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臨床推論 Case56

Cureus 15(12): e51337.


【症例】

40歳 男性

【既往】
右鼠径ヘルニア てんかん

【主訴】
右鼠径部痛

【現病歴/現症】
⚫︎ 前日からの右鼠径部の痛みのため救急外来を受診された
⚫︎ 発熱、嘔吐はなく消化管症状なし
⚫︎ 診察では右鼠蹊部に我慢できないほどの圧痛あり
  腹部はソフトで圧痛なし
  精巣の診察は特記すべき異常なし

⚫︎ 採血で炎症反応は正常であった 
  尿検査は正常で培養は陰性

⚫︎ 造影CTでは腸管は正常でヘルニアなし
  鼠径管の肥厚と炎症性変化あり、おそらく精索の炎症の波及と考えられた



What’s your diagnosis ?








【診察】
急性感染性精索炎

【経過】
⚫︎ ST合剤と鎮痛剤で14日間治療され退院された
⚫︎ 3週間後のフォローでは痛みは著しく改善していた

【考察】
⚫︎ 鼠蹊部痛を呈する精巣の病気は精巣上体炎、睾丸炎、捻転などがある
⚫︎ 精管炎は結節性精索炎と急性精索炎を含む炎症性疾患である
⚫︎ まれな疾患でしばしば急激に痛みを伴う鼠蹊部のしこりとして出現する
⚫︎ 白血球や発熱を伴うことがある
⚫︎ 急性感染症精索炎は大腸菌など一般的な尿路感染の逆行性感染が想定される
⚫︎ 一般的に尿培養は陰性で、まれな病原体としてはクラミジア、結核などの報告がある

⚫︎ 症状はあいまいで、稀なので見落とされやすい
⚫︎ CTでは精管肥厚、精索浮腫、周囲脂肪織上昇する
⚫︎ 鼠径ヘルニアを除外するためにCTは必要である
⚫︎ 治療は抗生剤で治療になる

⚫︎ より頻度が多いのは結節性精管炎である
⚫︎ 無症候性の鼠蹊部腫瘤病変として現れる
⚫︎ 精管切除、前立腺切除、鼠径ヘルニア術後など精管の操作をうけた人に生じる
⚫︎ 良性の慢性の病気で精管に房状の結節性肥厚を生じる

⚫︎ 本例はわかりやすいが、わかりにくい他のレポート(BMC Urol. 2019, 19:27.)


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