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夏雨

夏雨も ようやく あがり
ふたたび 烈しい 夏の暑さが
息をつつんだ

秋は まだまだ遠く
あの子は わたしのもとに
顕れてはいない

蝉の音は 聴こえなくなり
その肉体は
ふるさとの土へと帰って逝った

サイレンの音は
時折 耳を壊すほどに
鳴り止まないけれども

わたしには 母に抱かれた
子守唄のように
揺りかごに揺られている

幻覚は わたしのこころを
映し出していて
いつも影法師のように
逃げても逃げても
ついてくる

だから
わたしは 追いかける
崖から落っこちないように
一本の枝にしがみついて

たいいりょう

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