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臨床推論 Case84

Respir Med Case Rep. 2023 Nov 27:46:101954.
PMID:38094659


【症例】
54歳 重慶市在住の中国人男性

【現病歴】
⚫︎ 入院4日前は普段通り
⚫︎ 入院3日前から悪寒、発熱が持続し、上肢から肩から背部にかけての筋肉痛、倦怠感が出現した
⚫︎ 鼻汁、下痢、頭痛、嘔吐、腹痛などの症状なし
⚫︎ 解熱剤で対応し、少し改善した
⚫︎ 近医でCTで両側の多発するコンソリデーションを指摘され、レボフロキサシンで治療された

⚫︎ しかし症状は悪化し、大量に喀血したため重慶医科大学附属第一医院を受診された
⚫︎ 2週間前に田んぼの稲刈りをしていたエピソードあり
⚫︎ BP150/93mmHg HR92bpm RR20bpm Sp98%(RA)
⚫︎ 左肺からcracklesを聴取した

⚫︎ 入院時のラボ

➡︎ WBC、CK、NT-proBNPが上昇している

⚫︎ 入院時CT:小葉間隔壁肥厚、気管支血管束肥厚、GGOを認める


⚫︎ MEPM+MXNで治療開始
⚫︎ その後メタゲノム次世代シークエンス検査である感染症が陽性になった

What’s your diagnosis ?







【診断】
レプトスピラ症

【経過】
⚫︎ Leptospira Kidney (confidence level 99%)が陽性になった
⚫︎ ペニシリンに変更し、画像・ラボは改善した

【考察】
⚫︎ レプトスピラ症はさまざまな血清型のレプトスピラによって引き起こされる感染症で齧歯類、犬、家畜などの感染した動物の尿によって汚染された土壌に触れることで感染する
⚫︎ 農業、衛生、畜産に関連して生じる
⚫︎ 世界で最も蔓延している人獣共通感染症であり、世界中に分布しているが熱帯・亜熱帯地域に多い
⚫︎ 中国ではほとんどの地域で認める

⚫︎ 感染してもほとんどは無-軽症であるが、5-10%は重篤なレプトスピラ症を発症する
⚫︎ レプトスピラ症は3つの症状(発熱、節々の痛み、倦怠感)と3つの徴候(結膜充血、腓腹筋の把握痛、体表リンパ節腫脹)が特徴である
⚫︎ 中間期には肺胞出血、心筋症、黄疸、貧血、腎炎、髄膜炎などをきたす
⚫︎ 感染後にはアレルギー反応としてぶどう膜炎、中枢血管閉塞、感染後発熱をきたすことがある
⚫︎ 肺胞出血は5%以下で死亡率は50-70%とされている
⚫︎ 全般的にレプトスピラは急速に進行するタイプはICUでの死亡率9-31%とされる

⚫︎ 急性期は好中球優位になるが、WBCは低下-正常-上昇とさまざまな動きをする
⚫︎ ヘンネループの上行脚のNa-K共輸送体がやられるためNa Kのバランスが崩れることがある
⚫︎ 尿検査では血尿、タンパク尿、顆粒円柱などを認める
⚫︎ CK上昇は50% mildな肝機能上昇は40%認める

⚫︎ 症状のまとめ(J Trop Med. 2021 Jul 6:2021:5567081.)

⚫︎ ラボのまとめ

⚫︎ レプトスピラは体内に入ると速やかに肺循環に入り、過敏反応を引き起こし、毛細血管を障害する毒素を出す
⚫︎ その結果、肺胞出血、腎出血、結膜充血、血管炎、ぶどう膜炎などを呈する

⚫︎ 胸部Xpでは小さな点状陰影を認めることがあり、融合して拡大することがある
⚫︎ 辺縁がぼやけた斑状陰影を呈することがある(Intern Med 59: 2941-2944, 2020 )

⚫︎ 病理的にARDS、肺胞出血、肺水腫を表すことがある
⚫︎ 胸部CTは病変の分布として血液供給と関連しており、外側よりも内側に多く、前胸部よりも背側に多い
⚫︎ これはリンパのドレナージを反映している

⚫︎ レプトスピラの診断はPCRや血清抗体価で検査する
⚫︎ 今回使用したのはメタゲノム次世代シークエンス検査mNGSは病原微生物を検出する最新の方法である
⚫︎ 微生物の培養や特異的増幅には実施せずDNAまたはRNAの塩基配列を同定し、データベースと比較して微生物の種類を特定する検査である
⚫︎ 従来の方法よりも高感度、特異度でタイムリーに診断できる
⚫︎ ウイルス、細菌、真菌、寄生虫と幅広く迅速に特定できる検査である

⚫︎ 有用性についてはこちらhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnd/28/1/28_16/_pdf/-char/ja

⚫︎ レプトスピラの治療法はペニシリン、ドキシサイクリン、セフトリアキソン、セフォタキシムを1週間投与する
⚫︎ ヤーリッシュヘルクスハイマー反応を引き起こすことがある


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