フリーゲームSRPG『エストリア大陸戦記』からSRPGの魅力と古典要素の関係について考える。
古典とは、ジャンルとしての必然性であり本質。
最近通知にふりーむさんとかからフリーゲームの紹介がよくくる。
まあ、検索してるからGoogleさんとかが親切に教えてくれるのかな。
で、取り敢えず見に行ってみる。
プレイするかどうかはそこで決めたりする。
以前記事に取り上げた『RESISTENTIA』などは、女の子の胸や、部隊経営SLGという気になる要素があった。
こういうプレイ動機があると、ダウンロードまでいきやすい(積むこともあるが)。
今回紹介する『エストリア大陸戦記』は、紹介記事を見てみると、割とスタンダードな印象を受けた。
※後述するが、実は『下馬』という(僕にとっては)珍しいシステムが記述されていた。
SRPGもけっこうやってるし、変わったシステムとかエロい女の子がないとやんなくてもいいかなあ、とおもいダウンロードしなかった。
そして数日後。
なんと、また同じタイトルが通知にきているではないか。
「またかよ…だからあんま気乗りしてないんだって」
誰にいうでもなく再び紹介記事へ。
「そういや、最近武器耐久値のあるSRPGやってないなあ。ロンドリア物語のときみたいな節約プレイしたいなあ」
このゲームは、どうなんだろうかとゲームの特徴を読んでみる。
が、耐久値に関する記載はなし。
「まあ、わざわざ書くほど特別な要素でもないし、ゲームの紹介画像見てみるか」
………
……
…
なんかマップばかりでステータス画面がないんですけど。
仕方ない、Google先生に教えてもらおう。
でてきた。
どうやら耐久値あるっぽい。
しかしなんで夢現の紹介記事の画像とチョイスが違うのだろうか。
似たようなの出すより変えた方が伝わりやすいとおもうけども。(事情があるのか?)
とにかく、耐久値があるらしいこともわかり、意欲が湧いてきた。
長い前置きになったが、この作品は一度プレイリストから外れていたものをプレイするという中々自分的に稀有な例となった。
○エストリア大陸戦記の特徴
・ストーリー
古典的なSRPGの流れを汲んでいる節があり、物珍しさはあまりないようにおもう。
ただ、これは人により加点にも減点にもなりうる。
奇抜なストーリーや深い物語などだけが正解でもない。
ありきたりでも、安心して定番の味が楽しめる。
今回、本作をプレイして物語の展開に対し、ストレスやついていけなくなるようなことはなかった。
わかりやすく、終わればよかったとおもえる結びだ。
定番だが、メインストーリー以外にも奪われた神剣、仇討ちをテーマにしたエピソードなどもありアツいシーンもある。
・キャラクター
こちらもストーリー同様、クセがなく典型的なキャラ造形。
ただ、個人的な感想になるが、最近プレイしたSRPGのキャラが揃いも揃ってひとクセもふたクセもあるものだったので、逆に新鮮に感じた。
特に主人公がふたりとも絵に描いたような誠実、真面目であり、行動原理が倫理的かつ共感を得やすいため好感が持てた。
男主人公のグランは比較的冷静だが、稀に感情に流されるシーンもあり、冷静なセレスに諌められるところなど見ていてほほえましい。
セレスに関しては異大陸(作品舞台とは別)からの来訪者という設定で、ときおり祖国について語られることはあるが、彼女自身含めてミステリアスな雰囲気が漂う。
時折、自身の行動原理や思想が見えるが、聖女と呼ぶに相応しい暖かさと芯の強さを感じさせる。
そして一見ありふれたテンプレートのようなキャラ造形は、ジャンル性質上の必然に裏打ちされていたのだ。
主人公の典型ともいえるセレスの造形を見ていて改めておもったが、SRPGというジャンルにおいては、それは必然性のような納得感がある。
他記事で何度も書いたが、SRPGとは個ではなく集団──仲間のチカラを合わせなければ勝利できない。無双もあるよ! だと? 表にでろ
そして、個というバラバラな心を持つ者をまとめ、目的を統一させるためには、頭の良さや武器の強さだけでは足りない。
「お前なら信じられる」
という信頼がなければならない。
そのためには主人公が他者を助け、関係性を重んじることを描写する必要がある。
人は自分を大切にしてくれる存在を大切にしたいとおもうものだ。
そして、そういった行為がより自然に写るためのデザインが求められる。
伝統や造形には、それがそうなるだけの理由、必然性があるのだと改めて感じた。
SRPGには支援効果があるが、これもシステムがジャンルを体現している好例といえる。
主人公は多くの相手をサポートし、また多くの相手から助けられるようになっていることが多い。
主人公のなによりの強みは、他者を繋げることにある。
敵にも魅力的なキャラクターがいる。
個人的にイチオシなのが、初登場から煽り、ナメプ、パワハラの三連コンボを決めてくる帝国の女将軍、通称勝ち馬リッカ様である。
エンディングでは、皆それぞれの故郷に帰ることになるが、その後を語り文として描かれている。
みんな元気に過ごしてよかったとおもうと同時に一抹のさみしさを覚えた。
これは、物語の終わりでよく感じるものだ。
この世界の、いっしょに冒険して戦ったキャラクターたちを好きになっていたからだ。
別れをかなしくおもえるなら、それは良い物語、キャラクターであった証左といえる。
以上、作品のドラマ性について書いたが、ここからはシステム面について記す。
・システム
ロスト
以前の記事でも書いたが、僕はSRPGのロスト仕様が苦手だった。
で、いろんなタイトルあそぶうちに好きになっていくわけだが。
最近あそんだ中にはロスト仕様がないゲームがいくつかあった。
そして、すこしおもうところがあったのだ。
SRPGって、ジャンルに慣れれば慣れるほどロストあったほうがよくね?
ロストするとそのプレイデータではキャラクターが使えなくなるので、失いたくないキャラが戦闘不能になるとリセットしてやり直すプレイスタイルになる。
逆にロストなしだと、戦闘不能になっても次のステージでは復活するので特に気にせず進めるようになる。
この違いがなにを生むのか。
一手の重みが増す。
そして、より深く考えなければならなくなる。
すこし采配を違えばたちまち敵に撃破されてしまう。
ロストしないようにプレイするということは、間合い、撃破効率、配置、キャラクターの速さ、攻撃力、耐久値、味方との連携、手持ちのアイテム…
ありとあらゆる要素を考慮して一手を追及していくことになる。
ほとんどのキャラが一撃で撃破されるバランス。
ギリギリの間合いで倒し、攻撃を受けたくないキャラは救出などを駆使し、敵の射程外に移動させる。
一マスの差がロストを左右する。
そしてそれこそが、SRPGの面白さの要であると実感した。
うまくプレイできて、ロストせず強敵を倒したりマップをクリアできたときの達成感がクセになり、止め時がみつからなくなる。
逆にロストなしだと、暴論かもしれないがゴリ押しで進めがちになる気がする。
「べつにやられても復活するし、何人か撃破されても敵全滅できればいーや」
こうなると、経験上プレイが雑になりがち。
自分でルールつくってあそべばいいのだが、なんといいますか。
ペナルティーをシステム側で提供されるから避けようとする心理とでもいいますか。
あ、ロストないの?
じゃあ、気にしなくてもいーか。
と(僕は)なってしまう。
ただ、気をつけなければいけないとおもうのは、これは『SRPGに慣れたから』という前提条件があるマニア向けの話。
ロストしないようにプレイするSRPGは、俗に『詰め将棋』とも揶揄され、一手一手慎重に動かしていく高難易度パズルの様相を呈す。
以前記事にも書いたが、幼少の折に触れたファイヤーエムブレムは僕には難しすぎて(合わなくて)魅力を感じていなかった。
やさしめの仕様のタイトルを段階的にあそんでいき、ジャンルに慣れた今だからこそおもうことなのだろう。
難易度というのは、プレイヤーによって最適が異なり、プレイヤーは千差万別。
好みも異なる。
なので、正解ということではなく、あくまで
『慣れたプレイヤー(+マゾヒスト)がおもしろさを感じやすくなる要素』くらいの認識の話。
だから、ロストなしの仕様もプレイヤーの好みやジャンル経験値によっては最適となりうる点も考慮しなければならないともおもうのだ。
毎ターンセーブという最強のシナジー
SRPGはいくつかあそんできたが、あまり見かけた記憶がない。(あったっけ?)
中断セーブでロードすると消えるタイプはあったけども。
ロストありのプレイで撃破されるとリセットするが、そのたびにおなじ手順を始めから……というのも中々つらい。
毎ターンセーブがあると、格段にロストありのあそびがやりやすくなる。
成功したターンは進めて上書き保存していき、失敗したターンだけやり直せる。
ロストになじみがないプレイヤーも、一手を追求するおもしろさを体験しやすくなる。
個人的に本作一番の評価点。
耐久値というリソース管理
ネットを見ると、耐久値不要論などもみかける。
実際に無限耐久やMP制のSRPGもたくさんある。
本作のプレイ動機は度重なるふりーむの通知耐久値仕様なのは前述したところだ。
使うといずれ消滅してしまう、という感覚はロストに近いものがあり、『重み』がある。
特に強くてレアな武器を壊したくないという想いと、ここぞというときに使うカタルシスは病みつきになる。
以前僕はフリーゲームのロンドリア物語2にて考えなしにレア武器を使いまくり痛い目を見た。
ここぞという火力が必要な場面で強武器が使えないくやしさ。
そして、それは武器を温存し敵を倒す工夫のおもしろさ、強敵やどうしても少ない手数で撃破したいシーンでの存在感やありがたみを感じることとなった。
MP仕様などと違い、ステージクリアで回復したりせず、減った分は減ったまま。
コストも共有でなく個別なので、使える回数は決まっている。
ゲームクリアまで見越した運用を求められる耐久値仕様はシミュレーションとしての計画性、戦略性という考えるおもしろさを提供してくれていたのだ。
そして、なんと本作にはお金を払って耐久値を回復する修理屋が存在しない。なので、他作品以上に非売品の扱いに気を配る必要がある。(※後半で強力な無限耐久武器がいくつか手に入るので、最後で詰むようなことはないかとおもわれる。)
ボーナスポイントで買える回復アイテムがいくつかあるが、有限であり、その使用には慎重にならざるを得ない。
当初の期待通り、耐久値の節約プレイを堪能できた。
ただ、やはり初心者が体験するには少々ハードルが高い感もある。
他作品の紹介になるが、ロンドリア物語の作者によるエルンシス物語のロスト、耐久値の仕様がかなりマイルドな調整なので、女の子も剥けるし興味があって初めてというプレイヤーにはそちらが無難かもしれない。
力でなく体格による軽減が生んだもの
本作では古典的なSRPGにおける重量補正軽減に適用される『力』の能力値ではなく『体格』が影響している。
キャラクターはレベルアップすることで能力値が上がっていくが、力もこの対象である。
そして、力を補正軽減の参照能力値にしている作品では、力が上がれば重量補正軽減の効果も上がる。
この仕様の作品は、比較的レベルアップで上がりにくい体格(クラスチェンジや一部アイテムなどで増加することがある)に比べて、重さに対するマイナス影響は少なくなりやすい。
※魔道士は上がりにくいが、軽量戦士タイプ(盗賊、弓使い、軽量剣士)などは上がりやすく重さの影響が少なくなっていく。
力が強くなるとアイテムが重くても、遅くならなくなっていく。
(つまり、回避率が低下したり、なにより恐ろしい再攻撃を受けにくくなる)
成長して弱点克服したんだから良いことじゃん!
使いにくかった武器が強くなるんだからいーじゃん!
そうおもっていたときが、僕にもありました。
だが、本作をプレイして、すこしおもうことがあった。
高くなった力によって、重さ、という概念を克服したということはつまり、重さの存在がなくなっていった、ということでもある。
そしてそれは、重さによって差別化されていた武器の価値を失わせるものでもあった。
本作では、重量補正を減らす参照能力値である体格はあまり上がらない。(キャラによって高い低いがある程度決まっている)
だから、ゲーム後半でも軽量級のキャラにとって重い武器は速さを犠牲にするので強敵の追撃リスクがあり続けたし、軽い武器や体格の差が強みとしてあった。
この仕様がツールのデフォルトかどうかもしらないし、作者がなにを意図してそうしたのかもわからない。
ただ、アイテム重量のあるSRPGを何作もあそんでいた僕には新鮮だったし、後半まで鉄の弓(比較的軽い武器。重量補正を気にしなくなると下位互換化しやすい)などに存在意義があったことに面白さを感じた。
弓歩兵などは体格が低めなので、重さのペナルティーによる追撃の脅威にさらされ続ける。
場合によっては、ハイエンドランク武器より初期の鉄シリーズが活きる場面もある。
安価で耐久値も高めなので主力として気軽に使っていける。
リスクというのは抑えてリターンを得るのが攻略、逆にリスクとリターンが比例するのがゲーム性であるとゲームデザイナー櫻井氏が述べていた(意訳)。
あえてリスクをリスクとして残すことは、選択肢のバリエーションを増やすことになるのではないだろうか。
それは、状況により価値を変えるのでパターン化やマンネリといった思考停止を抑制する。
つまることろ、考える、悩むおもしろさを常に提供し続けるということでもあるのだと改めて実感した。
そういった気づきを与えてくれたという一点においても、本作には価値があったと個人的におもう。
騎兵、飛行兵クラスの仕様
本作では、馬や鳥に乗ったりしているクラスが『下りる』ことで歩兵形態に変化、また戻ることも可能。
本作では、このタイプは屋内での移動力が下がるように設定されており(狭い場所では自由に動き回れないという理由付け。これにも感心)、特に場所を選ばない移動力がウリであった飛行タイプが不利になるという点がまず新鮮だった。
そして、不利な点だけでなく、『下りる』という要素で屋内でも歩兵くらいの移動力を得ることも可能になっていた。
これにより、状況によって飛んだり着地して移動するといった戦術性が増していた。
加えて大事なことだが、騎馬、飛行種族による特効も歩兵に変化することでその間は消えることになる。
敵の装備次第では、時に有効な選択肢になりうる。
特に主人公ふたりはクラスチェンジで強力な騎馬ユニットになるが、ビーストキラーや長柄刀などでおもわぬ大ダメージを受ける。
更に騎馬専用武器などもあるので、その使用可否にも関わり攻撃面にも影響がある。
スーパーロボット大戦シリーズやSDガンダムジージェネレーションシリーズでは変形というコマンドで定番要素だが、いわゆる戦記物の人間が主体の中世ファンタジー物では珍しいのではないか。(いやアンタしらんだけで珍しくないよとかでしたらごめんさい)
ただ、ロボットものの変形はターン消費がないが、本作では形態変化による行動終了がある。
移動してすぐ降りて攻撃や乗ってから移動して攻撃など同ターンではできない。
なので、敵の射程圏内での乗り降りは危険。
便利なぶん、リスクもある。
騎馬・飛行タイプや形態変化周りに伴う仕様やバランス調整は既存作品より頭ひとつ抜けている。
特効で再攻撃ゲー
あくまで自身のプレイ感になるが、このエストリア大陸戦記は、特効と再攻撃がつよすぎる。(SRPGStudio作品みんなそうか)
以下、各仕様。
・特効
特定の相手に攻撃力三倍。
どうかしてるとおもったのは僕だけなのか。
なお、武器だけでなくキャラクターそのものに特効が付くスキルもある。
その場合、武器の縛りを受けず使用できるすべての武器が特効を有するようになる。
だが、ゲームクリアまで防御面に関しては安心できなかったので、やられる前にやれの前提バランスなのかもしれない。
・再攻撃
これは、攻速が相手より四以上になると、一回の戦闘で二回攻撃する、というもの。
攻速の計算式は、
速さ-(武器の重さ-体格 ※最低0)
本作では体格の仕様から重さの影響を受けやすいので、重い武器持ちの敵は比較的遅い。
速さが売りのキャラは狙えば割とカンタンに再攻撃できる。
さらに『追撃』というスキルで攻速が一でも高ければ再攻撃可能となり、再攻撃のオンパレードである。
※速いキャラは、たいてい『追撃』を持つ。
ニ撃目の前に敵の反撃が入るためリスクはあるが、射程の穴をついたり回避や軽減など狙うことである程度のフォローは可能。
なにより、実質ダメージ二倍になるので撃破効率が著しく上がる。
先述の特効と組み合わせることが、本作の基本戦術となる。
三✕二で六倍。
ついでに必殺なら十二倍。ポケモンのダメージ計算式か。
救出
1.基本的に自分より体格の低い相手を『持つ』ことができる。
2 .救出したユニットは行動が終了する。
3 .救出されたユニットは元いた位置から消え、救出ユニット(同じマス)に付随する。
4 .持たれている間は行動不能。
5. 次のターンで隣接マスに下ろしたり、他のユニットに受け渡すことができる。
6.デメリットとして、救出したユニットは技や速さなどにマイナス補正が入る。
ので、戦闘はできるだけ回避したい。
なんの役にたつんだ……?
一見、メリットなどなにもなく一手無駄にして能力値を下げただけのようでもある。
しかしこれは、わかると実に有効かつ高難度では何度も助けられるシステムである。
移動力の高い馬や飛行が持てば、鈍速の進軍速度を上げられるし、間接的に一撃離脱や転戦もできる。
擬似的に騎馬、飛行ユニットの移動特性を得ることができる。
そしてその真価はロストありでの回避テクニックにある。
地形や敵の射程や位置関係から、安全地帯のマスがユニットの数より不足することがある。
本来なら誰か被弾覚悟なとき、原則一マス一ユニットなところ、二人分退避できる。
また、敵の射程ギリギリで行動終了した打たれ弱いユニットをロストから守るときにも有効。
救出は戦術の幅を広げ、特にロストありにおけるリスク回避の生命線ともいえる重要テクニックである。
交換
これは、アイテムをユニット同士で受け渡すシステムで、回復アイテムが余っているキャラが不足してるキャラにあげたりなどといった使い方がある。
そして、これも高難度ロストありで活きてくるが、特効武器や装飾品の使いまわしによる攻撃力アップ、再攻撃狙いで一ユニット一撃破での効率の最大化にある。
特に本数が限られた特効武器などを同ターンで複数の敵に使うことで効率的に敵の数を減らし反撃のリスクを減らすことはロスト回避に非常に有利に働く。
三すくみ
本作では、剣→斧→槍→剣…と元素→光→闇→元素のふたつの相性図がある。
効果として、攻撃力、命中、必殺が有利側は上がり、不利側は下がる。
武器レベルの高さに応じて効果量が変化するので高レベル武器ほど影響がある。
相性激化という効果を二倍にするスキルや、相性無効化などもある。
すこしの差が明暗をわけるので、できるだけ活用していきたい。
熟練度
本作では武器種別でなく一元化されている。
これはおそらく、クラスチェンジ後などで使える武器系統が増えても一から鍛えないと高レベル武器が使いにくいのが理由ではないかとおもう。
ただ、一系統でも十分すぎるほど多彩な武器があるし、あまり便利すぎると得意分野の差別化が希薄化する難点もあるかとおもう。
ストックの多い系統の武器を使いやすくなるメリットなどもある。
このあたりは、制限と自由度のさじ加減なので、むずかしいところだとは感じる。
RPGなどでは、手に入れた伝説武器は特に制限なく使える。
それが低レベル攻略などあそびの幅を広げていることもある。
が、自分の技量が足りなくてまだ扱えないという武器の価値を吊り上げる効果や鍛練を続けてやっと使えるようになったうれしさは熟練度システムならではのものだ。
専用武器は低レベルで使えるが、共用伝説級武器は高い熟練度を要求する。
そして、それに見合った高いスペックを有する。
ラスボスには伝説級の精霊器でないとダメージがまともに通らない。
伝説の肩書きをシステム面でも反映させ、特別感の演出や扱えるうれしさにつながっている。
バトルリザルト
ゲームプレイの評価が確認できる。
SNSの発達でプレイ体験も共有しやすくなったし、フリーのSRPGでも前提にした連動システムなど採用する作品もでてきた。
コミュニティーの盛り上がり次第だが、SRPGでスコアアタックなんてこともできる。
○個人的な希望とか
作者にとって処女作とのことで、細かいことをいうのもなんだが、プレイして気になったところを述べる。
本作を好きになったから、おもしろかったからこそいいたい。
文句のようなものなので、作者含め気になるかたはスルーで。
・シナリオに関して
本作のタイトル画面(当記事のヘッダー)を見てもらうと分かるとおもうが、3人のキャラが描かれている。
これを見たとき、
「あ、トリプル主人公なのか? 珍しいな」
とおもったが、特徴欄にはダブル主人公とある。
実際、プレイした範囲では途中で分岐はあったが、大きな流れとしてはおなじ印象だった。
いちばん下にいるアリアというキャラは、特殊な立ち位置にいるので、作中でもうすこしその辺り描写がほしかった。
特に男主人公グランとは旧知らしいにも関わらず絡みがほとんど見られなかった気がする。(見たかったぞ!)
ツンデレくさい見た目と言動から設定的に実にもったいない。
(製作コストを度外視すれば)3人によるトリプル主人公というシナリオもおもしろかったかもしれない。
利害が一致しているため対立シナリオとはならないかもしれないが、もうすこし自国の事情や個人的な想い、それを相手にぶつけるところなどの掘り下げが見たかった。
グランがメインなのか比較的彼はスポットが当たりやすく見えているところも多い。
セレスに関してはあまり自身のことを語らず(まあ理由はあるが)、印象が薄い。
ついでにいえば、ラスボス(両方)の心情もあっさり目。
もっと感情を吐露してほしかった。
上に立つ者というのは、感情を出さないものなのかもしれないが……。
にしても、もうすこし匂わせるくらいはあってもよかったのではないだろうか。
全体的に目的に向かい流れが直線的すぎるきらいがあった感じだった。
戦記物は群像劇が魅力のひとつでもある。
それぞれ抱えている事情、個人史がある。
ラストになると、出撃前や戦闘マップでの会話もなくなっていた気がする。
このあたりもさみしいかなとおもった。
キャラクターを好きになったがゆえに、もっと詳しく見たかった。
二周目に謎の引き継ぎ要素があったが、未プレイであるので、もしかしたら補完されるようなものがあるのかもしれない。
としても、初回でのあっさり感はすこし物足りない気がする。
もしかしたら、人によってはあっさりしてるのがいいのかもしれない。
好みといえば、それまでだが。
・システムについて
用語解説
システムのチュートリアルは充実していたが、世界設定や用語解説もほしいとおもった。
国や人名などは多いので、○○国ってどこ? ○○って誰だっけ? どんな事情や背景があるんだっけ?
と、ストーリー中に分からなくなることがあった。
プレイ中いつでも確認できるとより作品世界や物語理解の助けになるかとおもう。
支援対象・効果の明確化
本作では定番の支援効果がある。
特定のキャラが近くにいると能力値に上方修正のボーナスがある。
SRPGの位置取りという戦術性を支える基本的な要素だ。
本作のステータス画面で確認できるのはそのキャラが与える対象のみであり、与えてくれる対象が見えない。
加えて相手を選ばない支援はスキル欄でなにがどれだけ上がるかの数値がわかるが、関係性による支援は合計値としてしかわからない。
なので、戦闘中に『このキャラの攻撃力や命中率を高めたいけど、誰がなにをどれだけ上げてくれるのか?』が調べにくい。
たいてい親しい間柄の相互支援だが、物語の会話で新しく発生したり、片想いの一方通行(関係性が見えてエモい)もあったりするので、フォローキャラだけでなく(むしろ)フォロワーとその効果についても一覧確認できると便利だとおもった。
いっそのことスキル化して(スキル『幼なじみ』とか)もいいかもしれない。
一部強制出撃ユニットに関して
本作に限った話ではないが、RPGやSRPGあるあるネタとして特定のユニットがイベント戦に強制参加となることがある。
前提として自由な編成、それに伴う育成をしてきたプレイヤーは戸惑うことになる。
「えっ!? コイツ育ててないから初期レベルのまんまだけど!?」
RPGなどでは、そこからレベリングすることで対応できるが、いわゆるフリーバトルのないSRPGにおいては詰む危険がある。
ルート分岐で選ばなかったユニットを合流時に引き上げたり、ラスト直前に有限で10レベルまで上げる施設(合計10回)などサポートがあるが、根本的には事前に使うつもりのなかったキャラがシナリオ都合で強制参加、もしくは育成できない(強制離脱)ことに問題がある。
二週目なら計画的に育てることもできるが、初見では判断がむずかしい。
ボーナスポイントなど救済のある作品もあるが、できることなら、戦場で戦わせて自分の手で育てたいとおもうのは、僕だけだろうか?
無限耐久武器
おそらくこれは詰み防止の救済的な意味が強いのかもしれない。
後はシナリオ上の演出もあろう。
後半になると、どんどん増えていき便利なのだが、便利すぎてそればかり使ってしまうようになった。
最後まで耐久値を意識したプレイがしたかったかなとすこしおもった。
あとまあ、できれば修理屋さんほしい。
お気に入りの武器を直しながら使ってくのエモくない?
○総評『古典というスタンダードの洗練』
昨今は『あそびやすさ』や作品数増加に対する差別化から『オリジナリティー』をウリにするゲームも増え、それは快適性や間口を広げる意味で正しい。
だが、古さやむずかしさ、不便さとはイコール悪ではない。
むしろ古典的なものにこそジャンルのおもしろさや本質はあるのかもしれないとおもうことがある。
今回、久方ぶりにロストと耐久値ありの仕様に触れておもったが、失われることを回避しようと工夫する面白さはそれでしか得られない魅力があると改めて感じた。
そして、本作はただ古典の模倣にとどまらず、バランス調整としてのアレンジを加えより完成度を高める工夫も見受けられる。
ギミックのあるマップは、どう進軍しようかと考えさせてくれるものであったし、下馬や体格に関する仕様は慣例に新たな価値を提示している。
戦闘が主要成分のひとつであるジャンルにとって、飽きさせずに考えるたのしさを提供しようという姿勢は好感が持てる。
処女作でこの完成度はすごいとおもうし、続編やシナリオ追加バージョンなど今後に期待したくなる作品だった。
斬新なシステムや奇抜なシナリオ、あそびやすさみみを意識したSRPGに疲れてしまった、物足りなさを覚えるようになってしまった。
そんなとき、安心してプレイできる、ある種のむずかしさ込みでの王道を感じられる本作は普通のよさがある。
いろんな美味しいたべものはあるけど、やっぱ炊き立ての白いごはんが一番うまいよなとおもうものだ。
チュートリアルは充実しているが、全体的にわかってる人向けな作りに感じる。
すこしハードルが高いきらいはあるが、初心者は古典に挑む心づもりで、熟練プレイヤーは原点を確かめるように触れてみてほしい。
SRPGというジャンルの魅力を感じることができるはずだ。
「こういうのでいいんだよ、こういうので」
と、おもわず熟練SRPGゲーマーならつぶやいてしまう逸品だ。
※同日
改稿、タグ、画像追加。
※2024.8.14
初稿。
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