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そちらがこちらを見下しているとき、またこちらもそちらを見下しているのだ


昨日、圧迫面接を受けた。

もう就活をしている人なんて周りにはいない。

でも、自分が納得するまで妥協できないし、まずは組織に属して経験を積みたいと思って就活を続けている。

昨日受けたところは、たまたま「広報」のキーワードで引っかかった会社で、ベンチャー企業だった。

少しでも文章に関連があるような広告や広報という仕事に、とても魅力を感じて応募した。

それだけだったのに、詰められたのだ。

自己紹介プレゼンというものを作って発表する面接だったのだが、私が話しているときの社長の態度は最悪だった。

子供のころ、あんなに言われた「目を見て話しなさい」をできていない大人がいるなんて。

思い返してみると、今日は朝から家の鍵をなくすし、バス停でイヤホンが取れて道路に転がるし、雨がどしゃ降りだし。

ツイてない日だったのかもしれない。

社長以外に2人の社員がその場にいた。
プレゼンをする最中はできるだけ全員の顔を見ながら話すようにした。

社長以外は相槌を打ったりリアクションをしてくれたが、社長はふんぞり返ってスマホを見ている。

たまにこちらを見たかと思えば、私とは全く目を合わさずに相槌もない。

プレゼンが終わり、社長は開口一番に

『この会社で働きたいのは、家の近くにあって未経験でも採用していて、自分のスキルを積めるからだけってことしか分からない。』

と言った。

いや、それを強みとしてホームページに載せたのはアンタだろ。

『それしか志望動機がないのか?もっとうちの会社を褒めろ』
と言いたいのかもしれないけど、世の中にはこの会社以外にいいところなんてたくさんある。

それなのにわざわざ志望動機なんて言わせるほうが、おこがましいと思わないのだろうか。

自分がやりたいことがその会社にあるから面接を受けに来たというのに。

その後は、夜の2時まで眠い目をこすりながら作ったプレゼンの内容に触れることはなく、悪いところしか指摘をしてこない。

プレゼンの後はディスカッションがあると聞いていた。

なのに
『俺がこの会社をなぜ建てようと思ったのか考えなさい。』という質問を、私に一方的に考えさせる地獄みたいな時間が始まった。

そんなの知るかよ、と思いながらも一生懸命にその理由を探し続けた。

答えると『違う』と即答し、またひたすら考える時間が始まるのだ。

社員2人はとても気まずそうにしている。

良いところには目を向けずに、社長が言いたいことばかりを投げつけられる。

要するに自分の言いなりになってくれるコマが欲しいだけか。

それならそうとはっきり言ってくればいいのに。

"社内ではフラットな関係性を作っています"
ホームページで語っていた雰囲気とは真逆だ。

そんなことをぐるぐると考えていると、『この答えを考えられるような想像力が広報には必要なんだよ。こんなことでへこたれないでください。』と社長が言った。

そもそも社長が投げかけた質問って、すごく気まぐれなことで、他の人が考えても検討がつかない。

私から言わせれば、「今日私がここまでバスで来たのはなぜでしょうか?」みたいな質問と同じくらい的外れだ。

ていうか、そんな威圧的な態度をとってこちらが嫌な思いをするという想像力が足りないのはそっちじゃないのか?

地獄の時間が1時間ほどたち、ようやく終わった。

『今どんな気持ちですか?』と社員が聞いてきた。

「帰りたいに決まってるじゃないですか。自己紹介プレゼンと全く関係ないことをひたすら考えさせるなんて、面接向いてないですね。もしかして、今日が初めてですか?」

とよっぽど言いたかったけど、

「想像力があるほうだと思っていましたが、想像力がないといわれて自信を失って消えたい気持ちです。」と答えた。

こんなことで自信を失うわけねーよ。
雨上がりの湿った地面を踏みしめながら帰り道を歩いた。

そんなときに決まってかける電話の相手は高校の友達のもえちゃんだ。

「もしもし、今時間ある?」

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