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Sri Lanka Shows the Folly of Fringe Theories(和訳)

 ブルームバーグのコラムをひたすら直訳しました。

「スリランカは、非主流派科学(境界科学)の愚かさを露呈した」

Mihir Sharma (Bloomberg Columnist)
2022年4月28日

トンデモ理論がトンデモ理論と見なされるのは理由がある。それは、外貨建債務の支払いを停止しデフォルトを表明したスリランカの事例である。

ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領と彼の兄であるマヒンダ・ラジャパクサ首相(前大統領)によって統治されていたその国の支配王朝は、内閣の大部分と議会の多数派であることを失った。今月初め、新しく任命された財務大臣は24時間を経たずして辞任しようとした。その重圧が重すぎると言って(彼はもう一人の兄弟であるバジル・ラジャパクサの後任だった)。

影響は広がっていく。スリランカ国は輸入の対価を支払えないため、食料や燃料は不足し、13時間の停電や配給制度を余儀なくされた。インフレ率は19%近くになり、中央銀行は利率を2倍に引き上げた。

どのようにして、このインド洋の小国がそのような(財政的な)苦境に陥ったのだろうか。そうです。構造的な要因が役割を果たした。中国資本による巨額の無用のインフラ投資が、少ない資産を使い果たした。浪費家の政治家は愚かにも減税した。パンデミックが観光部門を直撃したし、もちろん、ロシアのウクライナ侵攻も全てを悪化させた。

しかし、より深刻な問題はラジャパクサ一族がスリランカの政策をトンデモ理論に転換したことにある。特に2つの重要な分野(農業政策と通貨政策)においてである。

去年の4月に、政府は、合成肥料の輸入と使用を禁止することにより、スリランカを有機農業に移行するという選挙公約を実行した。スリランカ国民の3分の2以上が、直接または間接的に農業に依存しており、経済学者と農業学者は警告していた。その規模での有機農法への移行は生産性を破壊し収入を壊滅的にすると。

それにもかかわらず、灌漑省大臣のキャマル・ラジャパクサ(そうです。もう一人の兄弟です)は、スリランカは「化学農法マフィア」の言うことを聴くべきではない、と主張した。プロの有機農法活動家もまた保健大臣から巨額の支援を受けていた。その大臣は、強硬路線のシンハラ族の国家主義者でチャンナ・ジャヤスマナという。彼は「西洋」の医薬品とは異なり、地元の宗教家は「目に見えない霊とコミュニケーションを取り、知識を得ることができる」ため、癌や腎臓病を治すことができると主張した。

当然のことながら、そのトンデモ理論は誤りであった。スリランカの日常食の基本となる「米」の生産高、茶の生産スリランカの主要輸出品である「茶」の生産高は、急激に減少した。それは、購買力自体を減じるものではなかったので、食料危機を引き起こした。また、スリランカの国際収支を深刻なレベルに悪化させた。スリランカは米の輸入を開始しなければならなかった。茶の輸出から得られる収入も枯渇した。

そのトンデモ理論の2セット目に入っていこう。当時の中央銀行総裁であったウェリガマゲ・ドン・ラクシュマンは、パンデミックの間大衆にこう言った「債務の持続可能性について誰も心配しなくていい。スリランカがすべきことは、内国債の比率を増加させるに尽きる。そうすれば問題は解決されるであろう。なぜなら通貨発行権を有する国において自国通貨建債務は、MMT(現代通貨理論)論者が主張するように、大きな問題ではないからである」

スリランカは、通貨発行を正当化するためにMMTを用いた世界で最初の国である。ラクシュマンは、昼夜を問わず印刷機を動かし始めた。中央銀行における彼の後任であるアジス・ニバード・カブラールは、貨幣発行とインフレ及び通貨安の関係を否定し、その政策を継続した。2019年12月と2021年8月の間、スリランカのマネーサプライは42%に増加した。

現実に晒されるまでそんなに時間はかからなかった。2021年の終わりまでに、インフレは記録的に上昇した。そして、自然なことだが、「内国債の割合を増やす」というお利口な計画は、不可能であることが判明した。Treasury Bill(国庫短期証券)を欲しがる人はほとんどいなかったからだ。

ポピュリストによる政権によくあることように、トンデモ理論を正式な政策に昇格させることに反対する批評家は、外国のスパイかエリート層、口うるさいネガティビズムのネイボッブであるとレッテルを貼られた。ラジャパクサ一族による特権階級の外側からのあらゆる助言は、拒絶された。不幸なことであるが、それには主流派経済学さらに言うとIMFからの助言も含んでいた。

スリランカの経済は数か月危機にあった。そのおバカな政策の担当者は、IMFに相談することすら拒絶した。カブラールは誇らしげに今年の初め、「我が国はいかなる外国人やIMFの専門家の助言も必要としない」と声明を出した

2月、スリランカは明らかにデフォルトに向けて突き進んでいた。政府報道官であるミリンダ・ラジャパクサ(信じられないかもしれないが、親族ではない)は「IMFへの救済を急ぐ必要はない」と述べた。

MMTの支持者は多分こう言うだろう。これはMMTではないとか外貨建債務や利己的と同等のものを持っている限り、主権国家ではないといった言い訳だ。有機農法の支持者はこう言うだろう。移行が急だったとか農民が十分な教育を受けていなかったかまたは外部要因だといった戯言だ。

しかし、事実はこうだ。2つのお大切にされた非主流派活動家による異端の学説がスリランカの公式な政策となり、2年の間に、その国を債務不履行と破滅の淵に追いやった。そのトンデモ理論がその政策を後押ししたとする理由がここにある。

このコラムは必ずしも編集委員やブルームバーグ、その株主の意見を反映していない。

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