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臨床推論 Case97

J Family Med Prim Care. 2020 Feb; 9(2): 1219–1221.
PMID:32318499


【症例】
37歳男性

【主訴】
頭痛 腹痛 めまい

【既往歴】
高血圧症 アヘン中毒

【内服】
Ca拮抗薬 利尿薬 ARB:数ヶ月前から自己中断している

【現病歴/現症】
⚫︎ 半年前から漠然とした腹痛、頭痛、発作的な動悸、めまい、目のかすみの訴えあり受診された
⚫︎ 高圧薬を飲んでいたが、自己中断し高血圧切迫症症状で何度も病院を受診している
⚫︎ 受診時血圧190/110mmHg 脈拍94bpm
⚫︎ 眼科診察で高血圧網膜症grade2を認めた
⚫︎ 血液検査はBUN15mg/dL Cre1.14mg/dL 血糖96mg/dL Na138mEq/L K4.9mEq/L
⚫︎ 心エコー問題なし
⚫︎ 24時間蓄尿メタネフリン検査は正常値

⚫︎ ウログラムのある腹部CTで右の中等度の水腎症と腎臓の腫大あり
  尿管に異常な拡張はなく、結石は認めず

⚫︎ 内分泌検査など色々施行したが高血圧の原因を指摘することはできなかった
⚫︎ 腎シンチグラフィーでは骨盤尿管接合部(PUJ)で排液障害を伴っている腎臓を認めた

What is the cause of the hypertension ?







【診断】
尿管骨盤接合部閉塞(UPJO)による水腎症からの高血圧症

【経過】
⚫︎ 腹腔鏡ガイド下腎盂形成術が施行された
⚫︎ 術後3週間でアムロジピンを減量できた
⚫︎ さらに徐々に血圧は改善し、最終的には内服なく血圧は安定していた

【考察】
⚫︎ 2次性高血圧は重症高血圧や治療抵抗性、良好にコントロールされていたのが急激に悪化した時、30歳未満の若年発症で疑う
⚫︎ 2次性高血圧は若年層に多く、18-40歳では30%近くいると推定されている
⚫︎ 腎臓に起因する高血圧は腎実質疾患、腎灌流障害(動脈狭窄、FMD、多発性嚢胞腎、レニン産生腫瘍など)と関連している

⚫︎ 水腎症で高血圧になる機序はいくつか提唱されている
① RAS系の亢進及び尿細管糸球体フィードバックの活性
② NO産生低下、または活性酸素種によるNOの不活化
③ SOD1を欠損したノックアウトマウスでは血圧が上がりやすく、酸化ストレスも関連する

⚫︎ 尿管骨盤接合部閉塞の原因は以下の通り
・ 先天性
   尿管低形成
   尿管が骨盤に落ち込み過ぎている
   腎血管に尿管がエントラップされている
   腎臓が正常な位置にない

・ 後天性
   後腹膜線維症
   リンパ節や腫瘤病変による圧排
   遊走腎などにより動いて尿管が閉塞される
   結石や慢性炎症、放射線などによる線維化
   尿管癌
   医原性:内視鏡検査後、術後

⚫︎ 成人において片側のUPJOを解除すると血圧は低下する(Ups J Med Sci. 2018 Dec;123(4):216-224.)

収縮期:-14mmHg 拡張期:-10mmHg MAP:-11mmHg
も変化した

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