川上未映子『ヘヴン』を読んで
川上未映子さんは、かなり好きな作家で
出されている本もほぼ読んでいるのだけれど
いじめを扱ったこの作品は、読むのが辛い気がしてなかなか手が出せないでいた。
けれど、そろそろ読んでみようかな…と、先日文庫版を購入したところ、川上未映子さんの作品はいつもそうであるように、ぐいぐい物語に引き込まれて一気に読み終わってしまった。
そして、読み終わった時、この作品が単にいじめを描いていたわけではなく
もっともっと深い、人間や人生のこわさ、苦しさ、どうしようもなさを描いている事を思い知り
やっぱり川上未映子さんはすごい…と感嘆した。
人間にはどうして強い者と弱い者がいるのか
強い者はなぜ力で弱い者を支配するのか
弱い者は耐えるしかないのか
そして耐え抜いた時いつか報われる時はくるのか
そもそも、苦しみには意味があるのか…
そういった哲学的な問いに対する答えを導こうとする、その問いと答えを体現するための存在が学校で凄惨ないじめを受ける主人公で
そのいじめの描写は読むのをやめたくなるくらい辛かったけれど、誰しもが考えた事があるであろう人生や世界の不条理への考察はとても核心をついていて
世界がこんなにも不条理で暴力的である意味が、分かったような気がして
でもだからと言って自分はどうすればいいのか
そんな事までは分からないけれど
この作品を読んでよかったと、思った。
それは、川上未映子さんがやっぱり今回も弱い者の側から世界を見てくれているからだろうと、思った。
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