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原稿の帰還

~「錆びた刀」は行方不明~

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自分の物がどこにあるか全て把握している人はいないのではないか。

わかっているつもりでも、いざ使おうとするとないなんてことはよくあることだ。

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整理整頓が出来ている人でも、何かの時に保管場所を移したことを失念していたり、誰かが違う場所に動かしたりしていると、もうどこに行ったか分からなくなるものだ。

それを人は「失くした」と言う。

こうならないためには、なるべく物を捨てて持ち物を少なくしておくのが良いのだけれど、大人になると社会の事情もあってそうもいかないものだ。

もう30年以上漫画家という稼業をやっている。

私は物をよく捨てる方だが、捨てられずたまった物がある。

それが紙の原稿である。

十数年前からデジタルの原稿になったが、それ以前のものは全て紙である。

あまり必要だとは思わないが、いざという時原稿がないのはまずいと思うからだ。

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事務所移転のたびに原稿の入った段ボールを運んでいるが、開けて中身を見ることもないままであった。

ところがその段ボールを開ける時が来た。

自分の漫画を電子書籍としてKindleで販売しようと思ったからである。


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