見出し画像

臨床推論 Case103

Int J Infect Dis. 2010 Sep:14 Suppl 3:e364-5.
PMID:20451436

【症例】
34歳 男性

【主訴】
皮疹

【現病歴】
⚫︎ 15日間持続する蕁麻疹が出現した
⚫︎ 蕁麻疹自体はやわらかく、数時間で消退する
⚫︎ セチリジン、フェキソフェナジンなどの抗ヒスタミン薬と短期間のステロイド内服を様々な診療所で試された
⚫︎ 抗ヒスタミンに反応するが切れると蕁麻疹はすぐに再発した
⚫︎ 精査目的で受診された

⚫︎ 直近で内服や感染症を疑う病歴はない
⚫︎ 血算、血糖値、尿、HIV抗体、検便などの検査は全て正常であった
⚫︎ 蕁麻疹様血管炎を疑う所見はなく血管浮腫もない

⚫︎ 再度問診を取り直したところ足の白癬に対してサリチル酸を含む軟膏を塗布していたことが判明した
⚫︎ しかし軟膏にかぶれたのか足の側面に非常に痛痒い水疱ができた
⚫︎ 足背に小さい水疱を認め、一部は破裂して漿液性の分泌物を認めた
⚫︎ よくよく見ると両足底に鱗屑を認め、右掌にも鱗屑を認めた
⚫︎ 足の親指は肥厚し黄色に変色していた
⚫︎ KOH法で鱗屑と爪で菌糸が陽性であった

What causes this urticaria ?






【診断】
白癬に伴う蕁麻疹

【経過】
⚫︎ テルビナフィンを7日間内服開始した
⚫︎ その後フルコナゾールを週一回200mgの用量で6ヶ月間治療した

⚫︎ 蕁麻疹に対してはセチリジンとPL20mgを5日間だけ投与した
⚫︎ 白癬は急激に改善し、 蕁麻疹も消失した
⚫︎ その後蕁麻疹の再発を認めなかった

【考察】
⚫︎ 皮膚糸状菌による全身性の皮疹を伴うことがある
⚫︎ 感染部位から離れたところに生じることがある
⚫︎ 小水疱、丘疹、丹毒様紅斑、結節性紅斑、蕁麻疹など

⚫︎ 臨床医は蕁麻疹患者の詳細な問診と検査を行う必要がある
⚫︎ 抗ヒスタミンやステロイドで対処するが、根本的な原因を探す必要がある

⚫︎ 白癬はcommonな疾患であり、蕁麻疹をみれば全例で白癬を探すべし
⚫︎ 特に慢性よりも急性蕁麻疹では感染症が多い
⚫︎ しかし白癬がアレルギーをおこす機序はあまりよくわかっていない

⚫︎ 89例の白癬アレルギーの解析
・ 蕁麻疹/血管浮腫を57例、湿疹8例。、鼻炎12例、結膜炎1例、喘息を12例認めた
・ 皮内テストは全例で陽性であった
・ 皮膚プリックテストは59%で陽性、特異的IgE抗体は69%陽性であった

⚫︎ 他にpubmedで報告されて蕁麻疹と関連性があるかもしれない感染症は以下の通り(Allergy, Asthma & Clinical Immunology 2009, 5:10 )

➡︎歯の感染、鼻炎、扁桃炎、UTI、ピロリ菌が指摘されているが報告によってまちまちである

⚫︎ 個人的に経験したことがある2次性の蕁麻疹(様皮疹)は以下の通り
・ 慢性の蕁麻疹様皮疹のみ ➡︎ Tcellリンパ腫
・ 回盲部の腸管浮腫+回盲部リンパ節腫脹+蕁麻疹(様皮疹) ➡︎ エルシニア腸炎
・ 他に甲状腺機能低下症+慢性蕁麻疹 ➡︎ レボチロキシンで改善
 (同じような報告:Cureus 10(8): e3209.)
・う歯+慢性蕁麻疹 ➡︎ う歯の治療で改善 
 (同じような報告:F1000Res. 2018 Nov 2:7:1738.)
・ピロリ菌陽性の胃癌+慢性蕁麻疹 ➡︎ 胃全摘出後に改善
 ピロリ菌が慢性蕁麻疹になるのか報告によって様々であるが除菌した方が治りやすいかもしれない(J Am Acad Dermatol 2003, 49:861-4.)
・ 他にマイコプラズマ、Still病、SLE、成人T細胞性白血病、好酸球増多症など

⚫︎ 固形腫瘍+慢性蕁麻疹はケースレポートではいくつか報告あり(Ann Dermatol. 2012 Aug; 24(3): 366–367.)
⚫︎ ただし傍腫瘍症候群に該当する有名な皮膚疾患には該当しないので多くはないと思われる

An Bras Dermatol. 2013;88(1):9-22.


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?