した私は、YouTubeにてある動画を発見してしまった。
Stray Kids『ソリクン』だ。
彼らを見るまで、私は正直韓国に興味がなかった。顔の見分けがつかなかったし、サイゼの間違い探しとかかと思ってた。それくらいに興味がなかった。
でもソリクンはやばかった。例えるなら黒船襲来。偏差値は一気に40は下がり、「すげえや…」という感情以外なくなった。その時食べていた卵かけご飯はみるみる味を失い、もはや何を食べてるのかよくわからなくなった。それくらいすごかった。
その衝撃を踏まえ、私は思った。
顔を覚えたら終わる。
きっとそうだ。そうに違いない。
わかりきっていた。顔を覚えたら終わりだ。
ソリクンの衝撃を引きずったまま学校に行き、ソリクンの衝撃を引きずったまま授業を受けた。
この間も私の感情は「すげえや…」だけだったので、恐らく疲れた脳にStray Kidsがキマっていたのだろう。
空を見ながら飯を食い、午後の授業を惰性で受け、塾に出頭し、家に帰る。
流石に疲れた。今日は何をみようか。サワヤンTVでも見ようか。いや別に見たことないけど。
そう思いつつテレビをつけ、YouTubeに接続し、ソリクンをつけた。
ソリクンをつけた?そう。ソリクンをつけた。自分でもびっくりした。サワヤンTVのサの字もないじゃないか。
流れるような動きで私はソリクンをつけていた。幼少期からそれ一本でやってきたかのようになめらかな動きだった。
そのまま私はまたお得意の卵かけご飯を食べながららバカの顔してソリクンを見た。
ソリクンを引きずり、学校に行く。
ソリクンを引きずり、塾に行く。
塾から帰ってきて、ソリクンを見る。
この生活がおよそ1週間続いた。
1週間して、私はあることに気がついてしまった。
み、見分けがついてる…。
そう。見分けがついてしまっていた。
流石に見過ぎた。私は完全にStray Kidsの動きを見切っていた。
お手手の動きが可愛いラッパー1名。
渋谷系ギャル男ラッパー1名。
腹筋のお兄さん1名。
横浜流星1名。
クール系の兄ちゃんが3名。
マイキーの片腕そうなお兄さん1名。
ふうん…と思った。見分けちまったか…と。
震える手で卵かけご飯をかきこみながら、落ち着け落ち着けと必死に自分に言い聞かせる。
見分けられるようになったからってなんだってんだ。
大丈夫。お前はまだハマってない。そうだろ?兄弟。
人を認識するのに一番大事なのは何だ?
そうだ。名前だ。
名前さえ覚えなけりゃ大丈夫だ。な?
…そうだ。その通りだ。
名前さえ覚えなければ、まだ私に勝機はある。見分けがついたとしても、名前さえ覚えなければいいんだ。
自慢じゃないが、私は人の名前を覚えるという作業がめっぽう苦手だ。
「はるな」だか「はるか」だか名前がわからない子は「はるちゃん」に統一して呼ぶし、「ゆうな」だか「ゆな」だか曖昧な時には「ゆーちゃん」ととりあえず誤魔化して呼ぶ。
それくらい名前を覚えるのが苦手だ。
この時の私は確実に勝機を見出していた。名前さえ、名前さえわからなければハマることはないと。
もう気がつけば私はこのStray Kidsというグループに意地でもハマらないようにしていた。
ま、まさかこのアタシが…!?みたいな気持ちがあったのだと思う。
そんな雑魚キャラのようなかませ犬マインドがあったが、雑魚は雑魚なりにプライドというものを持ち合わせている。
いつしか夕飯時のソリクンが義務化していることにも気がつかず、私は内心ほくそ笑んだ。
Stray Kidsには絶対ハマらない。私は屈しないと。
な、名前までわかっちまった…。
一ヶ月後。例年よりも早い梅雨明けと同時に、私はメンバーの名前を覚えていた。
気がついたら調べてた。本気でびっくりしてしまった。
お手手の動きが可愛いラッパーがチャンビン兄貴で、ギャル男の手本みたいなラッパーがハンの兄貴だった。
東リベに出てきそうなバチ怖ヤンキーはフィリックスさんで、そんで腹筋の兄さんがバンチャンさん。横浜流星がヒョンジンさんで、クール系の兄ちゃん3人がリノ様・スンミンさん・I.Nさん。
初めはフィリックスさんがめちゃくちゃ好きだった顔が線対象だったのですごく好きだった。
この頃になるともう韓国が好きな友人にStray Kidsの話をしていた。「Stray Kids?ああ。私、ヨジャドルメインで好きなんだよね」と話す友達に「???」となった。ヨジャドルってなに?と。私のアホ顔を見て友達は「女のアイドルね」と優しく教えてくれた。
そこで私は男をナムジャ。女をヨジャと呼ぶと覚えた。
そして私はその友達に、最近の悩みを打ち明けた。
『推しが、変わりそうなんだよね…』
私は推しが変わりやすいタイプのオタクだった。
Stray Kidsのひとつ前にはまっていたジャンル【陳情令】では「魏無羨☺️🌸」とかのたまっていた癖に、最終的には江澄に落ちた。わかりづらいか。
アンパンマンが好きだったのに、最終的にドクダミふじんに落ちた感じ。
とにかく頓狂な方に行く。
友達はスマホから顔も上げずに「ふうん…」と興味なさ気に言って、「で。誰になりそうなん?」と聞いた。
私は頭を抱え、腹を切る覚悟でこう言った。
『…バンの兄貴だよ…』
友達はまだスマホから顔を上げず、ついでにマックのポテトを一本食ってこう言った。「知らねえよ、変えれば?」と。いやそれはそうなんだけど。
こっちだってまだ知り合って2週間の推しからもう既に乗り換える期間来ちまうなんて思ってね〜んだわと思いつつ、友達のポテトを一本奪う。
カツカツ長い爪でスマホをいじり、彼女はふと「コイツ?」と私にスマホをむけてきた。
どうやら調べていたらしい。そこにはメイクバリバリのイケイケバン兄貴が表示されていた。
私は首がちぎれるくらい頷き、「そう。そうですこのお方」と言う。友達はこれを見た後、私に一言言い放った。
『お前の推し、全員消防士なの何?』
衝撃的だった。
私の推しが全員消防隊?そんなまさか。
そう思いつつ、自分の推しを思い返してみる。
悲鳴嶼行冥。カタクリ。東堂葵。…。
なるほど。全員消防隊だ。つか全員消防士だわ。友達の洞察力にびっくりしつつ、「私の推し、全員消防士だと思う?」聞いてみた。
彼女は軽く頷いて興味なさ気に答えた。
『お前の推しで消防団作ったらガチで街救えるわ』
と。
それはそれでちょっと見てみたい気もするなあと思いつつマックシェイクを啜った。話がそれた。本題に戻る。いや戻る本題すら見失った。
そうだ。Stray Kidsがやべえって話してたんだった。
今まで沢山のジャンルに身を捧げてきた。
アニメならばジャンプ。
LDHならHiGH&LOW。
ゲームならばポケモン。
特撮ならば仮面ライダーオーズ。
そしてこれからは韓国ならばStray Kidsとなる。
いつまで続くかわからないこの熱。いや、それでもいい。
この熱が続く限り、私はStray Kidsを愛し抜くことをここに誓おう。
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