思い出の名作対戦格闘ゲーム『餓狼MARK OF THE WOLVES 』
狼の系譜、証明された名作の潜在能力
餓狼MOW(マークオブザウルブス)とは、1999 年に旧SNKよりアーケードゲームとしてリリースされた対戦格闘ゲームである。アイスクリームではない。
知らない人に簡単に説明すると、1990年代対戦格闘ゲームがゲームセンターで大流行した。
火付けはカプコンから発売されたストリートファイターII。
ある年代の人には説明不要のジャンル、ゲームである。
その勢いは、僕の住むド田舎の雑貨屋やスーパーにすらゲームセンターの筐体(ゲームが遊べる台)があったほどである。
友達の家に集まってスーパーファミコンに移植されたストIIを遊んだ思い出を持つ方もおられるだろう。
今で言うマリオカートやスマッシュブラザー ズのような存在だった。
後を追うようにゲーム会社は対戦格闘ゲームを開発した。
ブームは音ゲーなどの台頭と入れ替わるように終焉した(という認識が通説だ)が、ここでは語らない。
そんな中、格闘ゲームの始祖であるカプコンのストリートファイターシリーズと肩を並べたのが、旧SNKの餓狼伝説シリーズである。
簡単にストーリーを説明すると、孤児として育てられた主人公テリー・ボガードとその弟アンディー・ボガードが育ての親兼格闘技の師匠である叔父ジェフ・ボガードをさつ害され、その報復のために戦うというものである。
ストリートファイターシリーズなど格闘家が強い相手や勝利の栄光を求めて戦うといった理由付けが多い中、餓狼は復讐という暗く重いテーマが珍しかった。
そしてそれは、テリー・ボガードの戦うということを通しての生き方や考え方を形成していく。
宿敵との決着から10年後というMOWでの重厚感や英雄としての造形が物語を通して説得力を持っているのが個人的に好きだ。
餓狼といえば、キャラクター人気も強い。
ないすばでーの乳揺れで話題となり格ゲー界の女性格闘家の代名詞ともなった、くのいち不知火舞を始め、ボガード兄弟の永遠の宿敵であり、悪の帝王、格ゲー界ラスボスのカリスマという異名を持つギース・ハワードなどキャラクター人気も30年近い年月を経てなお健在であるレジェンドだ。ダボーレップーケーン!!
※SNKはKOF(ザ・キング・オブ・ファイターズ)シリーズやサムライスピリッツシリーズが看板タイトルになっているが、この餓狼伝説シリーズも最初期からある伝統のタイトルである。
最終作から実に25年越しに新作タイトルが発表され、人気の根強さがうかがえる。バスターウルフ作り直されてよかったね。
スマッシュブラザーズではテリー・ボガードが参戦したことでも話題となった。
○餓狼MOW、その魅力とは
・わかりやすく奥深いシステムとバランス
T.O.P.による戦略性と駆け引き
T.O.P.とはキャラクターを限定的に強化するシステムのこと。
以下、主な効果である。
1.技のダメージが25%増える。
(家庭用は倍率を変更できる)
2.範囲内の体力自動回復。
3.超必殺技用のゲージ蓄積率強化
4 .ガード耐久値へのダメージが大きい技、T.O.P.アタックを使用可能
5.スコア倍率増加
(ストーリーモードのプレイ評価)
そして、使用条件だが、試合開始前に設定した体力の範囲に体力が位置していると発動する。
おそらく言葉では、わかりにくいとおもわれる。
これは、体力ゲージを三分割にして、最初、真ん中、最後の3ヶ所のどこかにパワーアップポイントを設定するというもの。(家庭用は分割数に幅がある)
たとえば、最初にすれば試合開始直後から強くなるし、真ん中や最後にすれば、体力が減ってその範囲に入るとパワーアップする。
対戦格闘に限らず戦闘がメインのアクションゲームでは、なにかしらキャラクターを強化するシステムがある。
そして、その方法はたいてい蓄積型ゲージの使用による任意発動するタイプだ。
この餓狼MOWの強化システムT.O.P.が珍しいのは、対戦開始前に発動タイミングを決めることと、それが体力ゲージと連動していることにある。
極論をいえば、設定範囲内に体力を維持し続けるなら(ダメージを受け過ぎないなら)、永続的に強化できるということである。
これは、多くのゲームが時間やエネルギー消費によって強化を強制的に制限しているなかで、プレイヤースキルに依存しているのは異質である。
※昔ながらのスクロールシューティングゲームに採用されていた、被弾しなければ永続的に強化されるパワーアップシステムに類似している。
そしてそれは、いついかにして相手のT.O.P.を消し、自分のT.O.P.状態を維持するかという餓狼MOWにおける独自の戦略性、駆け引きを生み出している。
相手と自分のT.O.P.を意識した試合運び、立ち回りを求められる。
これは他の格ゲーではなかなか味わえないプレイ感だとおもわれる。
攻撃力の高さによる爽快感と逆転性
餓狼MOWは攻撃力が高い。
ゲージ技も1本で25%、2本で40%ダメージ。
キャラにもよるが、ノーゲージのコンボでも同程度の攻撃力を持つ。
前述のT.O.P.やゲージを組み込んだコンボなど条件が重なるとワンチャンスから5割~8割近いダメージを与えることもできる。
慣れてくると簡単なコンボや反撃を確定させられるようになるため、比較的初心者でも一矢報いることができる。
そして、ワンチャンからのダメージが大きいということは、攻守の切り替えがわかりやすいということでもある。
これは、プレイヤーにとっても観戦者にとってもプレイングや状況を評価しやすく展開の変化、有利不利の向きの理解や爽快感にもつながっている。
0フレームというチカラ
これは、特定のゲージ技(超必殺技、潜在能力)に設定されているもので、技の発生フレームが0となっている。
1フレームは60分の1秒であり、6フレームなら10分の1秒、つまり0.1秒、60フレームでようやく1秒である。
いかに格ゲーが刹那的な操作や判断の中で戦いを繰り広げているかがわかる。
すこし話が逸れたが、つまり0フレームとは0秒、技の発生までの時間が0である。
分かりにくいかとおもうが、具体例で言うと、コマンド入力が成功すると暗転演出が入るのだが、この時点で相手がガードしていないとヒットが確定する。(接触する程近くにいる場合)
一言で言うと、
技の発動を見てからガードが間に合わない
のである。
最速発生は、あらゆる状況で有利に働く。
発生1フレーム以上の技では繋がらないコンボが可能になり、相手の攻撃をガードしてからの反撃も確定しやすくなる。
格ゲーというのは結局のところ相手に攻撃を当てて、逆に相手の攻撃は防ぐことの応酬である。
その中で攻撃成功率を大幅に上げ、しかもゲージ技なので大ダメージを与えられる0フレーム技は餓狼MOWを象徴する強力な選択肢であり、比較的初心者の頃からでも狙っていきやすいハードルの低さも魅力で逆転の爽快感を得やすいのがポイントだ。
基本的な攻撃力の高さに加えてT.O.P.による強化、0フレームによるチャンスの増加。
こういった仕様から、餓狼MOWの対戦は比較的逆転劇が起こりやすく、盛り上がりやすい要素の一因となっている。
体力でリードしていても油断はできない。
その緊張感が面白さにつながっている。
・やりこみに耐えうる奥深さ
ジャストディフェンスの攻防
これは、ガードの一種である。
今ではアクションゲームで珍しくもなくなったが、25年も前から出ていたのである。ブロッキングのパクリだと? 表にでろ
いわゆるジャストガードといわれるもので、相手の攻撃をギリギリまで引き付けてからガードすることで様々な恩恵を受けるシステムとして有名だろう。
以下に本作の仕様を記す。
1.体力回復
2.ケズリダメージ無効
3.ガード耐久値回復
4.JD後の技による発生フレーム短縮
5.ガードキャンセル可能
1.は、そのままの効果だが、回復量は相手の攻撃力に比例し、多段ヒットを全部成功させると、そこそこ回復する。
ほかの格ゲーでは、体力回復という要素はデリケートなので減った体力の何割かだけ回復できることが多いが、MOWのジャストディフェンスでは特に制限はない。
もちろん、失敗すればヒットしてダメージをまともに受けるリスクがある。
2.は、地味ながらチャンスを生み出す要素。
格ゲーは、通常ガードしていても、必殺技などのダメージはほんの少し受ける。
これが残り体力が尽きかけたときにガードしてもケズリ切られて倒されることがある。
これはこれで勝ちかたのひとつであり、いたずらに批判されるものではない。
が、不利な側からは逆転が厳しい。
そこでケズリダメージを無効化する特殊なガードが採用されるのだが、餓狼MOWはノーゲージで使えるので、ゲージがなくても諦めずに戦える。
3.は、減ったガード耐久値を回復し、ガードクラッシュを起きにくくする。
餓狼MOWはガークラ連携という単語があるほど固めによる攻め継続が強力なので、それを抑えるメリットは大きい。
ジャストディフェンス中は、ガード耐久値は減らないのでガードクラッシュは起きない。
4.と5.は、すこし説明がいる。
格ゲーは攻撃をヒットさせたりガードしたりすると、動けなくなる時間がある。
それは技毎に設定されていて、どちら側がどれだけ早く動けるかの違いがある。
ここでそのフレーム(時間)により、この技を使えば反撃が決まる、あるいは攻め続けられるといった攻防が生まれる。
そして、ジャストディフェンスやガードキャンセルには技の発生時間を短くする効果がある。
通常ガードでは間に合わない攻撃がヒットするので、受け側の反撃の選択肢が広がる。
格ゲーはゼロコンマでの時間の攻防が繰り広げられる。その中で速く動けるというアドバンテージは強力なチカラのひとつだ。
このジャストディフェンスは、餓狼MOWを始めたばかりの頃は特にありがたみもなく、なんとなく飛び道具に合わせてみたりする程度だったりする。
が、中級~上級者になると、もはや必須レベルのテクニックと化す。
単に積み重ねれば体力やガード耐久値の回復として差が出るし、フレームの短縮は確実なヒットに繋がる。
ケズリダメージを受けないので、本当のピンチからでも反撃のチャンスを狙える。
ジャストディフェンスそのものを成功させるだけならそこまで難しくはないが、テンポの違う多段攻撃やディレイを含めた連携に成功させたり、ガードキャンセルや硬直短縮からのカウンターを狙うには技の性能の知識と短い受付時間で正確にコマンド入力を成功させる技量、冷静な観察からの判断が求められる。
そして、ハイレベルになるとこれがあるゆえに攻め側はうかつな攻撃ができず、守りにおいて強力な反撃のチャンスを生み出している。
そしてそれは誰でも手軽にできることではないので、テクニックの差として納得性が高いのがポイントだ。
他の格ゲーだとゲージさえあればガードキャンセルで反撃できるタイプ(が多いとおもう)なので、初心者にも狙いやすいメリットはある反面、やられた側はせっかくのコンボや固めを簡単につぶされるので冷めて意欲を削られることもある。
そうなると思い切った攻めがしずらく、けん制合戦でちちくりあうような、ちまちました戦いになることもある。
更に上級者になるとガードキャンセルを潰す攻防も生まれ、必ずしも攻めを抑制するものではない。
有利ではあるが最適解ではない。
このバランスが絶妙である。
対戦プレイを観ていて、プレイヤーの技量、その巧さを実感する実に良いシステムといえる。
バックステップ攻防
餓狼MOWにはキャラ共通でバックステップがあるが、これが優秀。
始まりから全身無敵となり使いやすい。
が、着地際に隙があるので、読まれると対応した技で狙われるリスクもある。
他、すこし浮いてるので空中判定となり一部の技のみ途中で出せるなど小技がある。
攻防のバランスを取り、かつ駆け引きの面白さを支えている大事な要素だ。
ブレーキングによる立ち回りの基本
これは、各キャラにひとつずつブレーキング対応可能な必殺技が設定されている。
本来なら最後まである技のモーションを途中で止めることができる。
つまり、必殺技専用のキャンセルだ。
餓狼MOWの必殺技の多くは、基本的にキャンセルできない。
だから、基本的なコンボやけん制は通常攻撃や飛び道具が始動技や主体となる。
だが、このブレーキングシステムにより、キャラにもよるが、必殺技がキャンセルできることで立ち回りの幅を広げている。
以下が仕様となる。
ヒット、ガード、空振りに関わらずキャンセルが可能。
キャンセルにゲージを消費しない。
1のヒットキャンセルは、基本的なコンボダメージソース、チャンスの増加となる。
その技が有効なシーンからのチャンスが広がる。
ガード時キャンセルは、ガードされた時の隙を軽減する。
これがあるから、反撃のリスクを抑えて積極的に使っていくことができるのだ。
空振りキャンセルは、地味ながら重要な溜め効果にある。
通常技や特殊技は相手に当てないと超必殺技用のゲージが溜まらない。
が、必殺技に関しては発動するだけでも、つまり空振りでもゲージが溜められる。
これにより一部のキャラのゲージ効率に大きな影響を与え、強さの柱ともなっている。
もちろん、どのキャラにとってもゲージは重要だ。
だからこそ、空振り溜めは価値がある。
2のノーゲージキャンセルというのも、大きい。
たいていの格ゲーにおいて、必殺技のキャンセルにはゲージ消費を伴う。
餓狼MOWは対応技を絞ることで、使用を無制限にするという思い切った舵取りをした。
他の仕様との相性を鑑みるに英断だったのではないかとおもう。
立ち回りの主体となり、攻め重視のスタイルや幅を生み出すことに成功している。
以下に述べるキャンセルフェイントやガードクラッシュ、小技の避け攻撃なども合わせることで、餓狼MOWの攻めは実にバリエーションが多彩な変幻自在なものとなる。
だからこそ、飽きることなく何度もプレイできるのだろう。
餓狼MOWのブレーキングは戦略的だ。
そして、戦術の中核を成している。
キャンセルフェイントによる攻め継続
餓狼における攻めを支える柱のひとつ、キャンセルフェイントである。
知らないとただのフェイントでしかない煽りムーヴにすら見えるが、その有用性を知ると必須レベルのシステムだとわかる。
これは、通常だと弱や強攻撃から必殺技へとキャンセルしてコンボや固めをしていくところを強攻撃→キャンセルフェイント→強攻撃→キャンセルフェイント→強攻撃…とキャンセルし続けられるという恐ろしいシステムである。
実際には相手がガードするにしろヒットするにしろノックバックが発生し攻撃する度にお互い距離が離れるので永遠に続くようなハメは起きない。
が、画面端においては相手が下がらないため長く続きやすい。
この画面端でのコンボや固めは強力な攻めのひとつであり、特に前作主人公のテリー・ボガードの爆発力を象徴するものとして代名詞ともいえる存在だ。バッバッバッバッペシペシシュッチャージーン!!
ガードクラッシュによるチャンス
格ゲーでは割とスタンダードだが、餓狼シリーズでは本作MOWで新規追加されたシステム。
相手の攻撃を防ぐガードにも体力があり、ガードするたびに減っていく。
※数値やゲージは見えないが、クラッシュが近くなるとガード時に体が赤くなる。
そしてゼロになると、強制的にガードが解除され短い時間だが無防備になる。
攻撃を確実にヒットさせるチャンスを作り出す重要なシステムである。
そして、餓狼MOWにおいては仕様がうまく噛み合い、他タイトル以上に攻防における存在意義が強い。
上記したキャンセルフェイント絡みの固めや技毎に設定されたガード耐久値に対する攻撃力などから比較的ガードクラッシュは起きやすく、そしてワンチャンスからのダメージが大きいことも相まってその利用価値は高い。
そして、それはそのままガード耐久値を回復させるジャストディフェンスの価値をも同時に上げている。
攻防にリンクした素晴らしいシステムといえる。
キャラクターバランスとは
格ゲーに、いや対戦ゲームに永遠につきまとう問題であるキャラバランスがある。
どんなに調整しても全キャラ均等に強いゲームなどお目にかかったことはない。
餓狼MOWにおいてもそれは例外なく、上位と下位にグループがわかれている現状がある。だが、問題はそこではない。
問題は、
勝ち目があるかどうか
が、大事なのだ。
プレイスタイル次第では、弱キャラで強キャラを食う下克上が起きることも対戦ゲームの盛り上がり、ロマンのひとつである。
「まさかあのキャラで4強を倒すなんて……!!」
実際に大会などでも弱キャラで強キャラに勝ち上位に食い込むことがあり、プレイ動画を観ていると「こいつホントにあの○○なのか!?」とジョニーライデンの帰還のヤザ…ヴァースキさんの如く(まあ、あれはパイロットに対してだが)目を疑うほどの強い弱キャラ(意味不明)を見かけることがある。
これは、相性の問題もあるが、ひとえにどのキャラにも勝つチャンス(潜在能力)があり、それはプレイヤーが性能を引き出している証左であるということだ。
がんばれば、弱いと言われているキャラでジャイアントキリングするロマンや、お気に入りだけど弱いキャラを愛のチカラで勝利させることもできる。
かのポケモン界のレジェンド、カリン様の至言(意訳)である。ポケモンはどうにもならんカードもあるが大事なのは、その精神性とそれを可能にしてくれるゲームバランスにある。
餓狼MOWは、それを実現させてくれる。
それがプレイヤーのゲームへの信頼を生み、現在まで長くあそばれる理由のひとつとなっているのだ。
バッバッバッバッシュッチャージーンッ!!
フッ…強いな…
オッケイ!!
ここでは挙げないが他にも細かい(かつ必須レベル)のキャンセルテクや仕様の知識を前提とした攻防があり、長年のプレイ研究で発見されてきた経緯がある。
餓狼MOWはわかりやすいシンプルな要素だけではない。
修練を必要とするシステムもまた存在する。
そして、それこそが格ゲーマーを満足させる奥深さであり、知れば知るほど、練習したぶんだけ、やりこんだらやりこんだぶんだけ高度な駆け引きやプレイングを実現してくれる。
ゲームがプレイヤーを裏切らず応えてくれる。
初期の評価を覆し、長くあそばれる対戦ツールとしての潜在能力を証明した名作たる所以である。
・厨ニの権化、エモ設定、細かな作り込み
僕も当時触れた頃は、厨ニ病であったので、主人公ロック・ハワードの発言、技、ポーズなどすべてがぶっささった。
「か、かっこいい……!」
゚+。:.゚(*゚Д゚*)゚.:。+゚
以下、発言とポーズの一部を紹介する。
まず、すでにキャラ選択画面で髪をかき上げている。ナルシスト全開である。
対戦開始前
「限界まで……飛ばすぜ!」
ジャンパーの袖のジッパーを左右下ろしながら。
勝利ポーズ(通常)
「どこまでも……あがいてやる!」
と、発言しながら身を翻し背中を見せる。
手から紫のオーラが翼を描く。
勝利ポーズ(シャインナックル)
ジャンパーを投げ上げて、倒れた相手に被せながら
「あばよ……」
と言いながら口許に手を当てる。
勝利ポーズ(レイジングストーム、デッドリーレイヴ)
「ああはあっ!」
手から紫のオーラが抑えきれず沸き上がる。
とても苦しそうに呻く。
この後のデモカットでの台詞が
「なぜだ……暗黒の血が騒ぎやがる!」
勝利ポーズが倒した技によって三種もあるのもポイント高い。
テリー・ボガードとの関係性も魅力だ。
ネタバレになってしまうが、本作主人公ロック・ハワードとは前作において決着をつけた宿敵ギース・ハワードの息子なのだ。
ロックにとってテリーは父親の仇である。
(本人は恨んではいないらしい)
そのロックに格闘の手ほどきをし、育てたテリー。
ロックの技にはテリーから受け継いだ技と父ギースの血脈のチカラが混じっている。
自身の出生やテリーへの感情、更に多感な年頃(17歳)ということもあり、彼は複雑な家庭環境もある。
母親も死別しており、気にしている節も見受けられる。
硬派なプレイヤーには受け入れにくいかもしれないが、このキャラクター周りの事情も僕がMOWを好きになった理由のひとつだ。
実はこのMOWではシリーズ続投はテリーのみであり、他キャラは新規である。
マンネリ対策として一新されたとのことだが、この点もシリーズファンに不評だったらしい。
だが、他のキャラも負けず劣らず濃くて魅力的である。
まあ、シリーズものとしてさみしい気持ちはわかる気がする。せめて舞かマリーを。
各キャラの個性的な試合前や後の口上や挑発、技のモーションやボイスに始まり、各々のストーリーモードで短いながらもしっかりとキャラが掘り下げられている。
エンディングが特にそうだが、各キャラにはステージ途中で関係性のあるキャラとの特別な掛け合いデモが試合開始前、決着後にある。
ロック、テリー間のライバル、師弟関係や家族関係、仇、友人、補食対象などシリアスからコミカルまで多彩な掛け合いを楽しめる。
エんモッ!!!
(エモーショナル最上級)
・なにもかもがスタイリッシュでクール
BGMがめっさCOOL!
SNKの音楽グループ『新世界楽曲雑技団』によるハイクオリティーな音も作品の魅力に大きく貢献している。
キャラクター毎のテーマ曲(ステージ曲)が
ロックやヘビメタといった格ゲー向きのジャンルからジャズっぽい落ち着いた曲調、和風なものまでバリエーションがあり、かつどれもクオリティーが高い。
個人的にはアレンジ版が好きなので、機会があればぜひ聴いていただきたい。
きっとお気に入りの一曲が見つかるはず。
ちなみに、相手を通常技で倒したか、必殺技か、超必殺技で倒したかで勝利BGMがグレードアップするという結構珍しいんじゃないかとおもう仕様がある。
特に超必殺技(潜在能力)の勝利BGMはメッチャカッコいい。
ぎゅーーーーぢゅーいーん!
ダダッダダッダダッダッダッダダーッ!!!
デッデーデレデデーレッデデーデデー♪
デーデーデーデーデーデーデー♪
ダダッタッ! ダダッタッ!
ダダッタッ! ダダッ……
デレデレデレーデーレッテレー↓♪
デレデレデレーデーレッテレー↑♪
デレデレデレーデーレッテレー↓♪
デレデレデレーデーレッテレー↑♪
(以下ループ)
がんばってオノマトペってみたけど、
全くもって伝わってる気がしない。
各自調べて聴いてみてね。
エンディングも最高にエモい曲だ。
超必殺技(潜在能力)のカッコよさ
以前、MOWの続編発売が発表され、テリーの超必殺技であり、もはやバーンナックルやパワーゲイザー並みかそれ以上の代名詞となったバスターウルフの動画が公開された。
そして、物議をかもし(不名誉な)トレンド入りをした。
おそらくSNKはその声に応えたのだろう。
バスターウルフを作り直し、餓狼MOWファンはなんとか矛を納めたようだ。俺は納得してねーが。
そのくらい、テリーのバスターウルフは最高にカッコいいのだ。
それは、暗転、間の使い方、グラフィックエフェクト、橋本さとしボイス、効果音、威力、すべてにおいてパーフェクトな完全体であったからだ。
たい焼きおーけー↑?(うぐぅー!)
後のKOFやカプエスなど間連作で観て聴くたびに僕は
違う、これはプロフェッショナル仕事の流儀バスターウルフじゃない。
とおもいつづけていた。
いわゆる原作厨、原典至上主義者である。
ほかにも、主人公ロックのデッドリーレイヴ・ネオを始め、マルコの極限虎砲、ジェイフンの鳳凰脚、ほたるの天翔乱姫などエロカッコイイ超必殺技がたくさんあるので、ぜひ観てみてほしい。
このように餓狼MOWはストーリー、キャラクター、グラフィック、サウンドすべてにおいて演出がスタイリッシュでクールなのである。
対戦ツールとして格ゲーマーに愛されているが、加えてその世界観も大きな魅力のひとつだとおもうのである。
○実は餓狼シリーズファンに不評だった
これはネットで知ったことだが、発売当時は餓狼シリーズファンに本作は批判的に受け取られていたらしい。
主な理由として、キャラクター面で主人公ロックと前作主人公のテリーの関係性やほたるなど特定の層に受けを狙ったかのようなデザインや旧キャラ総リストラ、システム面ではライン移動(別の空間に移動する感じ)の廃止など、シリーズの象徴的な要素が失われてしまったことにあるようだ。
これはシリーズものの宿命ともいえる。
長く続けば、マンネリや新規客層獲得といった点から刷新されることがある。
そして、たいていシリーズファンの反感を買うものだ。
仮に餓狼MOWがひとつの作品として良作だとしても、続編ものとしてファンに受け入れられるかはまた別の問題だ。
ただ、所感になるが、現在では比較的受け入れられているような印象もある。(まあ古すぎてもう離れたファンもいるかもしれないが)
なんでもそうだが、急激な変化は反発を生みやすい。
馴染むまで、時間が解決することもある。
○コミュニティーによる再評価
これも忘れてはならない。
前述のように、餓狼MOWはリリース後の印象が良くなかった。
今日においてその奥深さや面白さを秘めた名作としての評価を得たのは、餓狼MOWをプレイ、研究し続けた狼たちがいたからだ。
餓狼MOWの攻略サイトといえば、ハワードアリーナ。
管理者はサイト運営時と最新の傾向との差異を動画でコメントしているが、それでもその情報量やノウハウ、データは圧倒的。
初心者から上級者まで、レベルに合わせた学習ができるのが魅力だ。
YouTubeにはa-cho 全国大会の試合などが配信されているが、非常にハイレベルな対戦を視聴できる。
洗練された動きに、一瞬の隙からの逆転劇。
餓狼MOWの醍醐味をあますところなく味わえる。
観ているだけで参戦したくなってくる。
餓狼MOWはそのシステムや精神性の如く、底から這い上がって認められた。
そこには、ゲームをやり込み、突き詰め、戦い続けた餓えた狼たちの功績によるものだ。
いつだって、コンテンツを生み出すのも成長、発展させ支えるのも人なのだと実感させられる。
○総評。個人的な思い出、そして対戦格闘ゲームとは。
僕は、ストIIが流行った頃は実は対戦格闘は全然興味がなかった。
友達や親戚がよく遊んでいて、たまにプレイしたが何が面白いのかよく分からず、マリオ、ドラクエ、FFなどが好きでそちらばかり遊んでいた。
そんな僕に転機が訪れたのは、高校を卒業してからだった。
同じ村に住む同級生の友人が、ドリームキャストというセガのハード(ゲーム機)をもっていた。
僕はその友人とパソコンのエロゲーや、そのドリームキャストに移植されたギャルゲーをよくあそんでいた。萌え豚である。
んほおおおこのツンデレ豪萌ええええ!!
そして、そのドリームキャストに餓狼シリーズの当時最新作であるMOWが移植され、ある日、対戦相手として遊ぶことになった。
小学生の頃、ほんのすこしストIIをやった程度なので、全く勝手がわからない。
それはもう、ボロクソのように負けた。
そもそも技が満足に出せない。
どう戦えばいいのかわからない。
負け続けた。
毎日負けた。なんで続けてたんだろう?
が、友人の予備校の帰りや土日には彼の家にあそびに行き(当時僕は無職なので時間は無限大だった)、何度も何度も対戦した。
時にハードごと借りて練習した。
悔しさもあったし、技やコンボを覚える度に試してみたくなった。
すると不思議なもので、稀に勝てるようになった。
勝てるようになると、やはりうれしいものだった。(手加減されていたかもしれないが)
ただ、当時対戦といえばスマッシュブラザーズにマリオカート、テニス、ポケモンにドラクエモンスターズやらいろいろやっていたが、格闘ゲームはやり込んでなかった。
いろんな経験を積んで目新しさや、難しさに対する受容力みたいな精神的土壌があったのかもしれない。
以前記事に書いたファイヤーエムブレムの時のようなものかもしれない。
友達は普通に子どもの時からやってたので、このあたりは個人差があるのだろう。
今ではたくさん遊んだ彼も一児の親。
都会へ行き、日々忙しいことだろう。
できることなら、またMOWや間もなく発売される25年振りの新作で対戦したいものだ。
おそらく多くの人がそうだとおもうが、対戦格闘ゲームとは対人戦がおもしろい。(もちろん、楽しみかたは自由で、キャラが好き、音楽が好き、ストーリーが好き、プレイ動画を観るのが好きなどもあろう)
そして、対戦とはお互いのチカラを尽くして駆け引きを行い、勝負する対話ともいえるコミュニケーションにある。
僕は自身の経験として、対戦格闘ゲームを好きになれたのは、負けても負けても相手をしてくれる存在がいたことがなによりも大きかったと振り返っておもう。
餓狼MOWは、何度もプレイすることで対戦の深みが生まれる、応えてくれる器だった。
だからこそ、僕たちは何度も楽しく対戦し続けることができた。
だから、そんな体験をくれた餓狼MOWが僕は大好きだし、友人の存在と共に感謝している。
もし、記事を読んで興味を持った格ゲーマーがいたらガンガン対戦してその深みを感じてほしいとおもうし、普段やらない人もプレイ動画などを観てみてほしいとおもう。
そして僕がそうであったように、餓狼MOWや対戦格闘ゲームのことをすこしでも好きになってくれたら、とてもうれしい。
最後に、15周年記念動画のテリーとロックの会話シーンを一部抜粋させて頂き締め括りとしたい。竹本英史、落ち着いたイケヴォよなあ。
※2024.8.9
タグ追加、本文修正。
※2024.7.28
タイトル誤字修正。
※2024.7.27
初稿。
画像はプレイステーション2版のものです。
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