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匂い時限爆弾

みなさんは前に付き合っていた彼女、彼氏の匂いを覚えていますか?

私は覚えていません。と言いたいところだが、匂い時限爆弾は不意にやってくる。

「元カレの声を忘れられたときは、それは本当にお別れができたとき」というのを聞いたことがある。

私は、別れたらその人の記憶を抹殺したいタイプなので、消したくもない写真も連絡先も嗚咽しながら消す。

失恋から立ち直るまでは、元カレとの思い出を思い出しては泣いて、この場所でこんなことしたなあと思い出しては泣いて、夕焼けを見て切なくなっては泣いて。

そんな感じで徐々に涙を枯らして立ち直っていく。

「元カレの声を忘れられたときは、それは本当にお別れができたとき」

これを聞いた時は、確かにそうかもしれない。今思い出そうとしても、全く思い出せない。

でも、これよりもっと地雷的な恐ろしいものが匂いだ。

日本に売られている洗剤や柔軟剤なんて、誰かしら元カレと同じものを使っている人がいるだろう。

日常に潜む、そして忘れ切ったと思っていた時に不意にくる匂い。

「あれ、これなんか嗅いだことある。」そう思ったのが運の尽きである。

せっかく嗚咽しながら立ち直ったのに、匂いによって思い出されるかつては大好きだった人の記憶。恐ろしい…。

しかも、失恋してボロボロの時に現れるのではなく、何年か経って丁度いい感じに忘れていた頃にやつはやってくる。

こうしてこの記事を書いているということは…

そう、今隣に座っている人が犯人だ。(隣の人は何も悪くないのに)


「ちょっと柔軟剤にこだわっているだけだよ。」

そう言う彼は、いつもいい匂いがした。いい匂いではあるけど、目立つほどの匂いを放っている。

(放っているとか言ったらおならみたいだけど)

その匂いは強いのになぜか嫌にならない、いい匂いだった。

その人と付き合っていたわけではないけど、強い絆を感じていた。というのも、今も大好きなクリープハイプを勧めてくれた人だったから。

隣の席になって仲良くなって、誰もいないレイトショーを見に行ったりした。

色んな話をしていくうちに、どんどん仲良くなった。

クラスが離れてからは学校ではそんなに話さないけど、帰ったらLINEで話せる裏の友達みたいに思っていた。

今考えると、彼とは本音で話せていたので恋愛関係とかじゃなく、男女関係ない仲を望んでいたのだと思う。

しかし、その気持ちは彼からの告白によって、曖昧になっていった。

当時彼氏がいたので振ったけど、その時は彼氏に言えないようなことも彼には言えた。

こんな話をしたら、「なんだただの自慢かよ」と思われそうだけど、私が望んでいたのは本音で話せる親友みたいな関係だった。

でも、ぶっちゃけ言うと男として見れないわけではなかったから、今でもたまに思い出してしまうことがある。

匂いは記憶より鮮明に、忘れていたものを思い出させる。

(ポエマーかよ!)

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