臨床推論 Case38
J Med Cases. 2015;6(12):563-565
【症例】
35歳 女性
【現病歴/現症】
⚫︎ 5年前GAD抗体陽性で緩徐進行1型糖尿病と言われている
⚫︎ インスリンは拒否しSU薬で対応していたがドロップアウトしていた
⚫︎ 右第4足趾の痛みと変色を訴えて入院された
⚫︎ 指は壊死していたのでデブリと洗浄と抗生物質で治療した
⚫︎ 入院時A1c 14.3% 血糖 450mg/dL pH 7.27 HCO3 13 ケトン4+
WBCとCRP高値あり
肝機能・腎機能は正常
⚫︎ DKAとしてインスリングラルギン+アスパルトで合計74単位で治療を受けた
⚫︎ 3日目に膝の浮腫が出現した
頸静脈怒張なし
⚫︎ TP4.5 Alb2.5とへっていたがそれ以外は正常
⚫︎ 5日目に腹部の著明な浮腫と、AST191 ALT256 ALP425 γGTP987と敗血症疑いで抗生剤治療した
⚫︎ 20日目にT12-L2皮膚分節に沿った神経障害、アロディニアを訴えた
⚫︎ 浮腫と神経障害の原因を検索した
尿蛋白や甲状腺、B12、葉酸は正常
腎機能正常で心エコーは問題なし
他の血管炎やウイルス抗体はすべて陰性
What’s your diagnosis ?
【診断】
インスリンよる浮腫および神経障害
【経過】
⚫︎ 浮腫が発症したため飲水制限と利尿剤で対応していた
⚫︎ 入院20日目には5kgの体重増加を見ていた
⚫︎ インスリン誘発性の浮腫と判断し、退院後は飲水制限と利尿剤は漸減したところ2週間ほどで自然に改善した
⚫︎ 神経障害も3ヶ月で自然に消失した
【考察】
⚫︎ インスリン浮腫の発生率は不明である
⚫︎ リスク:20-40歳、1型DM、血糖コントロール不良、栄養状態不良、低体重、高用量インスリン
⚫︎ 血管透過性の亢進、血管内増殖因子の誘発、インスリンによる尿細管に影響して抗利尿作用、など
⚫︎ 栄養はチアミン欠乏によりピルビン酸と乳酸が蓄積し血管拡張と浮腫をきたすことがある
⚫︎ 多くはインスリン投与量の減量、食塩制限で解決する
⚫︎ 利尿剤についての報告は様々である
⚫︎ 利尿薬抵抗性の重篤な浮腫にはエフェドリン15mg/日を3回に分けて治療したらうまくいった報告がちらほらあり
⚫︎ 治療関連ニューロパチーは集中的な血糖コントロール後の可逆性のある急性の激しい痛みを伴う末梢神経変性と自律神経機能障害を特徴とする
⚫︎ 体幹や近位部に起こりうる
⚫︎ 感覚性で非対称性、予後は良好で3ヶ月ほどで改善する
(Korean J Intern Med 2014;29:120-122)
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