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新NISA制度をプロが徹底解説!効果的な投資戦略のポイントはこれだ

新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるため、旧制度よりも柔軟に戦略を練ることが可能です。新NISAで資産形成を始めるときは、まずは自分自身に合った戦略を練ったうえで投資する商品や投資金額を決めるのがよいでしょう。

この記事では、新NISAでの戦略を練る際に押さえておきたいポイントや主な戦略の種類、運用時の注意点を解説します。


戦略を練る前に新NISAの基礎知識をおさらい

まずは、2024年1月から始まった新しいNISAと旧NISAの制度内容をみていきましょう。1年間で新規投資できる金額(年間投資枠)や、商品を非課税で運用できる期間(非課税保有期間)などは、以下のとおりです。

※参考:金融庁「NISAとは?」

新NISAでは旧NISAよりも年間投資枠が増額されており、非課税保有期間は無期限に延長されました。

また旧制度では、一般NISAとつみたてNISAはどちらか一方を選択しなければなりませんでしたが、新制度ではつみたて投資枠と成長投資枠を併用できます。

新NISAの非課税保有限度額は1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)です。加えて新NISAでは、商品を売却するとその商品の買付金額に相当する非課税保有額が翌年に再利用できるようになるという、旧NISAにはない仕組みがあります。

売却しても非課税保有額が復活しない旧NISAと比較して、住宅購入や子どもの進学などのライフイベントが発生したときに、より気軽に資産を売却しやすくなったといえるでしょう。

新NISAについては、以下の記事をご覧ください。

新NISAの投資戦略を練る際のポイント

新NISAでの投資戦略を練る際は、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

  1. 「長期」「積立」「分散」が投資の基本戦略

  2. 投資の初心者は「投資信託」を検討する

  3. 自分自身のリスク許容度を考えて商品を選ぶ

  4. 新NISAではコア・サテライト戦略が実践できる

1つずつ解説します。

「長期」「積立」「分散」が投資の基本戦略

資産形成の基本は、長期・積立・分散投資といわれています。長期投資や積立投資、分散投資は、それぞれ以下の投資方法を指します。

  • 長期投資:長期間にわたって同じ金融商品を持ち続ける投資方法

  • 積立投資:同じ商品を毎月など決まったタイミングで購入する投資方法

  • 分散投資:複数の資産や国・地域などに分散して投資する方法

資産や国・地域などを分散して金融商品を積み立てていき、それを長期にわたって続けると、投資のリスクが抑えられて元本割れが起こりにくくなるとされています。

新NISAはあくまで投資の利益に税金がかからなくなる制度であり、元本が保証されているわけではありません。新NISAを活用して安定的に資産を形成していくためには、長期・積立・分散投資を心がけることが重要です。

投資の初心者は「投資信託」を検討する

金融商品に投資した経験があまりない人は「投資信託」を選ぶのがよいでしょう。投資信託は、投資家からお金を集めて大きな資金とし、運用のプロによって国内外の株式や債券などに投資される仕組みの商品です。

株式や債券などの個別銘柄に分散投資をするためには、数十万円や数百万円といった多くの資金が必要です。その点、投資信託であれば1,000円や1万円から投資できる商品もあり、投資した資金は1つにまとめられて複数の資産で運用されるため、少額から分散投資ができます。

また、投資先の銘柄選びは運用のプロに任せられるだけでなく、個人では投資が難しい海外の株式や債券にも投資が可能です。

投資信託の投資対象となる資産は、株式や債券、REIT(不動産投資信託)、金、原油などさまざまです。また投資先の国や地域は「国内」「先進国」「新興国」などの種類があります。

投資信託の多くは「先進国株式」「国内債券」といったように、商品名で投資する資産や国・地域の判別が可能です。

自分自身のリスク許容度を考えて商品を選ぶ

一般的に投資のリスクは、資産の場合は「債券」「不動産」「株式」、国・地域は「国内」「先進国」「新興国」の順に高くなるといわれています。

リスクとリターン(運用による収益)は比例する関係にあるため、基本的にリスクが低く高いリターンが期待できる投資はありません。高いリターンを得るためには、リスクが高い投資先を選ぶことになるため、大きな損失が発生する可能性もあります。

そこで、運用商品を選ぶ際に重要となるのが「リスク許容度」です。リスク許容度とは、どれくらいの損失までなら受け入れられるのかを表す度合いのことです。

リスク許容度は、年齢や家族構成、年収、性格などさまざまな要素で異なります。新NISAでの運用商品を選ぶ際は、自分自身のリスク許容度を考えることが大切です。

一般社団法人全国銀行協会の「あなたのリスク許容度診断テスト」であれば、10項目の質問に答えるとリスク許容度を診断してくれるため、ぜひお役立てください。

新NISAではコア・サテライト戦略が実践できる

コア・サテライト戦略とは、守りの「コア資産」と攻めの「サテライト資産」に分けて運用する方法のことです。

コア資産の部分は比較的リスクの低い商品で堅実に運用し、サテライト部分は高い利益が期待できるリスクの高い商品を選ぶのが一般的です。資産配分の目安は、コア資産が7〜9割、サテライト資産がその残りとなります。

新NISAでコア・サテライト戦略を用いる場合、コア部分はインデックスファンドやバランスファンド、サテライト部分はアクティブファンドや個別株式を選ぶ方法があります。それぞれのファンドの特徴は、以下の通りです。

  • インデックスファンド:日経平均やNYダウなどの指数と連動した成果を目指す投資信託

  • アクティブファンド:市場の平均を上回る成果を目指す投資信託

  • バランスファンド:国内外の株式や債券などに分散して投資ができる投資信託

また、インデックスファンドのみに投資をする場合、コア部分に米国株式や先進国株式などが投資対象の商品、サテライト部分に新興国株式に投資をする商品を選ぶのも方法です。

新NISAを活用した投資戦略の例

新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能であるため、さまざまな投資戦略が考えられます。ここでは、新NISAを活用した投資戦略の例をご紹介します。

つみたて投資枠または成長投資枠で投資信託を積み立てる

毎月コツコツと資産を積み上げていくのであれば、つみたて投資枠または成長投資枠で積立投資をするとよいでしょう。

つみたて投資枠は、金融庁が定める基準をクリアした投資信託等が対象商品です。2024年1月4日時点での対象商品数は合計280本であり、その中から各金融機関が選んだ商品に投資ができるため、初心者でも投資先を選びやすいでしょう。

また、つみたて投資枠のみで1,800万円の非課税保有額を使い切ることも可能です。これから投資を始める予定であり、どちらの非課税枠を選べばよいかわからないときは、つみたて投資枠を選ぶのが無難といえます。

一方の成長投資枠は、つみたて投資枠よりもインデックスファンドやバランスファンドの対象銘柄数が多く、アクティブファンドの選択肢も豊富です。

より多くの選択肢から銘柄を選びたい人や積み立てる銘柄にこだわりがある人などは、成長投資枠で商品を積み立てるのも1つの方法です。

※参考:金融庁「つみたて投資枠対象商品

つみたて投資枠と成長投資枠の両方で投資信託を積み立てる

つみたて投資枠と成長投資枠を併用して投資信託を積み立てていくのも方法です。

たとえば、つみたて投資枠で米国株式や先進国株式といったインデックスファンドを、成長投資枠でアクティブファンドを積み立てる方法があります。

つみたて投資枠で着実に積み立てをしつつ、成長投資枠でリスクの高い商品に投資をすることで、大きな損失を抑えながらより高いリターンが期待できます。

また、つみたて投資枠で投資対象が株式である投資信託を、成長投資枠で債券やREITが投資対象の商品を積み立てるのも1つの方法です。2つの非課税枠を併用して値動きの異なる資産に分散投資をすることで、リスク軽減効果を高められる可能性があります。

つみたて投資枠と成長投資枠で毎月30万円を積み立てる

つみたて投資枠と成長投資枠を併用すると、最大で毎月30万円を積み立てることが可能です。その場合、5年で非課税保有限度額の1,800万円を使い切れます。

非課税枠を早めに埋めると、大きな元本を運用できるようになるため、複利効果の恩恵を受けやすくなって大きなリターンが期待できます。複利効果とは、運用益を元本に組み入れて再投資をすることで、利益が利益を生んで資産が膨らむ効果のことです。

新NISAでは1,800万円の非課税保有額を使い切ったとしても、商品を売却するとその翌年には非課税枠が復活します。マイホーム購入や車の買い替え、子どもの進学などでお金が必要になったときは資産を引き出し、その後はまた別の目的で運用を始めることも可能です。

投資資金に余裕がある人は、2つの非課税枠を最大限に利用して早めに非課税保有額を使い切るのも選択肢の1つです。

つみたて投資枠で投資信託に、成長投資枠で株式の個別銘柄に投資をする

成長投資枠は、旧制度の一般NISAと同様に国内や国外の株式の個別銘柄にも投資できます。つみたて投資枠で投資信託を積み立てながら、成長投資枠で日本株や外国株などに投資をするのも新NISAの代表的な戦略の1つです。

たとえば、成長投資枠で高い配当が期待できる国内株式に投資をすると、配当金に税金がかからなくなる分、より多くの配当収入を得られる可能性があります。長期にわたって保有し続けることで、より効率的に資産を積み上げられるかもしれません。

ただし、個別株への投資で利益を得るためには、企業の業績や株式市場の動向などをもとに銘柄を慎重に選ぶ必要があります。投資経験や保有資産があまりない人は、まずは投資信託を積み立てていき、コア資産を築いてから株式投資にチャレンジすることをおすすめします。

新NISAの投資金額や商品、金融機関を決める際のポイント

最後に、新NISAの投資金額や商品、金融機関を選ぶ際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

無理に非課税投資枠を使い切らなくてもよい

新NISAの非課税枠を早く埋めると、大きな資金を長く運用できます。とはいえ、無理して非課税枠を埋める必要はありません。

財産のほとんどを新NISAの投資資金に回してしまうと、生活が苦しくなったり、病気やケガなどの事態に対処できなくなったりする恐れがあるためです。

新NISAを用いて資産形成をするとしても、万が一に備えて預貯金などの元本保証がある資産も持っておきましょう。確保しておく金額は、生活費の6か月〜1年分が目安です。

また、新NISAでは制度が恒久化されており、どのタイミングで投資をしても1,800万円の非課税枠を利用できます。まずは毎月数千円や数万円など、家計・保有資産から考えて無理のない範囲で新NISAの利用を始めてみるのもよいでしょう。

コストだけを比較して商品を選ばない

インターネットや書籍などで「新NISAでは低コストの投資信託を選ぼう」という意見を目にすることがあります。ここでいうコストとは、主に運用管理費用(信託報酬)という投資信託を保有しているときにかかる費用のことです。

たしかに低コストな商品であれば、保有中に支払う手数料が少なくなり、より多くの運用益を手元に残せる可能性はあります。

ただし、コストの低い商品が必ずしも高い利益を得られるとは限りません。投資信託を選ぶ際は、コストだけでなく資金の投資対象や運用方法、運用実績などの項目を比較することも重要となります。

相談のしやすさでNISA口座の開設先を選ぶのも方法

新NISAの口座をネット証券で開設する人は少なくありません。ネット証券は手数料が割安であり、新NISAの商品ラインナップも豊富な傾向にあるなどのメリットがあるためです。

一方で、ネット証券は相談窓口が基本的にコールセンターやチャットであり、対面で相談できる店舗を構えるところはほとんどありません。

その点、銀行などの相談窓口がある金融機関でNISA口座を開くと、商品の選び方や毎月の積立金額、売却のタイミングなどを資産運用のプロに対面で相談できます。

また銀行であれば、NISAだけでなく家計やローン、保険、相続なども幅広く相談が可能です。将来に向けた資産形成をしようと考えている人は、お金に関するさまざまな相談が可能な銀行でNISA口座を開設してはいかがでしょうか。

まとめ

この記事は、新NISA(積立投資枠・成長投資枠)を活用する際の投資戦略やポイントを詳しく解説しています。主な内容は以下の通りです。

  1. 新NISAの基本情報
    2024年から施行された新NISAでは、旧NISAと比較して年間投資枠が増額され、非課税保有期間が無期限に延長されました。また、旧制度では「一般NISA」か「つみたてNISA」どちらか一方の選択が必要でしたが、新制度では積立投資枠と成長投資枠の併用が可能になり、より柔軟な運用が可能です。

  2. 投資戦略を練る際のポイント

    • 長期・積立・分散投資: 資産形成の基本は「長期」「積立」「分散」です。長期間、定期的に分散投資を行うことで、リスクを抑えて安定した成長を期待できます。

    • 初心者向け:投資信託: 投資経験が浅い人には、投資信託がおすすめです。少額から分散投資が可能で、プロの運用に任せられるため、初心者でも取り組みやすい商品です。

    • リスク許容度を考慮: リスクとリターンは比例するため、各自のリスク許容度を考慮し、適切な商品を選ぶことが大切です。

  3. コア・サテライト戦略の実践
    新NISAでは「コア・サテライト戦略」が可能です。低リスクの商品をコア資産、高リスクの商品をサテライト資産として運用することで、リスクを抑えつつ高いリターンを目指せます。

  4. 新NISAの運用例

    • 積立投資枠と成長投資枠を併用: つみたて投資枠でインデックスファンドやバランスファンドを積み立てつつ、成長投資枠でアクティブファンドや個別株式に投資する戦略などが推奨されています。

  5. 金融機関の選び方
    ネット証券は手数料が安く、商品ラインナップが豊富なため人気ですが、対面での相談が必要な場合は銀行などの金融機関が適しています。

まとめとして、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用による柔軟な投資戦略が可能です。長期・積立・分散を基本に、各自のリスク許容度に合わせて投資商品を選ぶことが重要です。


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