見出し画像

臨床推論 Case64

Gastrointest Endosc. 2011 Apr;73(4):834-7.
PMID:21067736

【症例】
63歳 男性    

【主訴】
嚥下障害

【現病歴/現症】
⚫︎ 9ヶ月前から固形物と液体の両方摂取困難となり10kg体重がおちた
⚫︎ ラボデータは特に異常なし

⚫︎ 上部消化管内視鏡検査を施行したところ、びまん性の粘膜の脆さと潰瘍病変と線維性変化を認めた

⚫︎ 中部食道に狭窄病変があり、通過障害を認めた
⚫︎ バリウム検査で中部-下部食道の狭窄を認めた


⚫︎ 内視鏡の病理検査では高密度の形質細胞浸潤を認めたが、悪性腫瘍や感染症は認めず
⚫︎ 原因を特定できずPPIと鎮痛剤の対症療法となった

⚫︎ 2ヶ月に悪化し、上部の方まで病変が進行した
⚫︎ 悪性腫瘍の可能性があったため手術となってしまった
⚫︎ 見た目は潰瘍と壁肥厚あり



⚫︎ 病理ではIgG4陽性形質細胞浸潤、間質線維化、リンパ濾胞あり
  IgG4陽性細胞は200/HPFで静脈炎や神経叢炎を認めた


What’s your diagnosis ?






【診断】
IgG4関連硬化性食道炎

【経過】
⚫︎ 血清IgG4は138mg/dLと上昇していた
⚫︎ 術後問題なく経過し、15日目に退院となった

【考察】
⚫︎ IgG4関連硬化性疾患で、食道はまれである
⚫︎ Lopes先生は"IgG4 related esophageal tumor”として初めに報告している
⚫︎ そこでは病理で線維芽細胞の増殖とIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う粘膜下腫瘍として報告されている
⚫︎ 胆管や膵管が硬化して狭窄をきたすのは典型的であり、今回のように食道狭窄をきたすのは稀である
⚫︎ 原因不明の食道狭窄および形質細胞浸潤をみたらIgG4関連疾患を鑑別に挙げる必要あり

⚫︎ IgG4関連硬化性食道炎の文献review(Rheumatol Int. 2020 Oct;40(10):1733-1737.)

➡︎いずれも症状-診断まで非常に長い時間を要している

⚫︎ IgG4関連による胃潰瘍の報告もあり(Intern Med. 2020 Oct 15;59(20):2491-2497.)

➡︎繰り返す胃潰瘍の既往があり、PPIで対応され診断が遅れている(が致し方ないと思われる)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?